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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #031 有限会社 モメンタムファクトリー・Orii

#031 有限会社 モメンタムファクトリー・Orii2014/12/25

伝統技法を進化させた独自の発色法を確立 現代の暮らしに生きる〈高岡銅器〉

国際見本市で注目を集めた「折井マーブル」

2011年、世界各国のデザイナーやアーティストの最新の作品が並ぶニューヨーク国際現代家具見本市(ICFF)で、ある製品が注目を集めました。それは複雑な文様が浮かびあがる、色とりどりのタイル。侘び寂びを感じるいぶしたようなブラウン、南の海のようなエメラルドブルー、渋くあたたかみのあるグレー……。これらが銅の板を化学反応で発色させたものだと知って、バイヤーたちは驚きの声をあげました。「塗料を一切使っていないなんて信じられない!」「こんな銅板は見たことがない」と。

Oriiの壁面材は、六本木ヒルズ展望台フロア壁面のほか、ハイアット系ホテルの壁面装飾に次々採用されるなど、国内外から注目を集めています

この、かつてない発色の銅板をつくりあげたのは、モメンタムファクトリー・Oriiの代表取締役社長で、伝統工芸士でもある折井宏司さん。「折井マーブル」と称される独特の風合いをもつ銅板は、いまクラフトやインテリア、建築材料として世界から注目を集めています。

歴史ある高岡銅器の「着色」一筋に

同社があるのは、400年の歴史を誇る銅製品の町・富山県高岡市。江戸時代に加賀藩の前田利長公が産業振興のために鋳物師を招いたことが始まりとされ、現在も花瓶や茶道具、置物、仏具、銅像などの銅器分野で約9割のシェアを占め、世界に認められています。

高岡銅器は、形を作る「原型」、金属を流し込む「鋳造」、彫りなどで模様付けを行う「仕上げ」、色づけを行う「着色」という4つの工程を、それぞれの熟練した職人が連携することで一つの作品を生み出します。

その工程のなかで、モメンタムファクトリー・Oriiの前身である「折井着色所」は、1950年(昭和25年)の創業以来、“着色工程”一筋に歩んできました。独特の色みと技術に定評があり、皇居の装飾具等や、福岡南蔵院の全長41mもの釈迦涅槃像の着色も手掛けています。

その三代目として生まれた折井さんにとって、銅の着色工房は遊び場。幼い頃から自然に「家業を継ぐもの」と思い、祖父と父の仕事を観察して技術と知識を吸収していました。しかし、いざ社会人になった時に選んだのは、東京に出てIT系企業に勤める道。時代の変化の中で、伝統工芸の先行きに不安を感じたためでした。

東京での仕事は順調で、「業界にもこれからという活気があって楽しかった」という折井さん。インテリアが好きで、休日には青山や目黒のショップをまわるなど、都会生活を満喫していました。

しかし1996年、26歳の時に一大決心をして高岡に戻ります。それは、同じく東京で活躍していた叔父の言葉がきっかけでした。

「弊社は以前から日展作家の作品やデザイナーのオブジェなども手掛けており、作家やデザイナーの感性を表現する着色経験が豊富でした。モメンタムという社名は、“弾み、勢い” という意味。これからも伝統の枠にとらわれない発想で挑戦し続けたいですね」と折井さん

「僕も東京で成功して叔父さんみたいになりたいと言ったところ、『馬鹿野郎! 跡取りのお前が継がなけりゃ、折井着色所の技がなくなってしまうんだぞ!』と叱られたのです。そのときにやはり伝統の技をなくしてはいけないと強く思いました。そして、考えてみれば僕は昔からDIYが趣味で、モノづくりが好き。職人として生きるのもありだろうと考えました」と折井さん。

伝統にとらわれない発想で独自の着色技法を開発

ところが、戻った直後から景気が悪化。人気だった花瓶や置物の注文が激減し、会社は大赤字に陥ってしまいます。「自分の選択は正しかったのか?」と思い悩み、「1年ほどは飲んだくれていた」という折井さん。未来に希望が持てないなかで、着色業のあり方にも疑問を感じていました。

 

「おはぐろ」と呼ばれる伝統技法。日本酒や食酢に鉄くずを入れて出来た液を、バーナーで熱した金属の表面に焼きつけます。回数や濃度によって赤色から茶、黒色まで色の調節を行なう高度な職人技が求められる技法です

「着色は高岡銅器の仕上げを担いますが、問屋からの注文ありきの受け身な仕事なのです。もっと自主的にモノをつくりたい、よりオリジナリティのある製品で勝負したい。そのためには他の分業工程である鋳造や磨きなどの技術を学ばねばと考え、高岡市技術養成スクールに通って技術を身につけていきました」

同時に心血を注いだのが、「薄い銅板」への着色が可能な新技法の開発です。

伝統的な銅の着色では、金属を大根おろしと一緒に煮たり、糠みそをつけて赤くなるまで熱するという、一般の人が見たら驚くような手法を用います。化学反応を起こし、それによる腐食や錆によってさまざまな色を表現するのです。

しかし、美しい発色のために高温の熱を加える工程が必要なため、熱で曲がってしまう厚さ1mm以下の銅板への着色は困難とされていました。「なんとか低温で美しい発色を生み出せないだろうか」。折井さんは、これまでにない薄い銅板の着色素材を生み出すことによって、新たな発想で製品開発ができるのではないかと考えたのです。

「毎日毎日、必死で実験している日々でした。伝統的な技熟練の職人なら決して用いないような、邪道ともいえる組み合わせばかりでしたね。まだ職人として未熟だったために、かえって柔軟な発想ができたのかもしれません」

そして2年の歳月を経て、とうとう銅板にOriiオリジナルの「孔雀色」が浮かび上がりました。赤と青を一枚の板に同時に出すような、美しくアーティスティックなマーブル模様です。

「偶然にその色が生まれたとき、『これだ!』と思いました。これぞうちだけの色で、これで自信をもって何でもつくっていけると。安定して色を出せるようになるまでには、さらに1年ほどかかりました」

 

〈time and spaceスクエア壁掛〉。銅板発色の斑紋模様を文字盤にした壁掛けタイプの時計。高岡銅器の伝統的着色技術である、銅の素材を薬品と熱処理によって発色させたオリジナルの斑紋色シリーズです

 

長くつきあうほど愛着がわいてくるクラフトシリーズ「tone」では、初めて外部デザイナーとコラボレート。青、緑、銀、黒、茶などのキュートで多彩な色彩を活かし、シンプルなランプシェードやお皿など暮らしを豊かにする銅製品を提案します

この新たな着色技術から生み出された「班紋色シリーズ」は、数十種類もの色バリエーションも魅力。加工もしやすく、クラフトやインテリア、建設分野での壁面材といった、かつてないジャンルに可能性が開いたのです。

公的支援をおおいに活用して商品開発

ニューヨーク国際現代家具見本市に出展したのは、2011年に中小機構が運営していたセレクトショップ「Rin」で開催された「高岡ippinセレクト」に参加したのがきっかけ。日本貿易振興機構(JETRO)から声がかかり、支援企業に選ばれたのです。

また、新開発した「銅・真鍮の着色技法」は、2010年に富山県の地域資源ファンド助成事業、2011年に国の地域産業資源活用事業計画に認定されました。

「うちは公的支援や助成金をおおいに活用して、オリジナルの製品づくりを実現するための設備投資を行なってきました。また、さまざまなアドバイスを受け、東京インターナショナル・ギフト・ショーや、国際見本市インテリアライフスタイル、roomsといった規模の大きな展示会に参加しています。Rin crossingには、さらに各企業の個性を発揮できるような形での国内外の展示会の開催を期待しています」

有限会社 モメンタムファクトリー・Orii
(ユウゲンガイシャ モメンタムファクトリーオリイ)

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