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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #011 (及源鋳造株式会社)

#011 及源鋳造株式会社2013/03/19

伝統を守り、革新を続ける現代の暮らしになじむ南部鉄器

パリで評価の高い、洗練された南部鉄器

パリジェンヌと南部鉄器。意外な組み合わせですが、今、パリのエディアールなどの洗練されたカフェで、南部鉄器のティーポット(急須)が愛用されています。

海外輸出用のカラー急須

「近年、日本では、南部鉄器は重い、古い、錆びると敬遠されがちでした。しかし、その特性が海外では、重厚で保温性が高い、伝統文化を感じる、愛着がわくとポジティブに捉えられたのです。品質やデザイン性も高く評価され、本当にうれしく、誇りを感じました」というのは、パリで敬意をもって"マダム・オイゲン"と呼ばれる及源鋳造株式会社5代目社長の及川久仁子さんです。

同社がある岩手県奥州市水沢区は盛岡市と並ぶ南部鉄器の一大産地。その歴史は平安末期(1088年)までさかのぼります。同社の創業は江戸末期の嘉永5(1852)年。産地内では鍋釜の鋳造を主に担う「鍋屋」として発展し、近年はマンホールや街灯、機械部品も製作していました。

現代のライフスタイルにマッチした商品開発

「今の時代、従来の流通形式に頼らず、自分たちで製品の良さを伝え、売っていく工夫をしなければと感じています。もう一度、南部鉄器を暮らしに身近なものにしたい」と、代表取締役社長の及川久仁子さん

しかし、バブル崩壊とともに経営は悪化の一途を辿ります。東京の美術短期大学を卒業し、デザイン事務所で2年間勤務した後に実家である同社に戻った久仁子さんは、熟練の職人さんに混じって石膏の原型づくりやプレート製作といったハードな鋳造工程に従事して技術を学び、その後、営業職に転じて新製品の開発企画研究所を立ち上げました。

「鋳造の現場にいたときから、現代のライフスタイルにあまりに合っていない商品開発に危機感がありました。お客様はどんな暮らしをしているの? キッチンはどう変わっているの? もっと現代に息づく南部鉄器製品をつくりたいという思いでした」

こうして調査と試行錯誤を重ね、1999年に誕生したのが、大ヒット商品〈タミさんのパン焼器〉です。南部鉄器のイメージを一新するおしゃれで実用的なこの商品は、有名通販雑誌やTVショッピングなどを通じて高い評価を得ました。

この成功をバネに同社の新商品開発も一変。そして新たに取り組んだオリジナルデザインの急須が高い評価を受けたのです。

新技術の開発とともに伝統を守る

2006年に登場した〈上等鍋〉シリーズには、岩手大学との産業連携で実現した酸化皮膜の形成技術が用いられています。これは同社ならではの特許加工技術で、塗装がなくても錆びにくいという特徴を持ち、リサイクルも可能。日本以上に環境への関心の高い海外で〈NakedPan(裸の鍋)〉として一足先に販売し、好評価を得ています。

 

ガスコンロで手軽にドーナツ型のパンやケーキが焼ける〈タミさんのパン焼器〉

 

〈NakedPanウォック(中華鍋)〉。塗装がないので、熱が効率的に食材の水分を飛ばします

新技術に意欲を見せる一方で、900年に及ぶ南部鉄器の伝統製法を未来に伝えるために、社内で伝統職人の育成を始めました。今は研究が中心ですが、「10年後には彼らが社の宝になる」と久仁子さんは言います。

「量産化のために私たちは60年前に伝統製法を捨て、工業化を押し進めてきました。しかし、アンビエンテ(ドイツ・フランクフルトで開催される国際見本市)をはじめとする海外の展示会に参加して思うのは、伝統に立脚しなければ自信を持って売ることができず、真の意味で評価もされないということです。海外のお客様は、私たちの商品の後ろに日本文化を見ています。これからは日本のお客様が伝統を誇りに思い、精神的な豊かさを感じていただけるような商品をつくっていかねばならないと思っています」

東北のさまざまな企業と同じように、同社も東日本大震災の被害を受けました。絆の大切さが見直されるなか、長く使えて愛着の持てる製品で豊かな暮らしを支えたいとの思いが溢れています。

最後の仕上げは熟練の職人さんたちの手仕事。こうした仕上がりの美しさが海外での評価につながっています

先鋭的な南部鉄器コレクション〈k.i.w.a(キワ)〉

Rin crossingでは、新しい可能性を探るために"OIGEN"が挑戦する先鋭的な南部鉄器コレクション〈k.i.w.a(キワ)〉を打ち出しています。"キワ"の名は、時代のキワ、尖っている、エッジが立っているという意味を内包しています。

シリーズの鉄器は一見、皿ともオブジェともインテリアツールとも見え、「あなたは何に見立てますか?」というコンセプトのもと、使う人のアイデアや楽しさを引き出していく斬新な商品です。ニューヨークで開催された「ニューヨーク国際ギフトフェア」では白い展示台の上に商品を並べ、「あなたは何に使いますか?」とだけPOPをつけた展示法がクリエイターを熱狂させ、「アンビエンテ」ではトレンド2013に選ばれました。

 

先鋭的な南部鉄器コレクション〈k.i.w.a(キワ)〉シリーズ。トレイのような商品ですが、使う人のアイデアでさまざまな用途が生まれます。「potsu」(左写真・手前)、「kyu-kyu」(左写真・奥)、「ぱしゃ」(右写真)など、それぞれのネーミングも個性的

こうした発想は、久仁子さんの人柄や信念に共感するさまざまな業界のサポーター、"チームOIGEN"に支えられています。

「積極的に業界外の人に会い、長い目で付き合い、じっくり話し込むようにしています。私たちの技術を違う視点から見てくれるので面白さや可能性を再発見できるのです。Rin crossingにもこうした出会いや、従来の南部鉄器の販路とは違うマーケットへの期待があります。『これなぁに?』『面白い』と感じてくださったさまざまな業界の方々に、あっと驚くような自由な使い方を提案していただきたいですね」

及源鋳造株式会社
(オイゲンチュウゾウカブシキガイシャ)

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