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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #014 (谷口・青谷和紙株式会社)

#014 谷口・青谷和紙株式会社2013/07/25

世界初の立体漉き和紙技術で洗練された和の美を伝える照明器具

和紙のすばらしさを現代に活かしたい

現在でも書道用紙の全国シェアの60%を占め、「生産量日本一」の地位を守り続けている因州和紙。その起源は定かではありませんが、正倉院に残された資料からおおよそ奈良時代まで遡ることができます。また、平安時代の「延喜式」に因幡の国から朝廷に紙が献上されたという記録があります。江戸時代には、因州和紙は藩の御用紙としても、庶民の使う紙としても盛んに生産され、紙座で取り引きされました。

世界で初めて和紙を立体に漉く技術を確立し、注目を集める谷口・青谷和紙株式会社も、谷口博文代表取締役社長の祖父が鳥取市青谷町で大正後期に始めた手漉き和紙が原点です。その後、実父が材料卸に転じて創業。その父の急逝で、勤めていた大手生命保険会社を辞して帰郷し、24歳の若さで後を継ぎました。

深い教養に裏打ちされた確固たる信念を持ち、精力的に事業を展開してきた谷口博文代表取締役社長。年齢を訊かれると「48歳」と答える若々しさで、さらなる新事業に目標を据えています

「和紙産業が衰退の途を辿っていたこともあり、家業を継ぐつもりはありませんでした。しかし、やはり父がやり残した事業を継承したいという思いや、和紙そのもののすばらしさに共感があったのですね。幼い頃から良さを感じていますから、このまま廃れてしまうとも思えなかった。伝統を守りながら現代化し、機能を充実していけば充分にチャンスはあるのではないか。一回しかない人生を和紙に賭けてみようと思ったのです」と、谷口社長。

こうして、「現代に活きる和紙」をテーマに同社の挑戦が始まりました。若い女性をターゲットにした現代感覚のステーショナリーやラッピング素材、現代空間に合う壁紙や襖紙、スクリーンなど、オリジナリティ溢れるアイデアで存在感を示していったのです。

“継ぎ目のない”球形の立体和紙を照明器具に

同社が世界的に注目を集め、自社ブランドで海外展開を図るきっかけとなったのは、2005年に発表した“継ぎ目のない”球形の立体和紙をシェードにした照明器具『AOYA washi lamp』シリーズです。著名なプロダクトデザイナー・喜多俊之氏とコラボレートし、グッドデザイン賞2005で中小企業庁長官特別賞を受賞するなど大きな反響を呼びました。

 

『AOYA washi lamp』シリーズ。立体漉き和紙は継ぎ目もなく、表情は蚕の繭のように穏やか。楮の持つ柔らかな繊維感も魅力です

 

球状に漉き上げた和紙を用いた『Natural』シリーズ。雲や繭といった自然のなかにあるものをモチーフにしています

この立体和漉き紙製造に着目したのは、その16年前に遡る1989年のことです。 「当時、半球形の立体漉き和紙製品はいくつもありました。大きな径が空いていれば型が抜けるので、これはそうむずかしい技術ではない。しかし継ぎ目のない球形となると、どこからも型が抜けないため不可能と思われていました。こうなると面白く感じてね(笑)、誰もやらないならやってみたいと思ったわけです」

鳥取県産業技術センターの支援を受けて研究開発に着手し、翌年には基礎となる技術を確立しています。しかし、なぜすぐに量産化に繋げなかったのか、なぜいま精力的にこの技術を活かした自社ブランドを推進するのか、そこに谷口社長のマーケットニーズを見極める視点があります。

「開発当時はバブルが弾けてデフレに突入し、効率性や低価格が強く求められていました。しかし、世の中が成熟するなかで、消費者の興味関心は単なる機能からテクスチャー(質感)に移り変わってきています。和紙の肌触りや心和むあかりを楽しみ、心豊かな暮らしを求める価値観が育ちつつある。これからはさらに創り手、繋ぎ手、使い手が価値を共有する文化型の産業が見直される時代に入っていくのではないでしょうか」

個性を文化にまで高める普遍性

和紙を通して日本的な空間の深みを日本人の心に訴えかけ、そして海外にもその文化を伝えたい。斬新なアイデアで製品開発に取り組み、積極的に海外の展示会にも出展して販路開拓を行ってきた同社ですが、礎となる信念は古くからの伝統や四季、自然との共生に重きを置いた普遍的なものです。

「新たなプロダクトが長く定着するには、文化として受け入れられる必要があります。そのためには、まず弊社なりの和紙の座標軸、紙づくりに対する考えがなければならない。オリジナリティを求めながら我流にのめり込むことなく、つねに伝統技術や古典の美を鑑みて一定の普遍性を求めてきました」

 

従業員は現在12名。機械化が進んでも、根気のいる繊維のゴミとり作業(写真)や仕上がりの最終チェックなどは人の手で行っています

 

抄紙機。徹底した品質管理によって、付加価値の高い和紙を生産しています

こうした谷口社長の考えは、生産ラインにも表れています。全国でも珍しい三層漉きが可能な巨大抄紙機は、独自に職人の経験や勘だよりの製造技術を数値化し、生産管理や品質管理を徹底したもの。高度な技術で大手メーカーのOME生産に応えていますが、単に量産を意図するのではなく高付加価値の多品種少量生産を意識しています。

「現在も日々気温や湿度による品質変化などを計測してデータを蓄積し、進化させているのですよ」

和紙ならではの魅力を追求し、ブラッシュアップを図る。こうした姿勢がデザイナーや先駆的な企業に支持され、欧米のデザイン市場でも高い評価を受ける製品づくりにつながっています。

今後はファッション分野にも挑戦

ミラノサローネ2013の展示の様子。手前右がルカ・ニケット氏と佐藤オオキ氏のデザインスケッチを元に製作したアイスキャンディーのような和紙の照明『paper ice cream』です。写真:Joakim Blockstrom

今年4月には、世界最大規模のデザインの祭典「ミラノサローネ(ミラノ国際家具見本市)」で、気鋭のデザインオフィスnendo(ネンド)とのコラボレーションで製作したアイスキャンディーのような和紙の照明『paper ice cream』を発表。ヨーロッパ各地のバイヤーから好評を得ました。

モダンで洗練された『AOYA』ブランドは高感度なセレクトショップで人気を集めているほか、大型商業施設の照明にも続々と採用されています。

「今後はインテリア分野に留まらず、バッグや帽子といったファッション分野での展開も考えています。和紙の本質と伝統を大切にしながら、現代の暮らしに融合する新しい和紙製品のプロデューサーとして世界に発信していきたい。Rin crossingにはクールジャパンの一翼を担い、私たちのように伝統に根ざした地域から世界を目指す企業を後押しして、より多くの日本文化に根付いたブランド構築を実現してくれることを期待しています」

谷口社長の娘であり商品部主任の谷口 彩さん(写真右)は大学で造形を専攻。アパレル企業に勤めた後、自ら希望して入社しました。「幼い頃から和紙で服をつくって遊んでいました。新たな切り口で因州和紙の魅力を世界の人々に知ってもらえたら嬉しいです」

谷口・青谷和紙株式会社
(タニグチアオヤワシカブシキガイシャ)

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