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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #012 (天池合繊株式会社)

#012 天池合繊株式会社2013/05/27

一流ブランドを夢中にさせる世界一薄くて軽い生地〈天女の羽衣〉

世界のクチュールメゾンが認めた幻想的な生地

スローモーションのようにとろりと揺れる不思議な動き、水のような光沢と透明感。その魅入ってしまうほどの美しさに、まるで"天女の羽衣"のようと、驚きの笑みとともに自然とそんな言葉がこぼれる。「展示会で皆さんそうおっしゃるので、じゃあその名前にしようかなと」、そう言って天池合繊の二代目社長・天池源受さんは照れくさそうに微笑みました。

直径が毛髪の約5分の1という超極細糸を使って織り上げた〈天女の羽衣〉は、重さが1m2当たりわずか10g。2006年の発表以来、世界一薄く軽い服地として注目され、国内外の一流ブランド、パリコレ、パリオペラ座に採用されるなど、評価・関心は高まる一方です。

天池源受代表取締役社長。光沢のあるポケットチーフは〈天女の羽衣〉、ドレッシーで素敵です。「興味を持ってくださった方に、いつでも説明できるようにしています」

「これが原糸です」、天池社長が布の端をほどいて見せてくれた糸は、まるで蜘蛛の糸のよう。これだけ細い糸を織れる業者は世界に数社しかなく、織りから染色、縫製までを手掛けているのは同社だけなのが大きな強みです。

国内ではスカーフなどに仕立てた製品が売れゆき好調です

「布ならどんな布でも織ります。この生地を使った世界一薄いちりめんや、チタンコーティング、シルクやラメの交織で豪華なグラデーションを表現したもの、泡をイメージした立体造形的な製品など、つねに新しいものをつくり続けています。ヨーロッパのお客さんに『ジャパンマジック』と言われるんですよ」

「一流企業に」と夢見た2年半の開発

一躍世界の注目を集め、対応に追われる同社。しかし、この生地が生まれた経緯は、天女が舞い降りるような幸運とは言い難いものでした。

同社の所在地である石川県七尾市は、古くから繊維産業が盛んな地域。先代が創業した1956年頃は国内の合成繊維業界の最盛期でしたが、80年代以降、安価な海外製品との価格競争による同業者の倒産や廃業が相次ぎました。

「価格競争を避けるには、技術力で勝つしかない。衣料用の布地に加え、粘着テープなどの産業分野にも進出しました。それでも中国製品に押されて危機感を募らせるなか、ある大手メーカーから7デニールの糸が持ち込まれたのです」

当時もっとも細い糸が20デニールだったなかで、驚異的な細さの新開発の糸。これをディスプレイ用の産業資材としてなんとか織れないかという相談でした。

 

同社には定年制がなく、「社長がランドセルを背負ってた頃から知っている」ようなベテラン職人たちの高度な手仕事の技に支えられています。「目にも留まらぬ速さで一万本の針に糸を通したり、蜘蛛の糸のような細さの糸の微妙な変化でも手触りで気づいたりする。神業です」と天池社長

 

一番上が〈天女の羽衣〉の糸。現在はさらに細い5デニールの糸を自社生産しています

「通常の織機で織ると、案の定プツプツ切れてしまいます。無理だと思いましたが、かつてないほど大規模な案件で、これが織れたらうちも一流企業になれると夢見たんですね」

前例がないうえに、顕微鏡で織目を確かめるような緻密さが求められる産業資材。技術開発は困難を極め、ベテランの職人を巻き込んでアイデアを練り、天池社長自ら図面をひいて専用織機の開発に明け暮れました。そして2年半かけてやっと製品化に漕ぎ着けたところで、なんと発注元の大手メーカーの原糸部門が他社へ売却され、業務が中断してしまったのです。

他にない特殊なものをつくり続けて存在感を示す

設備投資は、3億円以上に膨れ上がっていました。衣料用に応用し、商社に頼らず直販するというアイデアは、地道に受注生産を続けてきた同社にとってかつてない取り組みでした。

「社運を賭けた挑戦? いえ、やらざるを得なかったのです。背水の陣ですよ」

パリで毎年2回開催される、世界最大の国際的な繊維と服地の見本市「プルミエール・ヴィジョン」。今年の2月に出展したときの様子

どうやって売ったらいいのかと業界団体などを訪ね歩き、思い切って初参加したミラノでの展示会では6枚の名刺しか受け取れませんでした。途方に暮れた天池社長でしたが、目利きのバイヤーはこの生地の類い稀なる魅力と可能性にすぐさま気づいていたのです。これを契機に有名ブランド2社との取引が実現し、デザイナーが「今回の作品はこの生地に助けられた」と語ったことから、一気に注目度が高まりました。

現在は定期的に参加していた展示会がなくなってしまい、イタリアとパリでコネクションができた60社ほどを、社長自らトランクにサンプルを詰め、シーズンごとに回っています。

海外メディアからからの取材も多く、生地の売上げの8割はヨーロッパ市場。海外のファッション誌にも〈天女の羽衣〉を使った有名ブランドの服が頻繁に登場しています

「行商ですね。毎回必ず新しいアイデアを入れて持っていきます。〈天女の羽衣〉は製造に手間がかかるため、安価なものではありません。そのうえ私たちはうまい売り方がわからないし、なんでも手探りですが、特殊なものをつくり続けていれば『また見せてほしい』と言われるし、注文も入る。メディアにも自然にとりあげてもらえるんです」

お客様の声を生かし、新たな商品づくり

いま同社が課題としているのは、スカーフやコサージュなどのオリジナル製品づくりとブランディングです。

「もともと1mいくらで織っていればよかった商売ですから、〈天女の羽衣〉の薄さに驚いたお客さんから『これ、縫えるの?』と聞かれても、『さぁ、わかりません』と答えるしかなかった。これじゃあいかんと縫製屋さんのアドバイスを受けて専用ミシンを導入し、スカーフに縫って持っていったら、ある百貨店バイヤーの目にとまったのです」

その百貨店の協力でさまざまな製品にトライし、その価値を認めた著名人や富裕層に高価格で売れていくのを、天池社長自身、まだ驚きながら見ています。加賀友禅の作家や服飾デザイナーから声をかけられ、コラボ商品にも積極的に取り組むようになりました。

加賀友禅の技法で染めあげた"天女の羽衣"加賀友禅ショール。ひとつひとつ手描きしている一点物です

「おかげさまで話題になっていますが、まだ売上げは弊社全体の3割ほど。流行の影響もあると思うと、いつも不安ではあります。Rin crossingには販路開拓はもちろん、さらに海外展開を進めるためのサポートやPRを期待しています。また、バイヤーさんや消費者の声を集めて情報提供してもらえると、次の商品づくりにつながるのでうれしいですね」

天池合繊株式会社
(アマイケゴウセンカブシキカイシャ)

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