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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #029 株式会社 鈴木茂兵衛商店

#029 株式会社 鈴木茂兵衛商店2014/10/23

新たな発想で暮らしを照らす伝統とテクノロジーを融合した〈提灯(ちょうちん)〉

堅牢で質実剛健な「水府提燈」の老舗

煌々とお祭りの夜を照らす提灯のあかり、迎え火・送り火の大切な役目を果たす盆提灯……時代は変わっても、わたしたちの暮らしの中には昔ながらの提灯が息づいています。そして提灯のあかりを見るとどことなくうれしく、ホッと心安らぐような気持ちになるのは日本人だからでしょうか。

「提灯の定義はただひとつ、“たためること”。昔は懐提灯といって折り畳んで着物の懐に入れて携帯し、暗くなると取り出して開いて、あかりを点して足元を照らして歩いていた。そこに大きく家紋を描いて、遠くから見ても誰が帰ってくるかわかるようにしていたのですよ」

そう教えてくれたのは、鈴木茂兵衛商店代表取締役の鈴木隆太郎さん。茨城県水戸市に本社のある鈴木茂兵衛商店は、慶応元年(1865)に四代目鈴木茂兵衛氏が創業。7代目となる現在まで提灯製造と卸問屋として続いてきた「水府提灯」の老舗です。

代表取締役の鈴木さん。「オリジナル提灯の制作も積極的に行なっています。伝統にとらわれないエンドユーザーからのデザイン提案は私たちにとって新鮮で、現代の提灯を考えるヒントになっています」

伝統の技術に先端技術を加味した新しい提灯

その伝統的な水府提灯が、いま現代の暮らしをやわらかに照らす洗練された照明器具として注目されています。鈴木茂兵衛商店が水戸出身のビジュアルアーティストのミック・イタヤ氏とともに手がけたデザイナーズ提灯〈すずも提灯〉です。

彫刻のような頭像や、とりやつぼみを題材にしたオブジェのようなデザインは、これまでの提灯にはない斬新なかたち。しかし、いずれも小さく折り畳むことができる“ひかりの入れ物”。日本ならではの「提灯」です。

「提灯を用いた有名な照明器具に、岐阜提灯とコラボレートしたイサム・ノグチ氏によるAKARIシリーズがあります。彼の作品は提灯の可能性を示すとともに、乗り越えられない大きな壁として立ちはだかっていました。私たちも何度も挑戦しかけては諦めていたのですが、今回のMIC(ミック)シリーズの面白さは、今の時代から生まれた素材を生かしたデザインであるということです」

 

MICシリーズ〈つぼみ〉〈とり〉。ころころと優しく愛らしく揺れる起き上がりこぼし機能、音感センサー、ローソクのゆらぎを再現したLEDなど、これまでのスタンド型提灯にない機能が特徴です

 

MICシリーズ〈DEN-CON提灯〉。懐中電灯のような提灯があるといい、という発想から生まれました。丸い穴を開けた天板を通して照らす灯りが花のように綺麗です

たとえば、光源には熱をもたないLEDを使用。伝統的な提灯のように上下に放熱用の開口部を設ける必要がなくなり、より自由で現代的なデザインが可能になりました。スイッチを調整することで、ろうそくのようにゆらぎのある光を表現することもできます。

また、音感センサーのスイッチでポンと手を叩いて点灯/消灯を行なったり、底部に丸みをつけて起きあがりこぼしのようにかわいらしく揺れる構造など、あかりを取り囲む人たちに安らぎやコミュニケーションを生み出す仕掛けが施されています。

伝統と先端技術を融合し、新たな価値を打ち出した〈すずも提灯〉。そこには老舗提灯メーカーならではの挟持と、新たな市場開拓への挑戦がありました。

新たな価値の提案で、提灯の未来をつくり出す

提灯の三大産地のひとつに数えられた水戸ですが、時代の変化とともに提灯の需要が減り、昭和10年頃までは市内に300軒以上あった関連業者も現在では3軒あるのみ。鈴木社長も、「100%、家を継ぐ気はなかった」と言います。

 

「水府」とは水戸の別称。水府提灯は、竹ひご一本一本を輪にして糸を絡めて繋げていく手間のかかる製法で、他の産地で見られる竹ひごを螺旋状に巻き上げる製法に比べて頑丈なのが特徴。和紙も、和紙の中でもひときわ丈夫と言われる水戸の西の内和紙です

「伝統を守るというときれいだが、当時はそんな気持ちではなかった。しかし、提灯は祭事や行事に残っているように日本の文化と結びついたもので、もとは身近な生活必需品。いまの暮らしに対応できる提灯とはどのようなものかと考えたときに、提灯を使わない市場に提灯を出してみたい、新しい用途や価値を提案することで新たなマーケットを自分たちでつくり出し、提灯を未来に伝えていきたいと思い始めたのです」

2004年、東京インターナショナルギフト・ショーへの初出品を機に「明かりの広告」というコンセプトの瓶型の提灯を制作。一升瓶のボトルの形状とラベルデザインをリアルに再現し、あかりの外灯広告として提灯とは無縁だった業種でも活用されるようになりました。

〈すずも提灯〉は、水戸の偕楽園で毎年早春に開かれる夜梅まつりの茶会の席に「提灯を飾りませんか?」という依頼から生まれたもの。

瓶型提灯を考案した専務が直接酒造メーカーに交渉に行き、本物の日本酒のラベルと同じデザインを施した提灯を製造して話題を呼びました

「伝統的な提灯でもよかったのですが、なにか面白いことができないかと思ったんですね。ちょうどその頃、幼なじみだったミック・イタヤと数十年ぶりに偶然再開する機会があり、久しぶりに一緒に水戸でひと遊びしてみないかと声をかけたのです。『みっちゃん、遊びましょ』という子ども時代からの連続ですよ(笑)」

送られてきたデザイン案は、斬新でありながら絶妙に提灯として実現できるものばかりでした。

「驚きましたが、考えてみると彼は子どもの頃によくうちの工房に遊びに来ており、その原体験を元にデザインをしている。提灯の構造を把握している最高のデザイナーだったわけです」

当初は展示だけの予定で6種類制作して発表しましたが、茶会の参加者に非常に好評で、ご要望に応えるかたちで商品化することになりました。

デザイン性とユーザー視点の使いやすさを両立

ミック氏のスケッチを元に制作を行なったのが、同社の技術者である由元君平さんです。形状をCADデータに置き換えてまず金属の型を作成し、その型を使って成形した芯材に和紙を貼るという手順で、伝統的な提灯と同様に一つ一つのシェードを手作りしています。

「デザイナーさんとのコラボは初めて。ミックさんのデザインをどうやって実現するか、いまでも手探りで試行錯誤の連続です。〈頭像〉であれば鼻や顎の形で男性と女性の差を表現したり、〈とり〉も抱えたときにおさまりのいい膨らみ具合など、僕自身もかなり細部にこだわって型をつくっています」と由元さん。

「愛着のあるモノづくりに携わり、地元の活性化にも貢献したい」という営業担当の関 学郎さん(左)と、技術者の由元君平さん(右)。意欲ある若手が集まるのは、伝統に甘んじることなく新しいことに挑戦する社風だからです

制作に際しては、まず他社の和紙照明を3つほど部屋に置いて比較したそう。暗い中でスイッチを探すのが大変だったことから「手を叩いてあかりがついたら便利だな」と思いつくなど、ユーザー視点で暮らしの中のあかりを創造しています。

現在、〈すずも提灯〉のデザインは29種類。メディアに紹介される機会も多く、海外での展開も期待されますが、生産体制やコスト等の問題から慎重に検討中です。

「たとえば中国で生産体制を整えれば低価格を実現できますが、日本の伝統工芸としてどうなのか。やはり国内の材料で、熟練の職人たちの丁寧で繊細な手仕事の技を活かしたいという思いがあります。Rin crossingには、広い視野から『こういう方法もありますよ』といった提示や情報提供を期待しています。ゆっくり時間をかけてお付き合いをしながら、私たちの問いかけに応える相談窓口になっていただけたらうれしいですね」

株式会社 鈴木茂兵衛商店
(カブシキガイシャ スズキモヘイショウテン)

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