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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #027 有限会社 東北工藝製作所

#027 有限会社 東北工藝製作所2014/08/25

漆器の可能性を広げた技法銀粉が浮かぶあでやかな〈玉虫塗〉

国立工芸指導所で生まれた独特の漆器

法隆寺に伝わる国宝〈玉虫厨子(たまむしのずし)〉では装飾に使われ、古来よりその美が讃えられてきた玉虫の羽。宮城県指定の伝統工芸品「玉虫塗」は、まさにその玉虫の羽のようにあでやかな光沢が魅力の漆器です。

「漆器には産地の名がつけられることが多いのですが、玉虫塗は技法の名前。伝統的な下地塗りを施した器に銀粉を蒔き、その上から染料を加えた透明な漆を吹きつけて仕上げる独特の技法が特徴です。この技法は、1928年に仙台につくられた日本初の国の工芸指導機関『国立工芸指導所』で生み出されました」と、玉虫塗の製造・販売を行なう有限会社東北工藝製作所代表取締役の佐浦康洋さん。

「当時の東北は、貧困で悲惨な状況が続いていました。そこで宮城出身の商工省(現在の経済産業省)の大臣が、なんとか東北の産業を開発しようと工芸指導所を設立。顧問にドイツの建築家ブルーノ・タウトを招き、輸出用の良質な量産品の技術開発を行なったのです」

「伝統工芸品なので、まずは地域に根ざした製品づくりと販路が基本。そのうえで時代に合わせた玉虫塗をつくるという開拓精神を持ち続けていきたい」と佐浦社長

のちに世界的デザイナーの剣持勇らを輩出。日本の工芸デザインの基盤をつくった国の一大プロジェクトであり、その技術を受け継ぐ企業が、バタフライスツールで知られる天童木工(山形県)、そして玉虫塗の東北工藝製作所なのです。

進駐軍に人気だったモダンな漆器

玉虫塗は、1932年に指導書所員だった漆芸家・小岩峻氏によって発明されます。それを仙台を代表する工芸品に育てたのが、同社の創業者・佐浦元次郎氏。現代表の祖父にあたります。

「当時の青年経済人のひとりだった祖父は、仙台出身である縁から玉虫塗の事業化を任され、戦後、進駐軍の家族向けに、当時はまだめずらしかったコーヒーカップやサラダボウルなどの洋食器を次々打ち出しました。当時から和の塗装は世界的に評価が高かったのですが、なかでも玉虫塗はさらにレベルが高く、色あいに華やかさがあります。デザインもモダンであると人気を博し、日本土産として一度に何十万円も買い求めるお客様が多かったと聞いています」

熟練の技が必要とされる上塗りの作業。塗りむらを避けるため、スピードと正確さが求められる緻密な作業です

 

進駐軍が撤退した後は、国内向けに身近な暮らしの器を販売。高度成長期の波にのって売上げを伸ばし、1985年には宮城県より伝統工芸品の指定を受け、天皇陛下への献上品や、宮城を代表する名産品として贈答用・記念品の需要が増えましたが、バブル崩壊後は売上げが半減。厳しい時代に佐浦社長は三代目代表取締役となります。

「伝統工芸を後世に残すことには社会的な意義がある。厳しくても続けねばという思いでした。しかし同時に玉虫塗は、伝統というにはまだ新しい、斬新な塗りの特許技術でもあります。伝統技法と近代技術が出会って漆器の可能性を広げたように、新しいことにひるまず挑戦することで玉虫塗の可能性を広げたい。そういう意味で、いまもベンチャー精神を持ち続けています」と、佐浦社長。

つねに漆芸の新たな可能性に挑戦

玉虫塗の強みは、木地だけでなく、ガラスやプラスチック、紙など、さまざまな素材への“漆塗り”が可能なこと。伝統的な漆器類に加え、USBメモリやステーショナリーなど、従来の漆芸のイメージを超えたコラボレーション製品の開発でも話題です。

玉虫塗は、車の車体のようにメタリックな質感が美しい。「そのせいか男性にも人気が高いんですよ。メンテナンスが好きな方や、こだわりのあるものを持ちたいというお客様が多いですね」と、みどり常務

「人気アニメ『戦国BASARA』とコラボした絵葉書は、当初300枚の予定が発売3ヶ月で1万枚も注文が入りました。アニメのファン層と工芸品のファン層は対極にあるのではないかと思いますが、いいものであれば手にとってもらえる。多くの方にさまざまなきっかけで玉虫塗を知っていただき、きれいだな、いいものだなと感じてもらえるとうれしいですね」と営業・販売を統括する常務取締役の佐浦みどりさん。

 

〈TOUCH CLASSIC〉オールドグラス。素地には薄く透明度の高い松徳硝子を用い、宮城野山の稜線と波打つ海をグラデーションにした玉虫塗で表現しています

 

〈TOUCH CLASSIC〉サラダボウル。波打つようなろくろ線(すじめ)が、玉虫塗の質感を際立たせます

そんな同社の最新の注目作が、黒を基調にしたクールなデザインの〈TOUCH CLASSIC(タッチクラシック)〉。“漆黒”という言葉もある「漆ならではの黒」に真っ向から挑戦し、現代のライフスタイルに馴染む玉虫塗を追求したシリーズです。開発のきっかけは、2011年の東日本大震災でした。

「世界中から復興支援の手が差し伸べられるなかで、伝統工芸にも『被災地の工芸を救え!』とあちこちから助け船がやってきたのです。TOUCH CLASSICは、国内トップクラスのアートディレクター・小野清詞氏とコラボレーションし、とくにタンブラーとオールドグラスは、ガラスに漆を定着させて濃淡まで表現するという当社にしかない新技法を用いています」と、佐浦社長。

その技術を長年地道に研究し、完成させたのが「宮城県卓越技能者」に認定される同社工場長の松川泰勝さん。通常、ガラスには密着しない漆を波形に吹きつけるという難易度の高いデザイナーの要望を、巧みな職人技で実現しています。もちろん、ひとつひとつ手づくりです。

「下地づくり」「中塗り」「銀粉蒔き」「上塗り」「加飾」など約17もの工程を経て、玉虫塗り独特の風合いがつくられていきます。とくに銀粉蒔きは、玉虫塗だけの独特の工程。「通常の漆塗りより3〜4日は余計に手間がかかりますが、それが独特の光沢を生み出します」と松川工場長

「通常、漆のブラックは顔料を用いて表現しますが、TOUCH CLASSICでは特殊な染料を用いて半透明のブラックを表現しています。非常に流れやすいうえに、調合の分量と塗りの厚さによる色調の調整がむずかしい。天候にも左右されやすく、品質を安定させることにも苦心していますが、高い要求に応えることで玉虫塗の可能性が広がる。自分が仕事をはじめた頃にはなかった玉虫塗を生み出すのはやりがいがあります」と松川工場長。

海外を視野に入れたブランディング

〈TOUCH CLASSIC〉では、初のブランディングにも挑戦しました。

「これまで地元だけでゆるやかにやってきたので、ブランディングなんて無縁だと思っていました。戸惑いも大きかったのですが、一流のアートディレクターさんやデザイナーさんと出会ったことで第一線の厳しさを教えてもらいました。Webサイトを整え、インターナショナルな対応を可能にしたことで、ヨーロッパの一流ブランドからコラボレーションの声がかかるなど、苦しみが喜びに変わってきています」と、みどり常務。

佐浦社長も、Rin crossingに幅広いジャンルのバイヤーさんとのマッチングを期待しています。

「玉虫塗にどんな可能性があるか、客観的な視点から知りたいですね。バイヤーさんと話すことで自分たちの会社の魅力や新たな販路も見えてくるだろうと思います」

有限会社 東北工藝製作所
(ユウゲンガイシャトウホクコウゲイセイサクショ)

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