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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #037 艶金化学繊維 株式会社

#037 艶金化学繊維 株式会社2015/06/25

「もったいない」が生み出したエコロジーで心豊かなファブリック〈のこり染〉

創業明治22年。伝統の「艶出し」から染色業に発展

大きな花崗岩の上に畳んだ織物を乗せ、二人の職人が唄に合わせて拍子をとりながら木槌で交互に織物を打って艶を出す。明治の初め頃、綿織物の一大産地であった尾州(愛知県一宮市周辺)で見られた「艶出し」の風景です。

創業者である墨 宇吉氏は「艶屋の金兵衛」と呼ばれた人物で、それが社名の由来。名古屋から電車で約30分の岐阜県大垣市にある艶金化学繊維株式会社は、明治22年創業の艶金興業株式会社の子会社として昭和31年に設立され、化合織、天然繊維、複合繊維のニットの染色事業を行なってきました。防縮、表面変化素材などの特殊風合い加工にも優れ、巧みな染色と確かな技術でめまぐるしく変化するアパレル界の要望に応えています。

「のこり染は、自然が人に与えてくれた食べ物という恵みから頂いた色。 これからもずっと天然繊維に自然に染まる色を大切にしていきたいと思っています」と、墨社長

現代表取締役社長の墨 勇志さんは、創業者のひ孫にあたります。大手コピー機器メーカーの技術者として活躍していたところを招かれ、1991年に親会社である艶金興業に入社しますが、2010年、同社が繊維事業から撤退することになり、艶金化学繊維を引き継ぐことになります。

「戦後復興から高度成長期にかけて、このあたりの繊維産業はガチャッと織機を動かすたびに万札が儲かる “ガチャマン景気”で、笑いが止まらない時代もあったといいます。しかし、私が入社した頃は円高で、輸出産業であった繊維産業は壊滅的な状況でした。親会社が繊維産業から撤退しても、艶金の繊維事業のすべてが消えてしまうのは忍びなく、なんとか新たな活路を見出したいと思っていました」

食品加工の余剰物を活かす「のこり染」の開発

「衣料の価格がどんどん下がっているいま、染色という賃加工の下請け仕事だけでは、いくら品質に自信があっても工賃の安い海外に押されてしまう。自分たちで最終商品をつくって世に問うてみたい」

そう考えた墨社長が、染色業を堅守しつつ取り組んだのが、自社の強みを活かしたオリジナル製品づくりです。社内に縫製部門を新設し、機械の汚れを防ぐ産業用ロボットスーツや子牛用の保温ジャケットなど、これまで市場になかったアイデアで新製品を開発・提案。とくに産業用ロボットスーツは好評で、現在ほぼすべての大手自動車メーカーの工場で採用されています。

「そしていま注目を集めているのが、同社の特許技術である「のこり染」を用いた暮らしのファブリックブランド〈KURAKIN〉です。

私たちが口にするもので染められた安心感も魅力。どことなく懐かしくやさしい色あいです。「もともとの食品が連想できる色を目指しました。まったくそうならずにお蔵入りした色もたくさんあるんですよ」(墨社長)

のこり染とは、大地から収穫した食材を大切に使い切ろうという気持ちから、食品加工の際に使われずに捨ててしまう “のこり”を原料とした染色方法。長年の繊維加工技術を誇る同社ならではの特許技術で、その開発には墨社長の環境への思いがありました。

「染色は、繊維を水中に浸した状態で100度近くまで水温を上昇させて色をつけ、染色後の水は適切な処理を行なったのちにすべて捨ててしまいます。つまり大量の水とエネルギーを消費しており、仕事の中身そのものがまったくエコロジーではないのです。そこで染色をキーワードにエコロジーな開発ができないかと模索していたところ、岐阜県産業技術センターから、食品メーカーから出る余剰物を色素に再利用できないかという共同研究依頼があり、これだと感じました」

自然から生まれる色を、手間ひまかけて製品化

取り組みをスタートしたのは2008年。まず、色が出そうな食品を検討し、考えに賛同してくれる食品メーカーを探しました。世界的にも前例のない事業のため、この“パートナー探し”は非常に苦心しました。

「食品と染色という関わりのない産業同士でしたから、まったくツテがありません。しかし、エコロジーの観点から良質な食品の余剰物を再利用したいという思いがあり、老舗の和菓子店や環境に配慮したモノづくりを行なっている企業に、一件一件、電話でアポをとって協力を仰ぎました」

愛知の老舗和菓子店が餡をつくる際に出た小豆の余剰物。これを専用の鍋で約1時間煮出して染料をつくります

 

のこり染は手作業の多いデリケートな染め。高速で染めるとムラになりやすいため、あえて30年前の古い染め機を使用し、熟練の職人さんがつきっきりで7〜8時間かけてじっくり染めていきます

 

社内ラボで最適な抽出温度や分量の実験を繰り返して、食材のもつもっとも美しい色調を引き出していきます

環境問題への関心が高まっていたこともあり、アイデアそのものには関心を寄せる企業が多かったといいます。しかし、余剰物といっても産業廃棄物ですから、取引は想像以上に困難でした。やっとわけてもらえても、なまものゆえにすぐ腐ってしまったり、秋に採れる栗などは収穫期にしか余剰物が出ないといった問題が発生しました。

また、自分用にTシャツを草木染めするのとはちがい、JISの品質基準をクリアする必要もありました。製品としてムラなく安定した色の再現性を確保すること、洗濯で色落ちしないこと、強度や安全性など、地道にテストを繰り返しながら根気強く開発を進めていったのです。

「化学染料に比べ、自然物のみの染色は倍以上の手間ひまがかかります。社内外から、そんなことをして商売になるのかという懸念の声がありましたが、消費が二極化している時代、自然由来のストーリー性のある商品を求めるお客様も増えてくるはずだし、会社全体のイメージアップをしながら心豊かな暮らしを提案したいという思いがありました」

作り手の工夫が込められたものを、日々の暮らしに届けたい

 

年間を通して安定した染色を実現するのに、同社の染色技術を永年支えてきたベテラン染色職人が知恵を絞って1年以上かかりました。「天然染料は天候や気温、季節で色が変化する。たとえば柿の皮は、秋の早い時期と晩秋の熟した柿ではちがう色に染まるんですよ。非常にむずかしいが、面白く奥深いですね」と染色課長の岡 清博さん

こうして生まれたのが、ワイン・あずき・ピーナツ・柿・うめ・コーヒー・だいず・くり・パセリ・ウーロン・ブルーベリーの11色。どことなくホッと心安らぐ色ばかりです。

「のこり染は、不思議なことに人工的に作った糸やポリエステルなどはまったく染まりません。また、植物由来の綿や麻と、動物由来のウールでは色みが大きく異なります。自然が人に与えてくれる食べものという恵みから頂いた色、天然繊維にだけ自然に染まる色です」

〈KURAKIN〉では、その神秘的な“色”にフォーカスしたブランディングを行なっています。中小機構のアドバイザーからアドバイスを受けながら、コンセプトづくりやロゴ製作など、すべてが手探りでの挑戦でした。

 

〈のこり染巾着バッグSARA〉お皿をイメージした巾着を入れものに仕立てました。口を絞れば収納したモノをそのまま気軽に持ち運ぶことができます

 

〈ルームシューズ〉徳島県で日本の文化・風習に合う履き心地の良い製品をつくり続ける有限会社ラッキー産業とのコラボ商品。「〈KURAKIN〉では価格最優先のモノづくりに警笛を鳴らし、買った方に本当にご満足いただけるモノづくりをしていきたいと考えています」(墨社長)

しかし、揺るぎない思いが、いま多くの人々に伝わりつつあります。

「決して贅沢ではないけれども、作り手の工夫が込められたものを、もう一度、今の暮らしの中に取り入れることを考えたい」

〈KURAKIN〉の商品は、上質な仕上げを施した衣料向けオリジナル生地を用いたポーチや、希少な繊維産地でつくられたタオルなど、高品質でシンプルなデザインが特徴です。

他社とのコラボ製品も、日本人が昔から使ってきた布の道具に注目。手抜きをせずに丁寧につくられたメイドインジャパンにこだわり、使い心地の良さや満足感を追求しています。

ロボットスーツで培った技術と人材を活用し、デザインから縫製から検品まで自社で行っています

現在の販路は、商品のストーリーを伝えやすいカタログやネット販売が中心。3年前からインテリアライフスタイル展への出展を始め、メディア取材も増加したことから、事業のユニークさや志に賛同した企業やショップからOEMの問い合わせが相次いでいます。

「食べものだけでなく、木材加工の余剰物であるおがくずや墨製造の余剰物など、いろんな“のこり染”の相談が持ち込まれます。環境問題に関心が高い海外からの反応も良いため、早急に輸出にも着手したいですね。Rin crossingには、その道すじとなるイベントやエージェントとの出会い、販路開拓の支援等を期待しています」

艶金化学繊維 株式会社
(ツヤキンカガクセンイカブシキガイシャ)

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