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Rin crossing Eye Rin crossingに期待を寄せる方々に、専門家の立場からいま求められる市場ニーズやものづくりへのヒントをお聞きします。

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レポート<Rin crossing特別セミナー Vol.3>2013/03/19

テーマ「足下を掘れ、そこに泉あり!伝統技術に見る地域資源の活用事例と潜在力」 講師 : 立川 裕大 氏 (株式会社 t.c.k.w 代表取締役/デザインディレクター)

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Rin crossing 特別セミナー

2013年2月6日から8日まで開催された第75回東京インターナショナル・ギフト・ショー春2013において、「Rin crossing特別セミナー」をおこないました。今回は、2月6日に開催されたセミナーをレポートします。
(2013年2月6日(水)10:30〜12:00 東京ビッグサイトにて開催)

地域資源と人との接着剤として

ディレクターというポジションで、プロジェクト全体を企画し骨格を作っていく仕事をしています。私は仕事をするにあたって「社会にコミットする」「文化を創造する」「健全な経済活動である」という3つのバランスを意識しながらプロジェクトの指揮を執ります。そしてもう一つ、これは必ずですが、対象になるこの会社あるいはこの地域だからこそできることを念頭に置きます。いわゆるアイデンティティを引き出すということですね。

私は外部ディレクターとして、もしくはコンサルタントとして、企業さんとともにプロジェクトを進めるとともに、「ubushina(うぶしな)」という事業も自社で手がけています。伝統技術という日本各地に宿っている多様性を、ほぼオートクチュールで家具、照明、アートワーク、内装材などをその空間のために一点ずつ制作しています。店頭に並べるために在庫を持つという既製品のフォーマットを持たず、一つひとつ注文をいただいて、その空間のためにあつらえるという事業です。

富山県の高岡市にものづくり事業の講師として行ったことが、このプロジェクトのきっかけでした。そこで高岡でものづくりに携わる人たちに、「東京のショップで売れそうなものを短絡的に狙ってつくるのではなく、みなさんが持っている技術そのものを売りましょう」と提案したのです。彼らの技術と東京などで活躍する建築家やデザイナーといったクリエイティブな人々を私が結びつけ、そこから今は存在しないいろいろなものを一点ものとして生み出していく。それが「ubushina」です。

たとえば、この照明器具は、おりんを制作する職人の技術を転用しています。彼らが通常使っている技術を、少し角度を変えて活かしています。ペニンシュラホテルの最上階にあるバーに飾ってあるこのオブジェは、校長先生の銅像を製造しているような鋳物工場でつくられました。これは、スカイツリーの出発フロアの23m×3.5mの巨大壁面です。高さ3mの12体のオブジェを、伝統技術を駆使してつくっています。

このように私はデザインもできないし、ものをつくれるわけでもありません。プロジェクトの骨格を描きながらディレクションし、その活動をけん引していく。各ジャンルのプロフェッショナルをつなぐ接着剤のような働きと言っていいでしょう。さまざまな要素を整理しながら、人と人、もしくは地域資源と人をつなげるのが、私の仕事の特徴ではないかと思います。

グローバリゼーションの影で失われる伝統技術

では、ここからマーケットについてお話していきましょう。まず自分たちを取り巻く世界観がわかっていないと、何をやってもダメですね。10年も経つと取り巻く環境なんて、まったく変わってしまう。社会が今どんなふうにできているかを、自分の頭で理解するということは不可欠です。

みなさんは、地域資源や伝統技術ということに興味があって、お集まりだと思います。個人的にこのような分野は、超巨大企業や世界的なグローバル企業とは相反すると考えています。それらが均一性や効率化を志向するならば、多様性溢れる伝統技術などは手間ひまかけることが避けられない非常に効率の悪いものです。世界は今、グローバリゼーションに覆われようとしています。郷土料理に例えると分かりやすいのですが、効率の悪いそれが世界チェーンの食べ物に取って替わられようとしています。世界各地に宿る多様な文化が駆逐されてしまうのならば、それは人類にとって非常に危険なことなのです。

このところ日経新聞を読んでいると、グローバリゼーションという言葉が出てこない日はありません。そのグローバリゼーションのフォーマットの中では、生産地や消費地が簡単に代替されます。この前まではこの国が安かったが高くなったので別の国でつくろう、この国で売れなくなったから違う国で売ろうよ、ということが起こっています。こんなフォーマットの中で、伝統技術という文化的資産がないがしろにされている状態です。

昨年の夏、私はあるアジアの国に、手仕事を探しに行ってきました。あの国の手仕事なら、素晴らしいものが見られるだろうと、たいへん期待していました。ところが実際に行ってみると、伝統技術の保有者たちの多くはその国に進出したグローバル企業の工場で、機械仕事に転職していたのです。伝統技術の産地は壊滅状態でした。そのグローバル企業はもっと安い生産地を求め、いずれ他の国に工場を移します。その時、彼らはもうその手仕事に戻ることができないでしょう。これは人類の資産の損失です。たかだかこの50年ぐらいで、そういうことが起きているのです。

今後のマーケットの鍵は「C世代」が握る

少しブレークダウンして、マーケットの空気感についてお話しましょう。
今、20代ぐらいの「C世代」といわれている人たちは、とても興味深い志向性を持っています。コンピュータネイティブであり、コラボレーションなどで繋がり合い、シェアハウスなどのコミュニティを形成して、何かを創発していく。コントリビュート(貢献)志向も強く、自分たちの生活をクリエイトしていく。変化、チェンジの時代。見事に「C」ですが、その「C世代」が10年も経てば消費の主役になってきます。

リーマン・ショックや震災の影響もあるでしょう。私もそうですが、あそこから物質的なものに対する捉え方がずいぶん変化しました。1985年のアンケート調査では、45%の人が社会貢献したいと言っていました。そう考えている人が、2010年には70%に増加しています。震災前の調査なので、現在、世の中に貢献したい、何か自分にできることはないかと探している人はもっと多いはずです。消費することにおいても社会や誰かとつながっていたいのです。モノの背景が消費の後押しになります。たとえば日経MJなどを読んでいても、そのようなキーワードがたくさん出てきます。「フェアトレード」「寄付つき商品」「自己研鑽」。文化や自分のルーツとつながる伝統技術もそれに含まれています。「地域資源」や「地産地消」などに対する意識がとても高い。そういう人たちが、今後も増えるであろうと見込めるような消費動向だと思います。モノの消費よりも、コトの消費にウェイトが移ってきているのです。そして現在は「サーチとシェア」の時代なのでモノの背景にあるコトはいとも簡単に調べることができる。気に入ってもいらなくてもシェアして情報を分け合うので、好ましいコトを背負う商品はますます強みを発揮するのです。

アイデンティティを強みに、世界の必要を埋める

マーケットにそういう空気感があるとしたら、私たちはどうすればいいか。次は実践編です。私は戦略には2種類あると思っています。「槍」か「網」、攻めるか仕掛けるかです。私自身は今、「網」という戦略にたいへん注目しています。この10年間でインターネットの環境が、ものすごい勢いで変わっています。「網」にとって、ネットはとても役立つツールになってきているからです。

ただ「槍」と「網」という戦略も、アイデンティティが希薄な人、会社、地域には適応外です。しかしそのアイデンティティは、突き詰めれば絶対あるものなのです。万一自信の無い場合でも、アイデンティティの種は仕込めると私は思っています。

それを図式化して説明しましょう。まずは「槍」です。これはどこかの伝統的な陶器の産地だとします。そこでは山の中から土を掘ってきて粘土にし、そこで生まれ育った人たちがそれを焼いて陶器にしています。そして同じ土の中から育った野菜を採ってきて料理し、地元の人たちで食べているといった濃厚なアイデンティティがあったとします。ところが東京という場所の存在を知ります。彼らは牧歌的な地産地消を実践していたのですが、地元のものを東京に持っていってみようという話になる。その次はパリ、上海・・・と、地産地消の「産」と「消」が分離していきます。ここで問題なのは、本来は赤をつくるのが得意な人たちなのに、消費地に合わせて青や黄色、緑をつくらなければならなくなる、いわゆるマーケティングが入ってくることです。そこで自分たちのアイデンティティを、切り売りし始める流れができます。加えて市場には世界中の競合相手がひしめいていますので、価格、品揃え、サービスの競争が果てしも無く続くのです。

私が「こうだったらいいな」と思っているのが、自分たちのアイデンティティをもう一度きちんととらえ直して、それを売りものにするという「網」の戦略です。アイデンティティを切り売りしないで、それを自分たちの強みに変えていけばいい。守りながら広がっていくイメージです。そこで出会うモノ、コト、ヒトを地元まで引き込んでいきます。情報を自分から発信できるインターネットのおかげで、こういうフォーマットができるのでは、と私は思っています。ECサイトでも実現可能です。槍と網、世界の中心とおぼしき消費地に向かっていくのか、あるいは自分が世界の中心になっていくのか。アウェイでやるのか、ホームでやるのか。ものをどんどんつくる大量生産志向からシフトして、少量生産でも定価販売で利益を厚くできるようにする。コンテンツはマネできますが、場所とコミュニティは絶対マネできません。自分たちのルーツ、神様からの授かりものを武器にすることができるのです。

違う視点の話をしましょう。これからは必要を埋めるということが、大きなビジネスになってくると思っています。そうすると日本は課題先進国で、必要は数多くあります。少子高齢化、人口減少、エネルギー問題・・・。たとえば高齢者に目を向けると、高齢者向け家具は福祉業界にお任せになっています。しかし、何か暮らしにフィットしませんよね。中国に行けば日本の人口ぐらいの高齢者がいるのですからこれからの市場はいくらでもあります。かっこいいイスをつくることに夢中になる前に、目の前にある必要に目を向けた方がいいのではないでしょうか。あるいは、焼き物であれば、子どもの孤食問題や生活習慣病を解消するための食器を考えてみるとか。特に発展途上国などには必要ばかりです。貧困、児童労働、エイズ、衛生などの改善、今後こういう必要を埋めていく、その必要が切実であればあるほど、自分たちに返ってくる報酬は大きいと考えています。

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