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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #017 (錫光)

#017 錫光2013/10/25

錫のよさを多くの人に伝えたい手仕事にこだわる〈錫の酒器・茶器〉

"ろくろ挽き"で表現する錫の魅力

「錫(すず)は、素材そのものがいい。昔から錫の酒器を用いると二級酒が一級酒になると言われるほど口あたりがまろやかになります。用途に合っているからこそ、1000年もの昔から酒器や茶器に用いられてきたのです。そんな錫のよさを今に伝え、暮らしに馴染むものをつくり続けていくのが私たちの役目です」

穏やかにそう語った錫師の中村圭一さん。「現代の名工」として黄綬褒章を受章した父・中村光山氏が1987年に創立した錫製品工房・錫光の二代目で、おとうと弟子の陽山貴之さんとともに、ろくろに固定した錫を鉋(かんな)で削って仕上げる伝統的な"ろくろ挽き"の技を継承しています。

中村圭一さん

錫製品は熱伝導がよく、保温性・保冷性に優れています。そのうえ、錆びない、朽ちない金属なので縁起がよいとされ、繁栄を願う贈答品としても人気がありました。日本で採掘が始まったのは飛鳥時代といわれますが、昭和40年代に国内での採掘はなくなり、錫師も減ってしまいました。今では全国で20人いるかいないかというなかで、さらに"ろくろ挽き"にこだわる錫光の錫製品は希少性が高く、「錫光でなくては」というお客様から支持されています。

2004年には、先代と中村さんの合作で、埼玉県から秋篠宮家への献上品として「秋草紋水注」を製作しました。

「現代の名工」の技を次代にも伝えたい

錫は他の金属に比べて融点が低く、摂氏232度でとろりと溶け始めます。加工しやすさも古来より重宝されてきた理由のひとつです

錫光では、地金の仕入れから鋳込み・ろくろ挽き・鎚目打ち・絵付け・漆塗りまで一貫して行っています。工房には錫を溶かす鉄鍋が置かれた作業台と、ろくろ挽きの作業台が二台。こぢんまりしていますが、壁には使い込まれた鉋が数十本も並べられ、それぞれにちがう形の刃先が見るからに鋭く研ぎ澄まされています。製品のデザインや大きさによって鉋を使い分け、新作のために鉋から新調することも珍しくありません。

陽山貴之さん。錫の地金を鉄鍋で溶かし、鉄の柄杓ですくってセメント製の型に流し込みます。固まる時間は製品の厚みやその日の湿度などによって変わるため、手ごたえで判断します

鋳型から抜いたばかりの錫のカップは表面がざらついてくすんでいます。それをろくろに固定し、胸に鉋の柄を押しあてるようにして刃先を錫の表面につけると、まるで木を削るようにしゅるしゅると削りくずが飛び出て、みるみるうちに表面が銀色に輝きはじめました。中村さんは慎重に角度を変えながら刃先をあて、微妙なカーブを削り出していきます。

「なぜ、手間のかかるろくろ挽きにこだわるのか。ひとつには、やはりきめの細かなツヤや上品な光をたたえた仕上がりのよさです。そして伝統的な手仕事の製法を受け継ぎ、次代に引き継いでいかねばという思いもあります」

先代はもともと江戸職人の流れを汲む錫工房に勤めていた腕のいい職人。中村さんはまさか自分が跡を継ぐとは思わず一般企業に勤めていましたが、先代が50代にして独立したことが転機になりました。

鋳型に鋳込んだ錫をろくろにかけ、鉋(かんな)で削って形成します。錫が日本に伝わった頃からの伝統的な製法です

 

錫光のロゴは、女性デザイナーに製作を依頼。中国・唐代の書家、懐素(かいそ)による「錫」「光」の文字を回転させ、組み合わせています。「中に"ハート"があるのがポイントです」

「独立といっても明るいものではなく、高度成長期で量産品が出回り、長年勤めた工房が経営難に陥って解散したためでした。それでも父は錫のよさをひとりでも多くの人に知ってもらいたいと、新たに工房を設立したのです」

慣れない事務作業や販路開拓に苦労している父を見かねて手伝ううちに、中村さんの心に幼い日々の原風景が蘇ってきました。毎日学校から帰ると父が働く工房へ行き、その仕事を眺めながら子供心に面白いなあと思っていたこと。ろくろのモーター音や、漆の匂い。松ヤニと蒔絵筆で見事に絵付けをする指先。鎚目を打つリズム。うちの父さんはよその父さんたちとちがうと誇りに思っていた気持ち……。考えてみると、幼い頃から絵や書を習わせてもらい、ものづくりが好きな自分も感じていました。

「錫師になって、はたしてやっていけるのか。所帯も持っていましたし、迷いました。しかし、こんなに稀少な職業はない。私にとっては見慣れた環境でしたが、改めて調べてみると本当に錫職人っていないんですね。でも、ここには道具がすべて揃っていて、技を受け継ぐことができる。この伝統を途絶えさせてはならないと感じたのです」

女性を意識したデザインで新たな可能性を探る

工房の壁には、先代の座右の銘である「次百(つくも)」の書が掛かっています。これは、現状に満足せず、次の百点を目指して精進するという意味。卓越した技術だけではなくこの精神も受け継いだ錫光は、伝統技法を守る一方で現代の暮らしにあった錫製品をつねに模索しています。

 

〈ツチメ小酒器〉。男性に人気のロングセラーの定番商品です

 

〈SOLE e LUNA〉

〈SOLE e LUNA(ソーレ・エ・ルーナ)〉も、そのひとつ。「掌の宇宙」「太陽と月」をイメージした世界観、そして手のひらにしっくり収まるまるいかたちが、Rin crossingの展示会で若い女性たちに好評を博しました。

「錫製品はゴツッとした男性的なイメージがあり、主な購買層も男性です。しかし百貨店の職人展などで実演を行うと、見に来るお客様の8割方は女性なのです。興味は持っていてもハードな印象があって手にとりにくいのかもしれない。そこから女性の感性に響く錫製品というアイデアが浮かびました」

ろくろ台に置かれたノートには、中村さん自らが描いたデザイン画や寸法などがびっしり。先代から引き継いだ型を守りながら、津軽塗りを取り入れたモダンなデザインや若手デザイナーと組んだブランド「江戸意匠」など、多様なコラボレーションに挑戦しています。

新たなマーケットにも錫のよさを伝えたい

今、錫製品は再び脚光を浴び、錫作家や錫製品を提案する企業が増えてきています。錫光では創業以来、百貨店を中心に顧客を広げていますが、15年前からホームページでの直販にも挑戦。より多くの層に錫製品に興味を持ってもらいたいという思いから、FacebookなどSNSでの情報発信にも力を入れており、デザイン展やイベントへの参加にも意欲的です。

錫を削って仕上げる鉋は刃物職人に発注しますが、製品の仕上がりにあわせて自分たちで刃を研ぎ上げます

「工房に籠ってつくることに専念する職人を居職(いじょく)と言いますが、いま錫光では製作から営業まで二人で全部やるという状況です。それもやりがいがありますが、もうすこし経営効率を上げて製作に専念したいという思いもあります」と中村さん。

しかし、機械化や量産はしたくない。昔のご隠居さんは、気に入りの錫の茶筒を慈しむように毎日撫で育て、なんともいえない光沢を楽しんだといいます。こうした愛着を生み出す手仕事のよさを理解していただけるバイヤーさんやお客様との出会いが、職人としての喜びです。

「個人経営ではむずかしい経営課題が多々あります。Rin crossingのような公的支援は頼もしいですね。海外への市場開拓は、ノウハウもなく言語の壁もあるので最初から諦めていましたが、Rin crossing で海外での販路開拓支援も行っていることを知り、薄日が差してきたような気がしています」

台湾でのテスト販売会を開催します

Rin crossingでは、アジアのなかでもとくに日本文化への関心・感度の高い台北市にて、マーケティング・リサーチを目的としたテスト販売会を、2013年11月14日(木)~12月25日(水)に開催します。錫光をはじめ、Rin crossing参加企業18社が出品。期間中の現地の様子は、当サイトでご紹介します。

会場は、生活と文化・芸術の融合をコンセプトとした台湾の書店チェーン最大手・誠品書店の経営する複合型大型店舗「誠品生活松菸店」。今年8月にオープンしたばかりの、今もっとも台北市で注目される商業施設です。

また、2014年1月に同様のマーケティング・リサーチをロンドンでも開催します。
Rin crossingは、これから海外への展開を目指すメーカーのみなさまの第一歩をサポートしています。海外展開に関する不安やお悩み、ご要望など、お気軽にお知らせください。

錫光
(スズコウ)

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