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創り手たちのStory

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#039 株式会社 五十崎社中2015/08/25

日本の手漉き和紙とフランスの金箔技法を融合し、新たな魅力を創造した〈ギルディング和紙〉

大洲和紙の産地活性化を目指す新しい会社

手漉き和紙の持つ柔らかな風合いに、見事に描き出された金銀箔の独創的なデザイン。アート作品のような美しさと、絶妙な色合いで醸し出される立体感に、思わず見惚れてしまいます。

日本の手漉き和紙とフランスの金箔技法を融合し、これまでにない新しい空間を創出する和紙として注目されている〈ギルディング和紙〉。世界で唯一、この和紙を製造しているのが、350年以上もの歴史を持つ大洲和紙の産地・愛媛県内子町五十崎に工房を構える株式会社 五十崎社中です。

創業は2008年。東京の大手通信会社に勤めるSEだった齋藤宏之社長が、衰退していく産地をなんとか再生させようと、中小企業庁のJAPANブランド事業を足掛かりに設立した会社です。

「2008年に五十崎に移り住んで起業しました。いわゆるIターンです。私は神奈川県出身ですが、妻がここ五十崎の出身で、実家が造り酒屋を営んでおり、内子町商工会に所属する義父は和紙産業活性化のリーダー的存在でした。その義父がある時、『内子町に著名なフランス人デザイナーを招くことになったが、産業が高齢化していて、彼から技術を教わる人や、技術を活かして新しいものづくりに取り組む人がいない』という話をしてきたのです。じゃあそれ、僕がやりましょうか? という感じでした(笑)」と齋藤社長。

五十崎は明治末期には400人を超える和紙職人がいましたが、現在はわずか数人となり、伝統産業の継承が課題となっていました。

齋藤社長は、1972年神奈川県海老名市生まれ。坂本龍馬を尊敬しており、龍馬が設立した日本最初の商社「亀山社中」にあやかって「五十崎社中」という社名にしたそうです

情熱と信頼関係で実現したコラボレーション

しかし、安定した職を辞して伝統産業の世界に飛び込むのは、相当な勇気が必要だったのではないでしょうか。

「いつかは起業したいと考えていたものの、現在の和紙の需要を考えると他の事業のほうが良いのではと二の足を踏む気持ちもありました。しかし、招聘されたフランス人デザイナー、ガボー・ウルヴィツキの作品を見た瞬間、『これはいける!』と直感したのです」

ガボー氏は金属箔のギルディング技術を用いた額縁のデザインで知られ、2007年には工房がフランス国家遺産企業の認定を受けています。作品は欧州のほか北米や中東でも人気が高く、齋藤社長は当時アブダビで行われていた展覧会に足を運びました。

「非常に迫力のある展覧会で、彼のデザインと技法を大洲の手漉き和紙に取り入れることができたら新たな可能性が開けるに違いない、若い人たちにも支持されて需要を創出できると感じました。ところが、張り切って起業してから思いがけない問題が起こったのです」

ガボー氏が内子町に滞在したのは、2008年8月から2009年1月。来日したらすぐに技法を伝授してもらえるものと思っていたのですが、「それは契約に入っていない」と拒否されてしまったのです。

「ガボーにとってギルディング技術は企業秘密のようなもの。どれほど頼んでも肝心なところは見せてくれませんでした。まいりましたが、私自身もまず紙漉きの技術を学ばねばという時期でしたから、ガボーと一緒に老舗の和紙工場である天神産紙工場の工房に入り込み、朝から晩まで彼のコレクション製作を手伝いながら製品づくりのヒントを探していました」

 

天神産紙工場では、実に50年ぶりに手漉き和紙職人を目指す若者が就職しました。五十崎社中の奮闘が雇用の創出、そして産地の未来に貢献しています

仕事だけでなく、日々の暮らしでもガボー一家が困らないよう、つきっきりで世話をしていたという齋藤社長。次第にガボー氏は齋藤社長を深く信頼するようになり、齋藤社長もガボー氏のエネルギッシュな製作姿勢に、世界に通用するものづくりの厳しさと面白さを感じていました。

友情が深まっていく中で、ガボー氏は五十崎社中が地域活性化に果たす役割を理解し、門外不出の技法を特別に指導してくれるようになったのです。2010年春、同社は世界初のギルディング和紙の壁紙を発表しました。

「ガボーが内子町という町を気に入ってくれたことが大きかったと思っています。風光明媚でのんびりしており、町の皆さんも和紙職人さんたちもとても親切であたたかいんですよ。私たちはギルディングの技術を学び、ガボーは習得した手漉き和紙の技術を活かして帰国後に壁紙の製作を始めました。双方にとって意義深く、発展性のあったコラボレーションだったと思います」

ギルディング加工とは、金箔・銀箔・銅箔を使って紙や木、布の表面上にデザインを施す手法。紙の上に型紙を置き、独自開発したのりを塗布。型紙を外してその上からギルディング箔を乗せて専用のブラシでこすると、のりのある部分にだけ模様が残ります

型を使い下絵を施していきます。創業当初からのメンバーである河内正剛さんが、現場監督のような立場でデザインから型紙の製作、ギルディング加工、品質管理等を担当し、同社の製造の要を担っています

和紙の新たな活用法を模索したい

いま、齋藤社長が注力しているのは販路の拡大です。同社が使用する手漉き和紙は、前述の天神産紙工場から仕入れています。同社の売上げが増えれば地元の和紙工場の売上げ増につながり、ひいては地域全体の活性化につながります。

「大洲和紙の伝統を守るために、いま何よりも当社に求められているのは、和紙を現代のライフスタイルにどのように提案していくかということと、需要を掘り起こす、つまりたくさん『売る』ということなのです」

齋藤社長は、全国各地の伝統産業フェアやインテリアライフスタイル展などの展示会に出展して販路拡大を模索。さらに百貨店の実演販売やお子様向けのギルディング教室など、幅広い世代のコンシューマーに大洲和紙を知ってもらう活動にも積極的に取り組んでいます。

 

同社の主力製品〈ギルディングシリーズ〉。デザインもガボー・ウルヴィツキ氏が、日本の伝統的な模様をベースに考案しています。額装、表装などの室内装飾や、インテリア素材としても幅広く使えます

 

ステーショナリブランドMUCUを手がけるK-DESIGN WORKSにデザインを依頼した五十崎和紙ブランド〈楚々SOSOシリーズ〉。和綴じ帳・ぽちぶくろ・泡紙風船などを展開

〈楚々SOSO〉の泡紙風船。手漉き和紙製の紙風船を製作しているのは日本で五十崎社中だけ。折り紙作家を母に持つ同社社員の岡野奈々さんが一枚一枚手作業で仕上げています

製品も、スタイリッシュな文具の五十崎和紙ブランド〈楚々SOSO〉など、小物アイテムの開発で、より身近に和紙を楽しんでいただける工夫をしました。

「弊社のギルディング和紙はマカオの高級ホテルの VIPルームの壁紙に採用されるなど、海外での反応も良いため、パリや上海の展示会に出展してPR活動を進めています。Rin crossingにはこうした海外への販路拡大支援のほか、異業種との斬新なコラボや、手工業に理解があり和紙の新たな活用法を共に考えてくださるバイヤーさんとの出会いを期待しています」

株式会社 五十崎社中
(カブシキガイシャ イカザキシャチュウ)

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