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レポート<地域にFOCUS in 浜松>2014/08/04

Rincrossing Eyeレポート「地域にFOCUS」は地域においてモノづくりに関わる若手経営者や支援グールプ等動に焦点をあてて、各地で起きている様々な動きを紹介してきました。
今回は第4弾として、遠州地方の伝統織物である遠州綿紬の生地・雑貨等の企画販売を行う「ぬくもり工房」とその遠州綿紬の商品化・ブランド化に取組み、感性豊かな新しいキスタイルとして発信する「遠州縞プロジェクト」についてのレポートをお送りします。

遠州綿紬の歴史と遠州縞プロジェクトの発足

静岡県西部に位置し政令指定都市でもある浜松市は、輸送機器関連や楽器、近年は光産業・エレクトニクス関連の工業都市として有名であるが、実は江戸時代から続く遠州綿紬に象徴される繊維のまちでもある。
その浜松市染池台の閑静な新興住宅地きらりタウンの中に、2013年の秋にオープンしたばかりの「ぬくもり工房」の新ショップ(本店)がある。周辺の住宅街の佇まいとマッチした瀟洒でモダンな造りである。

ショップの外観

創業7年目して、事務所も兼ねるこの店舗をオープンした有限会社ぬくもり工房の若き代表取締役 大高旭さんと遠州縞プロジェクトメンバーの代表である小杉思主世(しずよ)さんのお二人に、遠州綿紬の現状と普及に関するそれぞれの活動について、綿紬を現代の暮らしに取り入れたオリジナルアイテム「つむぐ」や地元の逸品が並ぶ店内で伺った。

 

店内に陳列されたオリジナルブランド「つむぐ」を中心として雑貨アイテム

 

雑貨以外のエプロンやバック・アパレル類

取材に応じる大高さん(左)と小杉さん(右)

遠州地方は江戸中期良質な綿産地として栄え、1845年藩主井上河内守正春によって機織が奨励されて以降、独特の遠州縞の木綿織物が発展していき、昭和初期まで繁栄を誇り、庶民の着物や和小物の素材して、全国に販売され、その一時代を築いた。
しかし、時代とともに流通量は減少、特に1970年代以降は他の産地と同じく化繊の普及、海外生産に押され、機屋も少なくなり、現在は数軒を数えるほどとなっているとのこと。
そのような状況の中、2005年に小杉さんをはじめする地元の有志が集まり、実用呉服として広く普及してきた「遠州縞」織物を新感覚でとらえ、その魅力を発信するプロモート活動を目的としたプロジェクトが誕生。これが遠州縞プロジェクトである。

ぬくもり工房の創業と遠州綿紬のブランディグ化

その頃、祖父が立ち上げた繊維卸会社を手伝うこととなった大高さん。会社の仕事の中で、祖父の代から取り扱ってはいるが、現在は採算の合わない綿紬という商材でなにか新しいことはできないか、いつしか思うようになり、2006年に綿紬部門を引き継ぐ形で独立、現在の綿紬専門の企画開発・販売会社を設立した。
そして、デザイナー・専門家・消費者・機屋等といった多彩なメンバーで構成される遠州縞プロジェクトと出会い、産元(発売元)として販売の立場からメンバーに参加することとなった。
メンバーの小杉さんは県内の公的試験機関で長年、繊維企業の支援を行ってきた。退職後も、浜松繊維デザインのルーツともいわれる綿紬の温かみのある色合いとやわらかな質感が持つ、味わい深い魅力を残したいと市民レベルでの文化活動などを通じて、織物の歴史、遠州縞の意味とモノづくり精神を伝えている。
大高さんは、メンバーの一員として製造工程の研究からイベント企画といったプロジェクト活動に携わる一方、祖父の時代からお付き合いのある企業支援の経験豊かな小杉さんのアドバイスもあり、自社としても地域の商品デザインコンペ等に積極的に参加、受賞を続け、綿紬のブランド向上に力を注いでいった。

両者の活動が相まって、遠州縞に憧れる人たちの交流の場として広がりを見せている。地元作家さんの他にも地元高校での創作活動が行われるようになり、これらの成果発表の場も兼ねた展示販売会「遠州綿紬 ぬくもり市」は、地元大手企業・金融機関の協力を得ながら、13回と開催を重ねているとのこと。
このような地道なプロモ--ション活動を行った結果、地元ですら知名度の低かった綿紬は、色柄のバラエティの広がりとも相まって、20~30代の女性を中心に若者の間にもファンを増やしてきている。
ぬくもり工房においても従来からのオンラインショップでの販売に加え、各地での催事やポップアップショップといった販促活動により、徐々に販売量も増え、ブランディングに関しても、地元のクリエイターとパートナーシップを結び、商品開発、ロゴ・パッケージやアンテナショップの内装等トータルコーディネイトを進めている。

今後の活動と課題

新アンテナショップ等実店舗での発信をはじめとする自社のネットワークの展開により、地域資源としての地位の確立は進んではいるが、課題もいくつか存在する。
生産供給面では深刻な後継者問題がある。ぬくもり工房と取引がある細幅織の機屋さんは2軒、若いと言われる者でも50代後半、染色・整理といった業種を含め産地全体でもかなり高齢化を進んでいる。出荷量も従来から比べれば増えてきてはいるが、職人の生計維持に必要な賃金に見合う需要の開拓が更に必要である。一方、新たな入職者はおらず、需要が今後増えると現在の取引先だけでは供給面に不安があるとのこと。地域内での他の機屋との連携も視野に入れるか検討したい考えもある。

商品開発面では、新たな用途開発とデザイン開発・技術改良等である。
ショップ内では雑貨以外に男性もののストールも展示され、オーダー販売もしている。ユーザーへの直接販売以外では、従来の生地卸に加えて、アパレルやインテリア素材としてマーケーティングが急がれる。その足がかりとなるのが、地元にある星野リゾートの施設「界 遠州」の客室・館内の一部を綿紬でディレクションしたことである。市内の飲食店の内装用にも広がりをみせている。

生地のサンプルを紹介する大高さん

店内2階のブラウス、シャツを中心とした陳列

デザインのべースとなる縞については、「日本の縞」として150柄以上在庫するが、デザイナー以外に大高さん自身でも考えるそうである。共通した色のタテ糸を使い、配列の変化により、いかに違う柄に見せるがむずかしいという。
現在、四季をテーマにして縞柄のイメージマップを製作中であるが、絹を着ることができない庶民がファッションを楽しみたいというと生まれた彩り豊かな縞柄は、江戸時代から現在まで数千種といわれている。そこで、小杉さんが現存する端切れによる縞柄のアルバム化を進めており、デザインの保存と新たな開発のベースとなるものと思われる。

 

縞柄保存のためのアルバム

 

大高さんの祖父の時代に使われていた巻き板(生地を巻くための道具)

小杉さんは、遠州縞プロジェクトとガラ紡愛好会、手織り遠州縞委員会で構成されるIOC研究会(糸作り・織物・コミュケーション)といった活動や市内の学校での綿紬に関する体験学習などを通じて、今後も綿紬を浜松ブランドとして広めていきたいとしている。
ぬくもり工房から機屋さんに向かう前に、あらためて、店内と多くの生地が積まれた事務所を案内してもらうと、気づくことあった。それは、店舗と事務所の境はカウンターのみであること。そこには、意図があり、接客していない従業員もお客さんの動きや会話がわかり、商品開発や商品ディスプレイの参考となり、お客さんは商品になる前の生地を見ることができ、綿紬の魅力により触れることができるといったメリットがあると大高さんは語る。

 

店内に積まれて生地の棚

 

2階からみた店内とカウンター

事務所部分の内部

ショップに前に立つ小杉さん(左)と大高さん(右)の二人

小杉さんと別れ、店舗を後にし、実際に生地をお願いしている機屋 池沼織工房に向かう。職人として遠州縞プロジェクトのメンバーに参加している沼池友市さんから、整経・機織の工程を実際に見せていただいた。昔ながらの織機により、木のシャトル(杼:ひ)の音がガッチャンとする中、一反ずつ丁寧にゆっくりと経糸と横糸を織り上げ、幾つもの縞模様が作られていく様を拝見することができた。大高さんと沼池さんの言葉少ない会話の中にも、ともに綿紬を絶やさず創り続けようとする強い意志を感じることできた。

沼池織工房内の織機(左上が昔ながらの木製のシャトル)

新たな構想に向かって

工房から帰りの車中で、大高氏に今後のビションについて語っていただいた。
ぬくもり工房のあるきらりタウンでは毎月地元信用金庫と大高さんがきらりマルシェという朝市を信用金庫支店の駐車場で開催している。ぬくもり工房の商品以外に地元の農産品、雑貨などが並ぶ朝市である。地元の住民とのつながりを大切にするため、定期的に開催している。最近は出品者のネットワークも広がってきており、また、近くに開設されたショップや工場見学施設を併設した地元菓子メーカーの新鋭工場とのコラボ構想もあり、地域の良さを更に発信しながら、自社のブランディングを確定していきたい。
市内の三ケ日地区に織物の神様が祭られている初生衣神社があり、ぬくもり工房のロゴマークのベースはこちらの鳥居をモチーフにしている。この神社の持つ歴史に象徴される地域の背景や物語を知り、職人によって受け継がれる綿紬の良さを通じて産地の伝統を大切にしていきたいと語る大高さん。
「今は、夢というか、構想ですが、市内の有玉神社の脇にある現在文化財に指定されている昔の豪商の屋敷を活用して、工房の集約化を図り、観光客が見学や飲食・ショッピングなどが楽しみながら綿紬の歴史を知ってもらえるような複合的な施設を運営したい。できれば、隠れ家的なおもてなしもできる宿泊施設も併設したい。」

地域に根ざしながら将来に向かって夢を持ち、情報を発信し続ける大高さんであるが、最後に、ご本人から信念というか、行動指針とも受け取れる以下の言葉を聞いた。
「願い事を、言葉にし、口にすることによって実現してきた。」今後もその姿勢を貫いていくそうである。

有限会社ぬくもり工房

URL:http://nukumorikoubou.com/
代表:大高旭
〒434-0046 静岡県浜松市浜北区染地台3丁目12-25
TEL:053-545-6491

遠州縞プロジェクト

URL:http://enshujima-p.net
事務局:ハッピー工房内
TEL:053-431-1511 鈴木めぐみまで

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