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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #018 (阿江ハンカチーフ株式会社)

#018 阿江ハンカチーフ株式会社2013/11/25

播州織の先染めとハンカチ製造の高度な織物技術を活かした〈スカーフ〉

世界トップレベルの織物技術を誇るハンカチ

「Made in Japan」ではなく「Woven in Japan」のタグがついた大判のスカーフ。ブランド名は、生地を織る職人さんを意味する「織人」から名づけた〈orit.(オリット)〉。ふんわりと軽く、深い色味の繊細なグラデーションは波打つように艶やかで、たしかにその織りの魅力に目を奪われます。

創り手は、播州織(ばんしゅうおり)と呼ばれる綿織物の産地、兵庫県加東市のメーカー・阿江ハンカチーフ株式会社。公式サイトを開くと、「ハンカチの中に無限の芸術」というキャッチコピーが記されています。

「ハンカチというと、単に布を四角く裁断縫製しているように思われるかもしれません。しかし、じつは四方を厚くしながら歪みなく正方形に織ることや、切れやすい細い糸を使って多彩な模様を実現するには高度な織物技術が求められます。手間ひまかかりますが、小さな布のなかに無限の芸術があると考え、品質を追求してきました」と、代表取締役社長の阿江克彦さん。

代表取締役社長の阿江克彦さん。生まれ育った産地の衰退に危機感を抱き、「このままではいけない。こんなときこそ挑戦をしなければ」との思いで自社ブランドの開発に乗り出しました

創業は明治初年。現社長で5代目になります。播州織は先染めによる平織りのシャツ地が有名ですが、同社では先代からハンカチに特化することで業績を伸ばしてきました。

製品づくりには、産地でもっとも難易度が高いドビー織、ジャカード織の技術を駆使。高級細番手糸ならではの光沢と、軽くてしなやかな風合い・品質・織柄を実現する織物技術は世界トップレベルです。業界大手問屋との信頼関係も厚く、OEMでブランドハンカチを5000種類以上も世に出してきました。

100%請け負いから自社ブランドの開発へ

そんな同社が2008年に打ち出したのが、いわゆる“ゴスロリ”路線の「傘」の自社ブランド〈Lumiebre(ルミエーブル)〉です。それは業界に驚きを与えた挑戦でした。ジャンルを絞って手堅く商売を続けてきた同社が、経営の多角化を目指したのはなぜでしょうか。

 

高度な技術を必要とするハンカチ製造で培った技術が同社を支えています

 

ゴシックロリータブランド〈Lumiebre〉は、織りの技術を活かしたデザイン性の高さで人気

「このままでは産地も自社も危ないという危機感です。私が子どもの頃、町は活気に溢れ、弊社を含む何十もの工場で全国から集められた女工さんたちがたくさん働いていました。しかし次第に大型織布工場は閉鎖され、小規模な家内工業へと移り変わります。それでも最初は1700軒ほどあったのですが、1990年頃から中国との競争が激化し、現在は200軒ほどに減ってしまいました」

同社も、阿江社長が代表に就任した2004年の売上げを、その後一度も越えられていませんでした。ほぼ100%大手一社の請け負いだったため、業界全体の不振が業績に反映されてしまうのです。

「繊維産業はローテクで、海外でもある程度の技術はすぐに実現できてしまいます。ハイグレードな高級品はやはり国産が強いのですが、それでも受注だけの仕事では不安です。長年培ってきた技術をさらに活かすためにも、自社で企画から販売まで一貫して行う仕組みを作りたいと考えました」

自立化支援事業を活用し、チャンスある分野を探る

一歩踏み出したきっかけは、中小機構の中小繊維製造事業者自立事業を活用し、2006年、東京インターナショナル・ギフト・ショーに出展したことでした。

 

工場の扉を開けるとガタンガタンと耳をつんざくような音。新旧合わせて12台の織機がフル稼働しています。手作業も多く、4000本を超える髪の毛よりも細い糸を熟練の職人技でつないでいく工程も。価格とのバランスをとりながら、大量生産でなくとも採算の合う“中量生産”を意識。小回りの利くものづくりは自社工場だからこそです

「播州織のドビーやジャカード、また産地の特許技術のクラッシュ加工(緯糸の配列を柔らかな曲線に移動させる技術)が生きる商材として、ポーチやパジャマ、トランクス、傘などを試作したところ、傘がもっとも反応が良かったのです。“ゴスロリ”を狙ったのは、市場リサーチの結果。参入企業が少なく、ファッション性が高く個性が求められるわりに品質に難があったため、後発でも勝てると感じました」

見込みは当たり、〈Lumiebre〉はたちまち話題となって、都心の専門店やオンラインショップでヒット。品質の良さやエレガントさから、とくにゴシック好きではない層やご年配の方にも人気です。現在、同社売上げの15%を占めるまで成長しました。

自社の強みを活かすブランディング

そして2013年2月、新たに打ち出したのが冒頭に紹介した〈orit. 〉です。より、「織り」そのものにアプローチしたいとの思いで人材募集から取り組みました。

〈orit.〉の企画・営業を担当する矢裂尚敬さん。都心での子供服のデザイナー、メンズブランドの企画・営業を経て入社。「市場の流れに乗るのではなく、長く愛されるものをつくりたい」

ディレクターを務める矢裂尚敬さんは、ブランディングからデザイン、販売まで担当。半年間、工場に入り込んで職人さんに話を聞きながら技術や織機の調整等を学んだ結果、ストールから始めることに決めました。

「ストールは織機さえあればつくりやすい商品で、厳しい競争にさらされます。しかし、より生地に近い商品のほうが、当社にしかできない技術や表現で差別化できる。デザインは織り方から考えます。職人さんが毎回『二度とやりたくない』と愚痴をこぼすほど緻密に縦糸と緯糸を配色して、より複雑なグラデーションや色味を出しています」

 

〈cen.〉シリーズ。普通に巻けばストール、輪の中に首を入れてスヌード、そのまま羽織ってショールといろいろな使い方ができる万能ストールです

 

透けるほど薄くて艶のある生地が同社製品の魅力。手触りがよく、高級感があります

〈cen.〉シリーズでは、あえて昔ながらの力織機(りきしょっき)を採用。生地の端にできるミミを利用し、無縫製で表裏の生地が輪になるように織り上げることでスヌードのようにも使えるよう工夫しました。ミミ部分はデザインのポイントになるよう赤い糸で織っていますが、日本製であることをアピールする日の丸の赤という意味もあります。さまざまな付加価値やストーリーで、「どうしても手に入れたい一枚」を織り上げているのです。

「今後の課題は販路開拓です。展示会等に積極的に参加し、Rin crossingを広告・宣伝のツールとしても活用していきたい」と阿江社長。最終的には自社ブランドで売上げ50%を目標に、さらに多彩な製品展開で播州織の可能性を拡げていきます。

阿江ハンカチーフ株式会社
(アエハンカチーフカブシキガイシャ)

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