The Place of Discovery Rin Crossing

menu

menu

登録メーカー
256社
登録バイヤー
国内:733名/海外:514名

詳細へ

創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #016 (近江手造り和ろうそく 大與)

#016 近江手造り和ろうそく 大與2013/09/24

日本ならではの風情あるあかり豊かな未来を照らす〈手造り和ろうそく〉

従来のイメージを覆す、おしゃれな和ろうそく

「闇のなかで和ろうそくのあかりを見つめていると心が安らぎ、感覚が研ぎ澄まされるのがわかります。以前、夜に和ろうそくの炎を見つめながら坐禅を組んでいたのですが、とてもよく眠れたんですよ」

そう言って微笑んだ近江手造り和ろうそく 大與(だいよ)の四代目、大西 巧さん。一本気なまなざしが印象的な、和ろうそく職人です。

2011年、自らデザイン・プロデュースした<お米のろうそく>が、グッドデザイン賞・グッドデザイン中小企業庁長官賞を受賞しました。和ろうそくが同賞を受賞するのは初めてのこと。従来のイメージを覆すパッケージや洗練されたフォルム、そして東日本大震災という未曽有の災害を経て豊かさや幸せとはなにかが改めて問い直されるなか、サステイナブル(持続可能)であり、未来に繋がっていくもの、自然と共存するものとして、大與の和ろうそくが高く評価されたのです。

安心で持続可能な植物性原料100%にこだわる

「ろうそくづくりは、蝋の温度や外気温、溶かした蝋の温度などを肌で感じながら微調整を行います。一人前になるには10年かかると言われる。商売ですからスピードも大事です。1日に7キロの蝋をろうそくにできて一人前と言われます」と、大西 巧代表取締役社長

大與の創業は大正3年。巧さんの曾祖父にあたる初代が、大阪の和ろうそく屋に丁稚奉公に行き、ふるさとである滋賀県今津町に戻って店を開いたのがはじまりでした。

「滋賀県は人口に対して日本一お寺が多い県で、仏事や茶事を中心に和ろうそくの需要が見込めたのだと思います。でも苦労したようです」

後に永平寺の御用達になるほど信頼を得ますが、次第に需要が減り、戦中戦後は原料が手に入らなくなる危機もありました。それでも巧さんの実父で三代目の大西明弘さんが、伝統製法や品質にこだわったものづくりで家業を守り抜きます。1984年には滋賀県の伝統工芸品に指定されました。

巧さんは、幼い頃から家業を継ぐと決めていたわけではありません。しかし大学生の頃、あるきっかけで、和ろうそくに大きな可能性を見出しました。

 

和ろうそくの芯は、い草の一種である灯芯草と和紙でできています。右手で串を回しながら、溶かした蝋を左手ですくって塗り重ねていく「生蝋手掛け製法」という、古来より伝わる製造方法を守っています。国内でこの技術を習得している職人は、わずか10人ほどです

「大手牛乳メーカーの食中毒事件が世間を賑わせていた頃、本当にいい牛乳を届けたいと手間を惜しまず昔ながらの製法を続けている生産者にお会いしました。味はもちろん、栄養や子どもたちの未来を考えるとそれしかないと。僕もそんな仕事がしたいと思っていたとき、親父から和ろうそくと洋ろうそくの違いを聞き、ありたい未来のかたちに私たちの和ろうそくが必要とされることに気づいたのです。ありたい未来のかたちというのは、持続可能な未来、多様性を認め合う未来、子どもたちにツケを残さない未来です」

大與の和ろうそくは、櫨(はぜ)という木の実からつくる櫨ろうそくと、米ぬかからつくる米ぬかろうそく。どちらも植物性原料100%でつくられています。対して、広く流通している安価な洋ろうそくの原料は、石油由来のパラフィンです。

 

櫨蝋100%の〈櫨ろうそく〉。断面を見ると、年輪のように蝋の層が塗り重ねられているのがわかります

 

米ぬか蝋100%の〈お米のろうそく〉

「植物は人が手をかけてあげれば、一年に一度、実りがあります。僕たちはそれを享受して、ろうそくに仕上げる。僕はより多くの人と、真に豊かな未来を共有したい。その先に絶対、和ろうそくがあると思っています」

火をつければ一目瞭然の燃焼の美しさ

櫨は希少性が高く、日本でしか採取できないため、世界一高値で取引されているろうそくの原料です。それでも大與では、櫨100%にこだわってきました。その理由を尋ねると「きれいだから」と凛とした答えが返ってきました。

師匠である三代目・大西明弘さんは、「不器用なやつ」と悪態をつきながらも、息子である巧さんにていねいにその技を伝えてきました。信頼の厚さは早々に代表取締役の座を譲ったことからも窺えます。巧さんもその期待に応えます

「和ろうそくには明確な基準がなく、たとえ櫨を20%しか使っていなくても櫨ろうそくと名乗ることができます。しかし火をつければ一目瞭然で、櫨100%のろうそくは炎の色や安定感がちがう。油煙もほとんど出ることがなく、蝋がだらだら流れることもない。風合いもどっしりとして美しい。いろんなろうそくを見て試してきた職人だからこそ、櫨100%の燃焼の美しさに自信を持っています」

本物を届けたい。しかし、どうしても高価になってしまいます。そこで比較的リーズナブルな米ぬかろうそくで、より身近に楽しんでもらえたらと考えています。

「こうした商品の価値を、きちんと伝えていきたい」と、巧さん。そして、「ろうそくのあかりのある暮らしを、もう一度日常に取り戻したい。火と人間の距離を、これ以上離れないようにしたいのです」と続けました。

価値を伝えるブランディングと未来への挑戦

 

燭台など、ろうそくを暮らしに活かす小物もプロデュースしています

 

ろうそくにオリジナルの絵やメッセージを入れることも可能。ギフトや企業のノベルティグッズなどに喜ばれています

より多くの人に、和ろうそくの良さを知っていただきたい。新たな販路や流通経路を求め、市の補助金を申請して2000年から東京インターナショナル・ギフト・ショーに参加し始めました。また、大阪を拠点に活動するデザイン集団graf(グラフ)とタッグを組み、ブランディングと新商品開発に取り組んでいます。

「来年は創業100周年を迎えるので、もうひとつパワーアップしたい。いま一度、和ろうそくの用途と可能性を考え、『伝統的な仏事』、『ていねいな暮らし』、『喜ばれるカジュアルギフト』の3つの視点でそれぞれにブランドを起ち上げ、次の100年につながる商品展開をしていきます」

音楽会や朗読会、写真展とのコラボイベントなど、ろうそくのあかりが生み出す「場」の提案にも積極的です。参加者たちは「ろうそくの火を見つめていると癒される」「写真が不思議と立体的に見えた」と感嘆し、それぞれに大切なことを思い出します。

「Rin crossingでも、こうした気持ちが共有できる売り手さんと出会いたいなと思います。価格だけで商品を見られると非常にきつい。私たちの思いや価値をわかってくださる方と一緒に、ありたい未来をつくっていけたらいいなと思います」

近江手造り和ろうそく 大與
(オウミテヅクリワロウソクダイヨ)

ページトップへ