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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #026 株式会社 水鳥工業

#026 株式会社 水鳥工業2014/07/25

伝統とモダンを融合する日本一履きやすい〈下駄〉

常識を覆した、現代人が履きやすい下駄

「花火大会には浴衣を着て、カラコロと下駄を履いていきたいでしょう? 日本人にはそういう気持ちがあるんだ。でも歩きにくいし、花緒は痛いし、もう下駄はイヤだ、懲り懲りだとなってしまう。だったら歩きやすくて、痛くない下駄をつくればいいんだよ。そうしたらみんな、ジーンズでも履いてくれるようになったんだよ」

履き心地のよさとモダンなデザインで人気の“みずとりのげた”は、平成5年の発売以来さまざまなファッション誌に取り上げられ、夏は品切れ続出となるロングヒット商品。足のかたちにフィットするよう下駄木地にカーブを持たせてあり、クッション素材の入った幅広の花緒がやさしく足を包み込むのが特徴です。

グッドデザインしずおか大賞(県知事賞)、第70回東京インターナショナル・ギフト・ショーでは新製品コンテストで大賞受賞など、数多くの受賞歴を誇る“みずとりのげた”。洞爺湖サミットのエコハウス会場や高級リゾートホテル、 高級老舗旅館でも活躍しています

たしかに足を入れた瞬間、木地がひたっと心地よく足裏にフィットして、「えっ、これが下駄?」と驚くほど。ただ履き心地がよいだけでなく、木の床や畳の上を裸足で歩くような爽快感があります。

「それが下駄の良さなんだ。自然の良さ。木の履きものだからね」と、株式会社水鳥工業代表取締役・水鳥正志さん。

おそらく日本人は、木の心地よさを本能的に愛しているのでしょう。しかし、昔ながらの下駄は、左右の区別がなく、土踏まずのカーブも一切ない平らな木地です。これではスニーカーなどの“進化した靴”を履き慣れた現代人には「履けなくて当たり前」

「下駄も靴と同じように進化しなければダメだよ、お客さんは痛いと言ってるじゃないかと言っても、『下駄はそういうものだ』という発想で誰も相手にしてくれない。とうとう、『だったら俺がつくってやるよ!』と覚悟を決めたのがはじまりだね」と、水鳥社長は豪快に笑いました。

“日本の下駄を変えた男”と言われる代表取締役・水鳥正志さん。「下駄は、日本の風土にあった美しい文化。地球の自然のサイクルを守るため、静岡の木を有効に活かし、環境保護に役立つ商品開発も進めています」

熟練の職人たちとともに妥協のないものづくり

水鳥社長は、古くから林業が盛んな静岡県静岡市の下駄木地製造メーカーの長男として生まれました。創業は昭和12年。創業者である父は下駄一筋でした。

しかし昭和30年代後半、時代の変化で下駄木地の需要がほとんどなくなり、水鳥工業は生き残りのためにサンダルやシューズの中底の製造へとシフトします。新事業は軌道に乗りましたが、しかしそれも「10年もたない」と直感。その頃、中国や東南アジアを広く旅した水鳥社長は、産地の誰よりもはやく危機を察したのです。

「でも、いま順調だから、危ないって言ったって誰もピンとこないよね。現実は10年ももたないくらいアッという間に海外製品に呑み込まれた。いいものをつくっても値段で負ける。下駄組合はとっくに崩壊して、いまも下駄をつくっている家は数軒残っているが産地は滅びました。悔しいなと思ってね。もう一回、原点に戻って下駄をやろうと思ったんだ。でも、いまの人にちゃんと履いてもらえる下駄をね」

ヒントになったのは、インドネシアの木製サンダルでした。

「横花緒だけれどインドネシアも下駄の文化で、カンナやノミで足にフィットする木地を器用に彫れる、腕のいい職人がたくさんいました。『これだ!』と思ってね、売り先もないのにバーンと注文してきてしまった(笑)」

このとき、水鳥社長は40代。言葉も通じないなか、2か月に一度のペースでインドネシアに通い、職人たちと一緒に試行錯誤して、より精緻で日本人の足に合う下駄づくりに打ち込みました。こうして完成したのが、同社の看板商品〈げた物語〉シリーズです。

 

〈げた物語〉シリーズ。静岡大学との共同実験の結果、(1)足の血流が活発になる、(2)浮指解消につながる、(3)気分がリラックスするなどの健康促進の効果があり、幅広い年齢層におすすめめです

 

さまざまな分野で活躍するデザイナーや染織家たちとのコラボレーションシリーズ〈m2〉。Rin crossing参加メーカー・小倉クリエーションによる「SHIMA-SHIMA」の生地を使った〈SHIKIBU〉

「木地製造の技術だけでなく、靴の心臓部ともいえる中底の製造ノウハウがあったのが結果的によかった。それでも商品として世に出すまでは7〜8年かかりました」

逆風のなか、口コミで販路を拓く

発売直後は、「いまどき下駄なんて」と見向きもされない状況だったといいます。しかし、商品のよさがお客を連れてきました。

「売り先がなくて東京インターナショナル・ギフト・ショーに出したところ、すぐに都心の百貨店のバイヤーさんたちが興味を示し、実演販売等につながりました。5月の浜松祭りでは、新茶を振る舞う茶娘さんたちが毎年下駄で足を痛めていると知って、着物と同じ柄の花緒の下駄をつくってあげたら、『一度も下駄を脱がずにすんだ!』と口コミで評判が広まり、呉服屋さんからまとまった注文が入ったりね」

足にフィットするよう、靴型を下駄づくりにもちこんだのも斬新な発想。職人さんが一足一足、いくつもの工程で底を張り、花緒をすげて端を下駄に打ち込み仕上げていきます。正確さとともに力のいる作業で、熟練の職人さんでも一日に30足ほどしか製造することができません

静岡大学との共同実験では、“みずとりのげた” が健康によい影響があるとわかりました。“みずとりのげた”を履いて30分歩行することで血流循環が活発になり、体の重心も最適な位置に近づいたのです。腰痛やひざ痛などを引き起こす浮指(立った時、足指5本が地面につかない状態)も改善されることがわかりました。

現代のファッションにマッチするよう、花緒の柄をモダンなテキスタイルのもので取り揃えたのも注目を集めた理由。気鋭のアーティストやデザイナーとのコラボレーションにも積極的に取り組んでいます。

「ワコールアーとセンターと静岡市のプロジェクトで出会ったひびのこづえさん(静岡出身)とのコラボでは、静岡県産のヒノキを使い、薄くしなやかにカーブした木地を実現するために、2年の歳月をかけて木地の圧縮技術を確立しました。日本全国を探しまわった結果、静岡県の家具メーカーさんの技術に辿り着いたんですよ。さまざまな知恵と技術が一足の下駄に注ぎ込まれています」と、常務の水鳥秀代さん。

この〈ひのきはきもの〉シリーズは、2006年に小学館主催のサライ大賞を受賞しました。

〈HIBINOKODUE + MIZUTORI〉シリーズ

日本の下駄を世界に発信したい!

“みずとりのげた”は唯一無二。人気があるので海外産の安価な類似品も現われますが、履けばすぐに品質の差がわかるため、あっさり消えてしまうのだそうです。昔ながらの下駄や中底製造で涙を流した悔しさは、日本人らしい細部へのこだわりと履く人への思いやり、そして柔軟な発想で伝統をいまに蘇らせたことで解消されました。

「おかげさまでとてもリピーターが多いんですよ。アフターケアもしっかりさせていただいているので、愛着をもって長年履き込んでくださっている方もいますし、毎年新しい柄を買うのが夏の楽しみという方もいらっしゃいます」と微笑む秀代さん。

「デザイナーさんが求めるものは私たちの常識からすると驚くことばかりなのですが、無理と諦めずに挑戦することが成長につながっていると思います」と、水鳥秀代さん

水鳥社長も「かたちは変わっても下駄の文化は永遠に残していきたい。下駄はいつも平和な時代に進化しているんだよ。いつまでも下駄を履いて心地よく暮らせる平和な時代が続いてほしいという願いもあるんだ」と笑顔です。

近年、横浜で美容師をしていた娘の友紀子さんが経営に参加し、若手社員も増えて、ますますファッション性に磨きがかかりました。今後は、Rin crossingも活用して、世界に下駄を広めたいと考えています。

「海外の展示会に出店したところ、とくにフランスの方に評判がよく、手応えを感じています。下駄屋は夏ばかり忙しいものだけど、これからは冬は地球の反対側のオーストラリアで売ってみようというように営業にも発想の転換が必要だね」

株式会社水鳥工業
(カブシキガイシャミズトリコウギョウ)

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