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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #049 小島染織工業 株式会社

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#049 小島染織工業 株式会社2016/06/24

武州正藍染の伝統を受け継ぎながらフィールドを拡大し、自社ブランド確立へ〈武州正藍染 小島屋 / KASE〉

歴史や物語を大切に織り上げる
メイド・イン・ジャパンのものづくり

田植え後の水面が美しい田園風景を進み、そびえ立つ煙突に導かれるようにしてたどり着いたのは、剣道着の生地で知られる「武州正藍染」の製造メーカー、小島染織工業株式会社。藍染の歴史が感じられるノコギリ屋根の工場建屋が連なる敷地内にある大谷石造の蔵で、同社代表取締役の小島秀之社長と企画課の根岸七帆さんが取材班を出迎えてくださいました。入り口に掛かる「小島屋」の藍染暖簾をくぐると、ノスタルジックで趣のあるギャラリー空間には小島屋ブランドの藍染プロダクトが並んでいます。ここ数年、若い世代をターゲットに小島染織工業が展開する新しい取り組みのひとつです。伝統を守りつつも常に新たな境地に挑む、小島社長にお話を伺いました。

“綛染め”という武州独自の手法で作業する職人が描かれたロゴマークの織ネーム。写真右は綛の糸の束をほぐす職人、写真左は地中に埋められた藍カメの液を撹拌する職人。藍染織物は防虫効果があり、丈夫で、着心地に優れる。そのメリットから、主に農作業用の衣料として使われてきた

「ご存じのように、日本の伝統的な工芸品や産業はどの業界でも海外生産が主流になりつつあります。そんななか、国内市場では国産品を提供できるサプライヤーが減っているんですよ。ですから逆に剣道着の藍染生地を供給できる我々に受注が集中しています」と小島社長が語るように、剣道着や作務衣、祭の半纏など伝統的な製品の素材として、武州正藍染の需要は安定しているといいます。耐久性を求められる剣道着の生地には、刺子織や二重織など特殊な織技術も必要。小島染織工業では染めから織り、仕上げ加工まで、昔ながらの手法にこだわって一貫して自社工場で行っています。

 

剣道着の素材として長い歴史を持つ“武州正藍染”。刺し子のような複雑な模様も織機によって仕上げられる

 

藍染の糸の色合いを生かして織り上げた生地は、自然な縞模様によってあたたかみのある縞が生まれ“青縞”と呼ばれる

新しいプロダクト企画やオリジナル生地の展開にも力を入れる同社ですが、その製法には、脈々と受け継がれてきた譲れないこだわりがあると聞いて、まずはその製造工程を案内していただきました。

明治5年から140余年続く伝統を受け継ぐ小島秀之社長

伝統を受け継ぐ独自の手法にこだわり続け
藍、染め、織りのクオリティを保つ

藍染織物の第一段階は糸を染めるための準備、“綛(かせ)上げ”という工程。チーズと呼ばれる糸巻きの状態から、糸の芯まで藍がしっかり染まるよう巻き直して“綛”と呼ばれる束にします。時代の流れとともに徐々に機械化したとはいえ、この工場で使用している装置は、木材や歯車、ベルトなどで造られたで限りなくアナログに近いシンプルなもの。「機械というよりも“道具”という方がしっくりきますね」と小島社長も語ります。

小島染織工業が手掛ける武州正藍染のこだわりのひとつ、“綛上げ”と呼ばれる木枠に生糸を巻き取り直す作業

「この“綾出し”という作業は手作業で行っています。糸が切れてしまうと織に影響しますから、熟練の技と繊細さが必要です。私にはできません」と笑います。藍染織物では日本唯一の量産工場と言われる小島染織工業でも、人間の手と目に頼るところが大部分を占めているのです。

綾織りのように交差しながら綛に巻き取った糸の束の、綾をしっかり出すことで糸の芯まで染まり、独特の色が生まれる

 

藍の染料液は、毎日変化する液の状態を槽でしっかり管理している

 

染色はひとつのフックに5〜10束掛けて槽に浸けて、手でほぐしながら染め作業を行う

次の染めの工程でも人の手と目による作業が行われていました。綾出しされた糸の束を藍の染料液に浸けて絞り、さらに人の手でほぐして綾を出す。これを繰り返すことで芯まで濃く染まるといいます。決められた訳でもないのに、職人さんたちの洋服は自ずと藍色に近いものを身につけているようで、藍一色の工場が印象的でした。

趣のある“のこぎり屋根”の古い工場を丁寧に補修しながら、今も現役の工場として稼動している

 

“整経”という作業。経糸がきちんと巻きとられていないと織機にかけたときクオリティに影響する

 

昔ながらのシャトル織機を職人の手作業で適格に調整しながら、手織りに近い風合いに織り上げる。“織り”の職人であると同時に“織機”の職人でもある

“綛染め”と並んで、小島染織工業の特徴的な手法が“シャトル織機”による織りの工程です。昭和40年代に製造された自動織機ですが、最新の自動織機と比較するとやわらかい風合いに仕上がるため、敢えて旧式の織機にこだわり、人の手でメンテナンスをしながら大切に使い続けているのだとか。「自動織機といえども全て機械任せにはしていません。職人の勘が品質を左右します。実際のところ“藍染”は世界各国で行われています。そんななか国産品が評価されているのは、素材へのこだわりはもちろん、職人技が生み出す精緻な仕上がりではないでしょうか」。規則正しく響く織機の音が決して無機質ではなく、どこか郷愁をそそる温かみを感じるのは、手作業へのこだわりと道具としての機械への愛着があるからかもしれません。

多数の染色機を導入し、アパレル素材や工業資材等、様々なニーズに応える

また、染めから織りまで一貫生産体制が整う同社ではオリジナル商品開発や別注品にも対応。併設の染色工場ではウォッシュ加工なども行い、アパレル素材や工業資材の様々な染色、付帯加工も手掛けています。

新ブランドの立ち上げ、コラボレート企画など
若い世代をターゲットとした新マーケットを狙う

脈々と受け継がれる武州正藍染の需要が安定しているとはいえ、「従来の生地供給だけに胡坐をかくことはできない。新しいマーケットをつくっていかなければ」と小島社長は語ります。そこで未来を見据えて、7年ほど前にオリジナル製品の開発を始めました。
そして数年前、専任の部署となる企画室を立ち上げ、新たな製品企画に取り組み始めました。
「“小島屋”は創業時から140余年にわたって藍染織物を生産し続ける染織工場発のブランドです。それを若い世代をターゲットとしたバッグなど生活雑貨へアレンジして、オリジナル製品として発信しています」と語るのは、同社企画課の根岸七帆さんです。入社前にアパレル会社に勤務していた彼女は市場の最前線で培った経験を企画に生かしつつ、小島屋でも様々な製品を開発してきました。

 

アパレル販売業の経験を生かして市場で求められるプロダクト企画を行う、企画課の根岸七帆さん

 

出版社とのコラボレート企画で藍の色味、風合いを生かしたオリジナルファブリックによる雑貨も企画

剣道着に使われる二重織りの丈夫なファブリックをバッグなど様々なプロダクトとして展開

そしてさらに、2年ほど前に“KASE”というブランド名で、オリジナルの生地による洋服ブランドも立ち上げました。量産品にはない味わいのあるやわらかな藍染のグラデーションが好評で、今後の展開に期待が高まります。

自然な藍染のグラデーションと経年変化を楽しむブランド「KASE」をスタート

また、現在もシャトル織機で生地を製造する会社によるコラボレートでユニット“ファブリックシャトルズ”を結成。若い世代をターゲットに、伝統的な手法で織り上げる生地の魅力を独自の世界感で発信し、多くの人を惹き付けています。

オリジナルの生地はもちろん、アパレルやインテリアなど多様な業種の付加価値の高いOEM製品も手掛けている

イベント開催など様々な取り組みで
地域を盛り上げる伝統産業発信の拠点として

藍染織物は根強い人気があって、10年ほど前から“藍染め市”というイベントを開催しています。口コミでも広がって遠方からもたくさんのお客様がいらっしゃるんですよ」と製造業の域を越えて、地域活性も見据えた取り組みに熱心な小島社長。「藍染め市」では、社員食堂の平屋を開放してカフェにしたり、体験ワークショップを開催したりと様々な工夫で地域はもとより遠方からの集客にもつなげています。さらに5年ほど前に大谷石造りの倉庫をリノベーションして生地や製品を販売するファクトリーショップを開設。平日と月に一度土曜日にオープンしながら、藍染織物のブランド認知拡大を目指します。

Rin crossingに登録してから、販路の拡大へ向けてのチャンスが増えたことが大きな変化だったといいます。「やはり本業は製造業ですから、いくらオリジナル製品を開発しても販路が不十分では広がりません。Rin crossingにお声掛けいただいた商談会やギフトショーでは、そういった出会いがあるのがありがたいですね。逆に、刺子織や別注品などOEMを受けていますので、生地製造の需要も発掘できることを期待しています」と語る小島社長。今後も、武州正藍染という歴史ある伝統産業を礎に、様々なリンクを生み出し、新たな価値を織り上げていくに違いありません。

小島染織工業 株式会社
(コジマセンショクコウギョウ カブシキガイシャ)

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