The Place of Discovery Rin Crossing

menu

menu

登録メーカー
261社
登録バイヤー
国内:803名/海外:517名

詳細へ

創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #030 BITOWA

#030 BITOWA2014/11/25

「産地に希望と元気を!」若手が力を合わせて提案する〈会津漆器〉の新ブランド

これからの人が夢を持って挑戦できるものづくりを!

四季折々に新緑や紅葉が美しい磐梯山を眺める福島県会津地方。自然豊かなこの地で400年以上の伝統を誇る会津漆器は、お椀や重箱、茶托など、暮らしに密着した日用品を主力に全国にその名を轟かせてきました。

産地が発展した理由は、木地づくりから塗り、その上に蒔絵などを描く加飾にいたるまで、産地全体での分業体制を確立していたこと。そのため、すべて手作業でありながらより手頃な価格で大量の注文に応えることができ、生産量・出荷量ともに長らく日本一の座を守ってきたのです。しかし、近年はその勢いに陰りが見え、生産量は最盛期の4分の1まで落ち込こんでしまいました。

この状況に強い危機感を覚えたのが会津漆器協同組合の若手たちです。いま、世界から注目を集める会津漆器のモダンな新ブランドBITOWAは、ひとつの企業ではなく、彼らが経営する複数の企業が協力して製販一体のものづくりを推進する、日本でも稀な共同プロジェクトです。

「ハレの日だけでなく、日常的に漆器製品に親しんでいただきたいですね」と遠藤典宏さん

「まず、会津塗りの後継者を育てたいという思いがありました。会津塗りには油を加えて光沢をもたせた漆で上塗りを行なう『花塗り』や本金消粉を用いた『消金蒔絵』など、高度な技法が数多くあります。しかし、優れた技術を活かす場がなければ職人を目指す若者は減り、産地全体が先細りしてしまう。これからの人が夢を持って打ち込めるような新たな会津塗りのビジョンを示し、海外展開も見据えた販路開拓を行なう必要があったのです」と、プロジェクトリーダーの有限会社遠藤正商店代表取締役の遠藤典宏さん。

「信頼関係」が魅力的な製品を生み出す

プロジェクトの中心メンバーは、代々会津塗りの販売に携わってきた4社の経営者。全員、都心に出て他業界で働いた経験があります。しかも、遠藤さんはプロミュージシャン、他の3人はJAXA(宇宙航空研究開発機構)、銀行マン、経営コンサルタントと、それぞれに専門性が高くユニークです。

元・銀行員の小沼俊之さん。「海外貿易には経験豊富なアドバイザーが必要。海外、とくにフランスでは日本の伝統工芸品が高く評価されているので、取引のチャンスを逃さないことが大切ですね」

「一度外に出たからこそ、産地の現状を客観的に捉えられたのだと思います。個性的なメンツですが、過去と同じことを続けていてはジリジリと下がっていく、回復するには新しいチャレンジをしなければという考えが一致していました」と、株式会社小沼漆器店取締役の小沼俊之さん。

冒険心と冷静に時代の流れを読む目。そしてふるさとに貢献したい、会津塗りを守りたいという強い気持ちも共通項でした。

元・経営コンサルタントの松本 修さん。「会津塗りは、産地そのものがひとつの家族のようなもの。分業制で、ご近所同士だからこそいい加減な仕事ができない。信頼関係がクオリティを高めています」

「子どもの頃から、互いの仕事を信頼して製品をつくりあげる職人さんたちの姿を見てきました。ところがバブル崩壊直後に父を失くし、職人交流会に参加してみると3分の2の方が亡くなっていて跡継ぎもいなかった。私自身も迷っていましたが、また昔のように活気ある産地にしたいと思ったのです」と、有限会社マツモト工芸代表取締役の松本 修さん。

しかし、最初からスムーズに事が運んだわけではありません。プロジェクト立ち上げのきっかけとなったのは、2003年から取り組んだデザイン開発事業です。当初1年で商品開発をして発売まで漕ぎ着ける予定が、試作に時間がかかり、完成までに2年を要しました。BITOWAの原型となった製品ですが、続いて販路、価格の問題が浮上しました。

「コンセプトやデザインは評価されましたが、新たな塗料や形状を採用しているため、手間もかかりどうしても割高になってしまう。お椀ひとつが4〜5万円という状態で市場競争力に欠け、販売に踏み切れなかったのです」と遠藤さん。

しかし、このまま埋もれさせては未来につながりません。そこで打開策を探し、05年に中小企業庁が実施する「JAPANブランド育成支援事業」の助成金を申請。そこで採択されたことから一気に製品づくりが進みました。

現代の美意識や生活スタイルに合わせた製品づくり

BITOWAの名称には「美とは?」いう問いかけと、「美と和」というコンセプトが含まれています。その名の通り、会津塗りの華やかな技法を活かしつつ、現代的で研ぎ澄まされた美意識を感じるデザインが魅力です。

プロジェクトの意思をかたちにするため、デザイナーの選定も妥協なく、かつ「信頼関係」を重視して進められました。

元・JAXA研究員の関 昌邦さんは、暮らしの上質な道具を吟味したライフスタイルショップ〈b Prese〉も経営。優れた海外製品が直販で成功していることから、「BITOWAに合った販路を自分たちで開拓することで、エンドユーザーに対して正直なものづくりができる」と言います

「私たちが求めていたのは、知名度よりも私たちの考えに共感して共にものづくりをしてくれる方です。ツテがあったわけではなく、ネットや雑誌で気になるデザイナーをピックアップし、漆器制作の経験がある方、手間ひまのかかる伝統工芸品の時間の感覚をわかってくれる方など十数項目の指標を設定して、それに合う方かどうかを一人ずつ検討していきました。最後は3人まで絞り込み、このメンバー4人で会いに行って面談しました」と、株式会社関美工堂代表取締役の関 昌邦さん。

こうして選ばれたのが、デザイナーの塚本カナエさん。会津塗りは男性の作り手がほとんどだったため女性の感性を取り入れたかったこと、海外でも活動していたこと、そしてなによりも「なるべく産地に足を運び、職人さんたちの意見に耳を傾けながらつくりたい」と思いを語ってくれたことが決め手になりました。

 

ホテルライクで上質な生活を提案する〈BITOWA〉。会津塗りの特徴である「花塗り」をベースにブランドマークである八ツ藤くずしが「高蒔絵」の技法で贅沢に施されているシリーズです

 

エレガントなデザインとカジュアルさが魅力の〈BITOWA modern〉。ターコイズ、マゼンタ、イエローなど、従来の会津塗りのイメージを打ち破るカラフルな彩色ですが、内部はクリア塗装で天然の木目を見せて素材感を引き立てています

BITOWAでの経験が、それぞれの刺激に

BITOWAは、06年にパリの国際見本市メゾン・エ・オブジェでデビューを果たしましたが、その前年に関さん、小沼さん、そしてデザイナー塚本さんが現地に足を運んでメゾン・エ・オブジェの主催者や関係者に積極的にプレゼンを行なっています。

こうした熱意が実を結び、会場では注目度の高いスペースを確保。斬新かつ壮麗な漆塗りのインテリア製品の数々は、パリやヨーロッパ各国のバイヤーをおおいに驚かせ、華々しいデビューを飾ることができました。

しかし、一方で海外展開のむずかしさも痛感したと言います。

「せっかく多くの商談をいただいたのに、少量を海外に直販する体制が整っておらず、初年度は完全に商機を逸してしまいました。スムーズに取引できるまでに3年ほどかかりましたし、為替の変動にはいまだに悩まされます。しかし、海外で私たちの製品が売れるという手応えは大きな自信になり、なにより一緒に新しいことをやっていこうという意欲的な職人さんたちと信頼関係を深められたことが大きな収穫でした」と遠藤さん。

BITOWAをきっかけに新たな視点で国内のマーケットに目を向けた商品開発も進んでおり、関美工堂ではすべての工程を会津塗り職人が手作業で仕上げた漆塗り携帯マグカップ〈ノダテマグ〉が人気。遠藤正商店ではBITOWAを手掛ける木地師と塗り師によるスタイリッシュな木製カップ〈セーメ〉(イタリア語で“種”という意味)を開発。今後もさまざまな新商品で伝統と美の可能性を追求していきます。

 

関美工堂製の軽くて丈夫な本漆の器〈ノダテマグ〉。手に優しい無垢の木で作られた漆器は手に持って熱くなく、零下でも肌や口に凍りつきません。革紐も好みに合わせて付け替えが可能

 

遠藤正商店では、BITOWAを手掛ける木地師と塗り師によるスタイリッシュな木製カップ〈セーメ〉を開発

BITOWAを支える職人たち

会津塗りをつくるには大きく分けて「木地づくり」「下地づけ」「塗り」「加飾」の4つの工程があります。BITOWAに携わる3人の職人さんたちのお仕事を拝見しました。

丸物木地師
有限会社丸祐製作所 荒井勝祐さん

 

轆轤(ろくろ)を使い、手製のかんなを駆使して、丸物(お椀・お盆・茶筒など)の木地をつくる職人さんです。丸物木地の素材は、トチ、ケヤキ、センなど。お椀・お盆・茶筒などの木地材を、製品や用途によって「縦挽き」「横挽き」の技法を使い分けて製作していきます。高速で削り出しながら、蓋と筒部分の木目までぴったり合わせてつくる技が見事です。
「木は熱を加えると膨張するため、その狂いをとりながら仕上げていきます。角材は歪みをとるために乾燥場で1か月ほど燻します。燻すことによって虫も防げるんですよ」(荒井さん)

丸物塗師
吉田漆工房 吉田 徹さん

 

「下地づけ」から「塗り」までの行程を担う職人さんです。塗りや加飾を施すと下地づけの作業は見えなくなってしまいますが、漆器が長持ちするかしないかは下地づけにかかっています。漆を漉して細かいゴミをとり、ヘラで何度も練って木地に擦り込んでいきます。漆が皮膚につくとかぶれてしまうので注意が必要です。その後の塗りに使用する刷毛は、なんと人毛!
「コシが強く、コントロールしやすいのです。この刷毛をつくる職人さんが日本に2人しかおらず心配していたのですが、最近若いお弟子さんが入ってホッとしました。他の道具はすべて自分でつくっています。道具づくりも職人の腕のうちです」(吉田さん)
下塗り・中塗り・上塗りと丁寧に重ねていくことで、漆のなめらかな光沢が生まれます。会津塗りの魅力のひとつである「花塗り」は、油を加え光沢を持たせた漆で上塗りをして仕上げる技法です。刷毛目やムラを残さず、温かみを感じるよう塗り上げる高度な技術です。

蒔絵師
蒔絵工房ほんだ 本田 充さん

 

「加飾」とは、上塗りを施した漆器に、絵や模様をつけること。蒔絵師は、金粉や銀粉、色粉を漆で接着させる蒔き付け技法や、色漆を用いて美しい絵を描いていく職人さんです。BITOWAではシルクスクリーンの手刷り技法を使っています。
「シルクスクリーンでも型を取るための絵は蒔絵師が描きます。仕上がりは手書きとほぼ変わりません。蒔絵は緻密な作業が多く、すこしの風でも金箔が飛んでしまったりするため、閉め切った部屋で黙々と絵を描きます。漆は湿気がないと乾かないため、『漆風呂』と呼ばれる木の箱で蒸して乾燥させます。『いま、風呂に入れてる』なんて言うんですよ(笑)」(本田さん)
乾くのに時間がかかり、1日1工程ずつしかすすめられないため、複数の製品を平行して仕上げていきます。「手間がかかりますが、伝統的な方法で進めないと発色が沈んでしまう。一つひとつの工程に意味があるのです」

有限会社 遠藤正商店
(ユウゲンガイシャ エンドウタダシショウテン)

株式会社 小沼漆器店
(カブシキガイシャ オヌマシッキテン)

株式会社 関美工堂
(カブシキガイシャ セキビコウドウ)

有限会社 マツモト工芸
(ユウゲンガイシャ マツモトコウゲイ)

ページトップへ