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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #033 株式会社 石山染交

#033 株式会社 石山染交2015/02/25

歌舞伎や雅楽などの伝統衣装を製作その技法で和の魅力を伝える〈ハンカチーフ〉

創業350年、東京下町の染色工房

東京・墨田。いまではスカイツリーがそびえ立つ下町に、創業以来約350年の伝統技法を受け継ぎ、代々染色業を続けている工房があります。株式会社石山染交です。

創業は1600年代後半、なんと江戸幕府5代将軍徳川綱吉の時代にまでさかのぼります。山形で初代石山五右衛門氏が呉服商を始め、8代目から染物が家業に。戦後、先代が高田馬場の染色工房で修業をしたのをきっかけに東京へ移り、現代表取締役社長の石山祐司さんは13代目になります。

「伝統は革新の連続である」が企業理念。「古くから受け継がれてきた技能を継承するために、新しい改革に取り組んでいきたい」と石山社長

手掛けるのは歌舞伎、舞楽、雅楽、商業演劇、宝塚などの舞台衣装や、祭りで着る半纏、役者や俳優の楽屋のれん、僧尼の着用する法衣など。品質にこだわった一点ものや、緻密な刺繍等を施した特殊なものがほとんどです。

「和装業界では伝統的に分業制が構築されており、受注から納品まで長期を要します。しかし、歌舞伎や演劇の衣装は、舞台が決まってから公演日までひと月程しかない場合もあります。弊社ではさまざまな工程の職人さんたちを集め、染めから絵付け、刺繍、仕上げまで一括生産を行なうことで、そのニーズに応えてきました。その結果、国内であまり類がない弊社だけの仕組みや技術が培われてきたのです」と石山社長。

下絵から染め、絵付け、刺繍までトータル対応

同社の工房は、伝統的な染色作業が行なわれているとは想像もつかないような、ごく一般的なビルのワンフロア。そこで優れた技術を持つ「すみだマイスター」に認定された2名を含む19名の職人たちが、それぞれの仕事に黙々と集中しています。

 

「張り場」と呼ばれる14メートルの作業場には空中に何枚もの生地が張られ、一枚一枚、刷毛で色をのせながら染色が行なわれています。隣の小部屋では図案をもとに下絵を描き起こしたり、染料を調合したり、型紙を使って柄を染めたり。慎重に金箔を生地に貼り付けている職人さんや、細い筆先で友禅の絵付けをしている職人さん、正座をして雅楽の衣装に向かう手刺繍の職人さんの姿もあります。

 

伝統技術の復刻版を目指し、プリンターによる染め技術を開発。「5000種類以上ある型紙も、いますべてPCに取り込む作業を進めています。伝統の良さやクオリティを守りつつ、スピードアップのために現代の技術を活用しています」と友禅職人の加藤孝之さん

基本は受注生産で、発注者やデザイナーさんたちと打ち合わせをしながら最高の一枚をつくりあげます。衣装デザイナーのワダ・エミさんも工房を訪れ、イタリアで上演されたオペラ『マダム・バタフライ』の衣装を製作。すばらしく舞台映えする壮麗さは、海外でも絶賛されました。

「やはり一番嬉しいのは、私たちが手掛けた衣装が思った以上に演出効果があったと納得できたときですね。舞台ではさまざまな照明があてられますから、色彩は非常にむずかしい。たとえば紫系の色は赤っぽく見えるといった経験からの知識をもとに、細かなところまで気をつかって仕上げています」と石山社長。

最近ではTVドラマ『JIN -仁-』の衣装など、和の伝統を活かした洋装も手掛けるようになりました。

伝統の魅力をいまに伝えるオリジナル商品

業界内での信頼が厚く、不況時にも揺らぐことのなかった同社。長年、「バイオーダー」(受注生産)のみ行なってきましたが、2011年、同社は初の自社オリジナル製品を発表しました。Rin crossingの登録商品でもある〈“MONYOU”ハンカチーフ〉です。

 

〈“MONYOU”ハンカチーフ〉 8柄 各1,620円(税込) 日本古来の紋様をシンプルなデザインで表現しました。肌ざわりの優しい細番手の綿糸を使用。薄手ながら吸水性が良く、乾きやすいのが特徴です

 

和装用バッグ〈江戸かたばみ〉 大37,800円 小34,560円(税込) 歌舞伎十八番のひとつ「暫」の衣裳生地「正絹浜紬」を使用。現在その生地をつくれる職人さんがいなくなってしまい、いまあるストックで生産終了予定です。持ち手には、正絹角朝打という組紐を使っています

きっかけは、東京スカイツリー開業を契機にスタートした、墨田区が認証する地域ブランド「すみだモダン」。その取り組みの一環である「ものづくりコラボレーション」に参加し、デザイナーとのコラボ商品を製作したのです。

和の魅力を伝えるために用いたのは雁木紋(がんぎもん)、八角つなぎなど8種の紋様柄。その柄を現代的なセンスで大胆にあしらい、銀煤竹(ぎんすすたけ)、水浅葱(みずあさぎ)、東雲色(しののめいろ)といった日本古来の柔らかな色と組み合わせました。

「地域産業活性化への貢献と共に、伝統の良さを広く皆さんに伝えることで、技術者を守り育てなければという気持ちがあります」と石山社長。伝統産業の未来に強い危機感を感じています。

「たとえば、私たちが手掛ける雅楽の装束は宮内庁からの発注であり、伝統を守ってつくりあげることに価値があります。しかし、必要な染料や生地などが年々手に入りにくくなっています。技術を継承する職人がおらず、やむなく廃業してしまうのです。年月をかけて経験を積まねば、一流の職人は育ちません。そのためにはやはり需要がなければならないのです」

その後、歌舞伎十八番のひとつ「暫」の衣裳生地を使用した和装用バッグ〈江戸かたばみ〉、衣装生地江戸の火消しが着用していた半纏を現代風に進化させた 〈“SHOUBI”coat(匠美コート)〉を製作。いずれも「すみだモダン」に認証されています。

「すべてが初の試みですから、職人さんたちも悩みながら試作を繰り返し、一切妥協のないものをつくりあげています。それだけに愛着をもってお使いいただけると嬉しい。意外と若い方が興味を示されますね。匠美コートは若い男性に人気があり、スカイツリーのショップ(すみだ まち処)で見かけて気に入ったからとわざわざ工房まで注文に来てくださる方もいるんですよ」

〈“SH0UBI” coat (匠美コート)〉3色(紺・茶・緑)各43,200円 ロゴ名入れの場合、別途加工料3,000円~(税込) 東京スカイツリーにある産業観光プラザ「すみだ まち処」では、トルソーに着せて展示。江戸の半纏そのままのシルエットがモダンです

「rooms」や「ギフトショー」などの合同展にも出展するようになり、これまで業界内でのみ知られていたその名が、少しずつ広く知られるようになってきました。

需要を喚起し、伝統を守る人材育成を

取材の最後に石山社長は、鶴亀と龍がモチーフの豪華絢爛な打ち掛けが掲載された雑誌を見せてくださいました。それは昔、石山染交にいた職人さんが引退後に最後の仕事として亡くなる直前まで取り組んだ仕事でした。その制作費は数百万。それでも一流の仕事を残しておかねばという思いで、石山社長が私財を投じて発注したのです。

「その方がいなくなると、もう二度とつくれなくなってしまう。そうした技術が、いま日本には数多くあるのです。私たちも技術の継承や人材育成が一番の課題です。Rin crossingでも、企業の繁栄のためだけでなく、人材育成のために需要を喚起する取り組みを推進していただけたらと思います」

株式会社 石山染交
(カブシキガイシャ イシヤマセンコウ)

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