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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #042 有限会社サトウワックス

#042 有限会社 サトウワックス2015/11/25

金属加工の街「燕市」から羽ばたく世界初の〈ステンレス鋳物ホーロー鍋〉

ステンレス鍋と鋳物ホーロー鍋の長所を併せ持つ〈リロンデル〉

廃校になった学校をリノベーションした施設〈三条ものづくり学校〉の調理室で開催されているお料理教室「からだにやさしいごはん」。地域のお母さんたちの笑顔のまんなかにあるのは、淡いピンクやブルーのカラーリングがかわいいお鍋〈リロンデル〉です。

ずっしりと頼もしい蓋に描かれている二羽のつばめもかわいい! そう、リロンデルとはフランス語で“つばめ”のこと。世界が認める金属加工の街・新潟県燕市から誕生した、世界初のステンレス鋳物ホーロー鍋なのです。

〈リロンデル〉の発売は今年7月。発売前から燕市のデザインコンクールで関東経済産業局長賞を受賞し、地域ブランドの認証も取得。経済産業省が海外に日本の優れた地方産品を紹介する「The Wonder 500 ™(ザ・ワンダー・ファイブハンドレッド)」にも選定されるなど、伝統の職人技をベースにした世界初の技術が高い評価を得ています

「お料理好きの方に人気の鋳物鍋は、これまで鉄製のものしかありませんでした。〈リロンデル〉は、従来のステンレス鍋と鋳物ホーロー鍋のいいところをミックスした新素材『ナロイ』でできています。ステンレスの“錆びにくさ”とカラーリングされた鋳物鍋の可愛らしさを兼ね備え、使ったあとは乾かしてしまうだけ。素材のおいしさを引き出す無水調理ができて、しかも面倒なサビのお手入れをしなくていいという、これまで市場になかった理想の鍋なのです」と、有限会社サトウワックスKitchenプランニング事業部プランナーの保科かおりさん。

夢のお鍋のつくり手は、新潟精密鋳造株式会社専務取締役の佐藤 剛さん。開発までに2年の歳月をかけ、2000回におよぶ試作と実験を重ねて、理想のステンレスを見つけ出しました。

職人技が詰まった〈リロンデル〉は、ほぼ手づくり。ひとつの鍋をつくるのに1ヶ月以上かかります。「これからの事業ですが、手間ひまかけたものづくりが見直されているのはうれしいですね」と、佐藤専務取締役

「弊社はロストワックス鋳造を得意とする素形材製作メーカーで、主に医療分野や車体製造機器の部品を製造しています。いわゆる完全下請けの企業です。高度成長期には順調に業績を伸ばしましたが、リーマンショック後は景気の波に揉まれ、自社製品も必要だと考えるようになりました。そこで2013年に中小企業庁のものづくり補助金(平成24年度補正ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金)の申請が通ったのをきっかけに、これまでに類のないステンレス鋳物ホーロー鍋の開発に着手しました」

合金から自社開発。ロストワックスならではの差別化に挑戦

機械部品を専門とする企業が、「鍋」をつくろうと考えたのはなぜでしょうか。

「そもそも現代の生活の中に、鋳物の製品ってあまりないんですね。そんな中で人気の鋳物製品としてホーローがけした鋳物鍋が世に出ていることは知っていました。しかし、ル・クルーゼやストウブは砂型鋳造のため、鉄系のものしか鋳造できない。対して我々はステンレスの鋳造が得意です。ロストワックス鋳造は、鉄に限らずさまざまな金属が鋳造できるのが強み。そこで、一工夫入れた鍋にトライしてみようかなと考えたのです」

ロストワックスとは、ワックス(ロウ)の性質である比較的低温で溶けることを利用した鋳造法。砂型鋳造に比べて工程が長く手間ひまはかかりますが、材質に関係なく複雑な形状でも柔軟に対応でき、格段に高い寸法精度と美しい鋳肌が得られます。また、隣接部分を一体化した複雑な形状の量産も可能です。

1600度に熱したステンレスを射型に注ぎ込んでいきます

 

〈リロンデル〉の型。蓋と取手部分は精密鋳造の特性を活かした一体型。鍋蓋のつまみが壊れるといったストレスがありません

 

ホーローの吹きつけ作業。ものづくりの街・燕市でもホーローまで一貫して自社加工するメーカーはほとんどありません

しかし、これまでステンレス製の鋳物ホーロー鍋が市場になかったのには理由がありました。

「鋳物の熱膨張係数の問題です。鉄系が1とほぼ変わらないのに対して、ステンレスは1.5もの伸び尺がある。そこにホーローをかけると、ガラス質由来のホーローは割れてしまうのです。そこで、まずはホーローがけが可能な合金をつくるところから開発が必要でした」

それはもう「ひたすら手探りで実験を繰り返すしかなかった」と苦笑いした佐藤専務。開発中も工場は通常稼働。研究と平行するわけにいかず、朝4時に出社して休日も返上で塗り合わせと焼き付けを繰り返し、頑丈でホーローも割れない調合と製法を見つけ出しました。

その苦労の結晶が、〈リロンデル〉に使用されている新素材「ナロイ」なのです。現在、「ホーローがけができる、鋳物でつくった特別配合のステンレス材容器の製作方法」で日本、中国、EU(2カ国)に世界特許を出願しています。

女性視点を重視し、感性と潜在ニーズに応える

燕市の伝統的な職人技である「磨き」加工が、吸いつくような密着度を生み出します

燕の有名な職人技のひとつである「ステンレスの磨きの技術」が活かされているのも〈リロンデル〉の優れたところ。蓋と本体との吸着面が非常に滑らかで密閉性が高いため、調理中の蒸気が外に逃げにくく、素材本来のおいしさを引き出す「無水調理」が可能になるのです。

「磨けば磨くほど錆びやすくなるので鉄鍋ではおのずと限界があり、密着度を高めるほどサビのお手入れが不可欠になるという悩みが出てきます。その点、ステンレスは錆びにくく、忙しいお母さんたちにとって、より使い勝手のいい鍋だと思うのです」と、プランナーの保科さん。

プランナーの保科かおりさんは、元雑誌編集者。「売れる企画を考え、価値ある情報を伝えていくことは同じ。私たちは〈リロンデル〉をニッチな高級品ではなく、普通の主婦の皆さんに日常的に使ってもらいたい。そのためにどんなアプローチが必要かを常に考えています」

〈リロンデル〉の開発には、リロンデルお料理コンシェルジュで佐藤専務の奥様、朋子さんをはじめ、保科さんや同社従業員など多くの女性の意見が活かされています。自身では料理をしないという佐藤専務が驚いたのは、蓋を閉めるときにキッチンに響く音の心地よさにまでこだわる女性ならではの視点でした。

「技術開発とはまったくちがう感性の問題ですね。製造上は戸惑うことでも耳を傾け、細かな改良を重ねて実現していきました」と佐藤専務。

そのひとつがカラーリング。「調理したら、そのまま鍋ごとテーブルに出したい」という声には、「手間を省きたい」という思いと同時に「食卓に華やぎがほしい」という願いがあります。海外製のカラフルな鉄鍋が女性に人気を博したのは、おいしく調理できることはもちろん、そうした潜在ニーズに応える商品だったからです。

「しかし、日本は安全基準が厳しく、鍋などのキッチン用品には人体に有害とされるカドミウムが含まれる赤、黄色、オレンジの釉薬を使用することができません。こうした制限の中でも女性にとって好ましいカラーリングを釉薬メーカーと共に模索し、赤い色素を使わないピンクや、その鍋の内側には黄色の色素を使わないベージュを合わせるなど、見た目も工夫していきました」

こうして選ばれたカラーは、ソフトパステルからシックなダークカラーまで全6色。不思議と「和」の気配を漂わせる、控えめで柔らかな色合いが魅力的です

〈リロンデル〉は暮らしを豊かにする「しあわせの青いつばめ」

「とてもいいものができたから、より多くの人たちに使ってほしい。とくに私たちのような忙しいお母さんに」

有限会社サトウワックスは、〈リロンデル〉の販売の他、運営会社として、レシピの開発や販促物のディレクションおよび作成、展示会への出品、広告などを一貫して行っています。とくに力を注いでいるのが、「リロンデルのある暮らし」そのものを提案することです。

〈三条ものづくり学校〉に企画室を設置したのも、調理室があるため。JA新潟市直売所〈いくとぴあキラキラマーケット〉の「食育の日」(毎週木曜日)でも〈リロンデル〉を使った料理提案を行い、地域や都内のカフェともコラボしてお料理教室を開催しています。

「私たちはそこで鍋を売りたいわけではなく、こうした活動を通じて『食』を考えるコミュニティを広げていきたいのです。いまは、いいお鍋を買ったからといってコトコトじっくりという時代ではないんですね。私たちの提案は、基本的にお母さんに『家事楽』をしてもらうためのものです」と保科さん。

 

『Team L'hirondelle』編集、企画担当の永井優子さん(左)も元編集者。「お料理コンシェルジュが毎週2品考案するパパッとレシピを公式ブログやフェイスブックで紹介。休日にすこしゆったりと時間をかけてつくるレシピもあるんですよ。どんな活動も、私たち自身の『こういうのがあるといいね』という思いを大切にしています」

 

お料理コンシェルジュ・食育アドバイザーの佐藤朋子さん。〈リロンデル〉を取り入れたレシピづくり、地域野菜を使った食育イベント活動などを行っています

企画を行う『Team L'hirondelle』のメンバーは、保科さんをはじめ料理のカメラマンまでみんな主婦でありお母さん。「いかにうちに帰ってから簡単にはやく、子どもたちにおいしいものをつくれるか」「手づくりしたくても時間や気持ちの余裕がない」といった現代の悩みを自分たちもひしひしと実感しています。

「でも、気密性と熱電導性に優れた〈リロンデル〉は、煮物もサッとできちゃう。時短メニューが得意中の得意なんです。パパッと短時間でこんなにおいしくて心はずむ料理ができる、時間をかけなくても愛情たっぷりのママのお料理はできるということを楽しく、ていねいに伝えていけたらと思っています。そしてお母さんが愛用していた道具として、子どもたちにも受け継がれるような製品に育てていきたいですね」

〈リロンデル〉のブランドカラーは青。童話『しあわせの青い鳥』のように、しあわせはすぐそばにあると教えてくれる「しあわせの青いつばめ」なのです。

「発売から半年足らずにも関わらず、多くのお問い合わせをいただいていますが、現状では量産がむずかしいことと、地方の一企業なので広報活動に金銭的な限界があるのが悩みです。Rin crossingには都心で商品が展示できたり、バイヤーさんと出会える場をプロデュースしていただけたらうれしいなと思います。たとえばRin crossingのカフェなんて素敵ですね!」

有限会社 サトウワックス
(ユウゲンガイシャ サトウワックス)

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