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創り手たちのStory

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#043 神戸マッチ 株式会社2015/12/25

新たなライフスタイルを提案するマッチのように擦って使う〈お香スティック〉

姫路のマッチ製造メーカーの挑戦

マッチのように火をつけると立ちのぼるお香の香り。ありふれた日常に句読点を打つように自然のアロマに身を委ねる10分間──。「日々」の新しいライフスタイルを提案するお香スティック〈hibi 10MINUTES AROMA〉。

お香の先にマッチをつけるというアイデアはもちろん、洗練されたパッケージと世界観が話題となり、今年4月の発売以来、問い合わせが殺到。経済産業省が海外に日本の優れた地方産品を紹介する「The Wonder 500 ™(ザ・ワンダー・ファイブハンドレッド)」にも選定された注目商品です。

つくり手は、1929年に姫路の地で創業した神戸マッチ株式会社。初期にマッチの製造技術がヨーロッパから日本にもたらされて以来、神戸港に近く、マッチづくりに適した気候の姫路地方は、マッチ製造業の集積地として栄えました。今でもマッチ製造は姫路の地場産業で、国内で生産されるマッチの約7割を占めています。

「でも、いま日常でマッチで火をつける機会ってほとんどありませんよね。弊社もマッチだけでは事業が成り立たず、販促品のティッシュ製造や印刷業、介護施設の設立などの多角化で継続してきました」と三代目である代表取締役の嵯峨山真史さん。

幼い頃からマッチ工場を見て育った嵯峨山さんですが、市場を鑑みるに家業を継ぐ気は起こらず、いったんは他分野メーカーに就職します。しかし、一生の仕事を考えたときにやはり経営に取り組む決意をし、1999年に入社。会社と雇用を守るため、大胆なバスラッピング広告などの新たな事業に奮闘してきました。

「それでも、つねにマッチを残したいという思いや、BtoC商品へのこだわりがあったんです。私だけではなく、社員のみんなもそうだったと思います。昔はマッチは家に必ずあって当たり前のものでした。そんなふうにまた人々の暮らしの中に息づく商品をつくりたいと考え続けていたのです」

「お香は固くすると燃えにくく、しかし固くしないとマッチのように火をつけることはできません。相反する2つの課題を解決し、木のようにしなりのある軸を開発するのに約3年半を要しました」と嵯峨山さん

“デザイン”で付加価値をつけ、新マーケットを創造

ターニングポイントは2009年に訪れました。世界中で愛されてきたマッチの魅力を見直してもらおうと、昔懐かしいマッチラベル(燐標)を展示会に出品したところ、それを見たアートディレクター・堀内康広さんがひと目で惚れ込み、ラベルデザインを生かしたTシャツ等を試作して嵯峨山さんの元を訪れたのです。

意気投合した二人は、レトロデザインを生かした復刻マッチやオリジナルTシャツ等の新ブランド「マッチデザインファクトリー」を立ち上げます。

「このとき驚いたのはデザインの力でした。それまで弊社のものづくりはメーカー発想で、『機能』や『コスト』『生産性』に重きを置いていました。そこに『デザイン』を加えることで、商品価値が格段に上がることを実感したのです」と嵯峨山さん。

汎用品のマッチは通常12箱入り250円で販売されていますが、レトロデザインの復刻版マッチは、中身はほぼ同じにも関わらず5箱650円でも売れてゆきます。これまで購買層ではなかった若者や女性からも高い評価を受け、ギフト需要という新たなニーズを生み出しました。それほど付加価値をつけることができるのです。

「ただ、現代はマッチで火をつける需要が少ないので、爆発的に売れるものではありませんでした。マッチがマッチである以上マーケットは大きくならないということも、この取り組みで見えてきました」

 

明治・大正・昭和にかけて流通していた燐票(りんぴょう/マッチラベル)を復刻し、肌ざわりのいいTシャツにプリントしました

 

「香りのシーンをもっと快適に」という想いから、アロマキャンドルやお香をたしなむ際のさまたげとなる、鼻にツンとくる独特のニオイを除去したマッチ〈PURE+NA(ピュアナ)〉

では、どうするか。嵯峨山さんが選んだのは、「マッチへのこだわりを捨て、世の中にある程度認知されているものにマッチの技術をのせる」という発想でした。新しい市場をつくり、マッチのルーツを語り継ぐものづくりをしようと考えたのです。

そして、マッチのように擦って着火させるお香というアイデアを出発点に、淡路島のお香メーカー・株式会社大発との共同開発に着手。兵庫県のふたつの伝統産業の担い手が出会い、約3年という試行錯誤の末に、マッチがついたお香スティック〈hibi 10MINUTES AROMA〉が誕生しました。世界初の商品でした。

クリエイターとのプロジェクトチームで“香りの楽しみ方”をデザイン

そもそも「お香の先にマッチをつける」という発想は、墓参りの際に屋外で線香の束に火をつけるのが困難であることから、昔から「あれば便利」と言われてきたことでした。

「マッチの会社なら、どこでも頭の中にアイデアはあったと思います。でも、実際に開発に踏み切るかどうかの違いは大きい。また、ただ便利なだけのアイデア商品ではなく、これまで市場にない新たなライフスタイルを提案できる商品でなければ、投資して開発する意味がないと思いました」

 

着火後、スムーズに軸に火が移るようにするのも大変でした。「マッチは頭の部分の木にロウが染み込ませてあります。これも同じ原理で、お香にロウを染み込ませていますが、ほどよい具合を見つけるのに苦労しました」(嵯峨山さん)

 

着火具がなくても使用できるお香スティック〈hibi 10MINUTES AROMA(5つの香)〉。世界初の商品で、特許を取得しています(特願2013第175012号)。香りは天然ハーブ系(レモングラス、ラベンダー、ゼラニウム、イランイラン、ティートゥリー)の5種類をラインナップしました。着火後、約10分間アロマの香りが煙とともに広がります

〈hibi 10MINUTES AROMA〉は、マッチのように擦っても折れない強度と芳香性を両立。そのうえで、ブランドの世界観に見合った香りの選択や、今の日本の感性を伝えるネーミングやパッケージの開発を行っています。それはメーカー同士の「技術開発」と共に、クリエイターと「香りの楽しみ方をデザインする」という取り組みでした。

「経験から他メーカーの方によくお話しするのですが、こうしたことはメーカーだけでは絶対にできない。なぜならメーカーはものをつくるのは得意でも、見せ方は下手だからです。hibiの開発にあたっては、デザイナー、コピーライター、ギャラリー経営者、マーケティングプロデューサーといった方々にプロジェクトチームに入ってもらい、コンセプトから商品のストーリー、売り方まで一緒につくりあげています」

いまでこそ、こうした多彩なチームでワークショップ的に取り組むことが成功の鍵と語る嵯峨山さんですが、当初はかなり抵抗感があったと言います。

デザイナーをはじめとするクリエイターとディスカッションしながらつくりあげた商品です。「マッチに愛着を持ち、自分たちでつくりあげているという意識を持って参画してくれている方ばかりなので頼もしいですね。デザイン費用以上のアイデアを持ってきてくれたと思っています」(嵯峨山さん)

「メーカーは、デザインやコンセプトというものにお金を払うことにすごく抵抗があるんですよ。なぜなら無形のものだからです。形がないから原価や開発費として捉えにくい。ほんまにそんなに金かける価値があるんかいなと思うわけです(笑)」

でもいまは、優秀なデザイナーやクリエイターがブレーンとしてついていることが、ものづくりには非常に大事だと語ります。

「ガチガチの機能追求型になりがちなメーカーとは違う視点で市場にアプローチできる“目利き”の力が必要なんですね。とくにいまは時代の感性に響く商品でないと売れないし、いいものをつくっても見せ方が悪ければ良さを伝えきれずに終わってしまう。ですから、先行投資としてデザインやコンセプトワークに予算をかけられるかどうかは非常に大事なポイントではないかなと思います」

クリエイターとのプロジェクトチームで“香りの楽しみ方”をデザイン

ホームページでは使用シーンを想起させる動画や写真とともに、コンセプトやストーリーがしっかり語られ、商品の魅力を伝えています

〈hibi 10MINUTES AROMA〉は、販路に対しても明確なコンセプトを持っています。

「置いていただきたいのは、ライフスタイルを提案するセレクトショップです。というのは、この商品は陳列販売では売れないから。販売員さんにストーリーを語ってもらい、この商品がある日々を想像していただくことでお買上げにつながる商品だからです」

どこで売っているかということも、お客様の重要な選択肢のひとつと捉え、4月に発売後、まずは自分たちでブランドイメージにあう販売店と個別交渉。ある程度売り先が定まったところで、9月にプレスを招いて本格的な広報活動を開始しました。その後も問屋任せにせず、自分たちで販路をコントロールしています。

「メーカーとしては、ほんとはどこでも売りたいんですよ(笑)。このへんもプロジェクトチームによるブランドプロデュースが大きいですね。ブランドというのは、一度イメージが崩れると回復がむずかしい。時間はかかっても、確実なファンづくりと広がりを狙っています」

 

中小企業庁の「ものづくり補助金」を申請し、お香軸用の軸列機を購入。現在、月産約2万本を製造しています

 

基本的に伝統的なマッチづくりと同じ製法でつくられていますが、お香は湿度管理が大事なため、専用の作業場を新設しました

海外からの注目度も高く、すでにカナダとスイスに出荷実績があります。

「Rin crossingに期待するのは、“広報の場”です。ブランディングのためにも広報活動は重要視していますが、我々のようなメーカーは広報が苦手でうまくできないし、十分な予算もとれない。洗練されたイメージの雑誌メディアなどに、Rin crossingに認定された商品たちといったくくりでご紹介いただけるとうれしいですね」

神戸マッチ 株式会社
(コウベマッチ カブシキガイシャ)

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