The Place of Discovery Rin Crossing

menu

menu

登録メーカー
249社
登録バイヤー
国内:638名/海外:504名

詳細へ

創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #048 プラス産業 株式会社

#048 プラス産業 株式会社2016/05/30

スピーカーのコーン紙製造技術で紙プロダクトの新ジャンルを開拓〈静岡ぽち / ガクラフト〉


立体モールド技術の追求による高音質へのこだわり

長年培ってきた紙の立体モールド技術をベースに、まったく新しい概念の紙雑貨「静岡ぽち」や紙画材「ガクラフト」など紙製の新プロダクト開発で新たな領域へ乗り出したメーカーがあります。その会社とは静岡市内を流れる安倍川にほど近いエリアに佇むプラス産業株式会社。スピーカーの音質を左右する振動板「コーン紙」を設計・製造するメーカーです。その種類は、音響用や車載用、ゲーム機やスマートフォンなど、プロユースの大型のものから携帯端末の小さなものまで多岐にわたります。ドーム状のコーン紙を目にしたことはあっても、それが紙で立体成型されていることを知る人は多くないかもしれません。

大手オーディオ機器メーカーでの経験を元に1975年に創立した先代社長の後を継ぎ、2代目として新たなプロジェクトに挑む大須賀社長

「実はこのコーン紙は、オーディオ機器の中でも音質に関わる重要な部品なんです。紙は世に存在する物質の中でも比重が軽くて、かつ密度が低いという、振動板に求められる要素を兼ね備えています。1975年の創業以来、当社は高音質を目指して、紙という素材の研究開発とそれを立体モールドする技術の向上に力を注いできました」と代表取締役社長の大須賀司さんは語ります。

高音質を求めるユーザーのニーズに応える〈スピーカーのコーン紙〉

プラス産業がこの地で創業したのは、日本酒の仕込みにも使われる良質の軟水が安倍川の伏流水から得られるから。日本独特の軟水は、海外の硬水では得られない優れた質の紙を抄紙することができるのです。

原料を叩いてすりつぶし、繊維を分離させる「叩解(こうかい)」作業を行うビーター。この装置本体は専門の職人によって独自に設計施工されている

一時は30社存在したコーン紙の製造メーカーも、現在は2社のみ。多くの工業製品と同じようにアジア圏での海外生産が主流となり、純国産品の製造メーカーは厳しい状況に置かれています。

原料のパルプを抄紙する水は日本の軟水が適している。“紙の産地には必ず銘酒蔵あり”と言われるほど、良質な水と紙の関わりは高い

究極のハイエンドスピーカーへのチャレンジ

そんな市場に敢えて一石を投じるかのように、大須賀社長が2011年に打ち出したコンセプトは“純日本製”。良質な音を求めるユーザーへ向けて、素材や部品の全てを日本製にこだわった、ハイエンドスピーカー「sui」を発表しました。

スピーカーのフレームの切削も自社内で手掛けた。コーン紙をプレスする型枠を削り出す技術を応用し、細部まで自社技術を結集

ヨーロッパで生産されるハイエンドスピーカーでさえ部品はアジア圏で製造されるという状況下で、素材まで純国産にこだわったスピーカーは業界初。和紙の原料である三椏(みつまた)と安倍川の軟水と砂、漆、という日本の伝統的な素材によって、コンパクトなボディながらも臨場感あふれる良質な音環境を共鳴させたプラス産業のプロダクトは、話題を集めました。

〈純日本製ハイエンドスピーカー「sui」〉のボディは、静岡県郷土工芸品の駿河漆器生産者「鳥羽漆芸」が塗装。安倍川の砂と漆で8ミリほど塗り重ね、硬質な筐体として仕上げた

デザイナー×企画会社とのコラボレートで新ジャンルへ進出

部品としてのコーン紙製造メーカーから大きく一歩を踏み出すために、静岡産業振興協会が主催する地元メーカー支援プロジェクト「つなぐデザインしずおか」へ参加。スピーカーそのものを一から製造した「sui」を静岡在住のデザイナーと創りだし、翌年度の同プロジェクトで静岡で特産品やギフト品の企画販売を手掛ける株式会社靜玄と手を取り合い、静岡産業振興協会によってマッチングされた家具デザイナーとのコラボレートで、さらなる新境地への挑戦が始まりました。

静岡らしさにこだわる柳澤社長のアイデアとプラス産業の開発・技術力によって、独自性と市場競争力のあるプロダクト開発が進められた

「プラス産業さんが持っている紙の立体モールド技術は、他にはない特殊な技術ですから、静岡ならではの個性ある紙雑貨を一緒に開発できないかと、以前から注目していました」と語るのは、靜玄の代表取締役社長、柳澤秀美さん。

プラス産業の紙の立体モールド技術を活用し、静岡独自のモチーフを立体的に表現するプレス型の試作が繰り返された

試行錯誤を重ねて誕生したのが、「静岡ぽち」と名づけられた、紙のぬくもりを感じる立体的なポチケースでした。贈る人も受け取る人も笑顔になる、中身への期待と想像がふくらむ新しい紙雑貨です。静岡の代表的な特産品「金目鯛」、「桜えび」、そして世界遺産「富士山」という縁起の良い3つをモチーフに展開。慶事やお正月などおめでたい場でのギフトとして、またデスクで文具やSDカードなどの小物ケースとして自由に楽しむ人が増えているといいます。

〈立体ポチケース「静岡ぽち shizuoka pochi case」〉には、お年玉や心づけ、お礼などを渡す場面で、金銭以外のプレゼントを入れることもできる

「地域の支援プロジェクトに参加して勉強になったのは、デザイナーとコラボレートすることで、今までにないジャンルで新たな価値を生み出すことができたということです」と柳澤社長も語るように、従来の専門分野にとらわれない自由な発想が2社の可能性を大きく広げました。

アート業界へ新たな価値を提供する、画期的な紙画材

オーディオ業界から紙雑貨という新領域への進出を果たした翌年、「静岡ぽち」で好評を得た波に乗って、プラス産業×靜玄のユニットでさらなる新規プロジェクトに挑みます。ここで課題となったのは、ポチケースが季節性の高いプロダクトだったのに対して、年間を通して流通できる紙製品であること。さらには、立体モールドの技術はもちろん、素材である紙の特性を生かすことができるアイテムの検討が繰り返されました。

画用紙の白を実現するために、原料のパルプを白く晒してプレス成型する

今回手を組んだデザイナーは、オーディオ用コーン紙の開発製造でプラス産業と長年つきあいのあった工業デザイナーでした。3者交えてのミーティングの中から生まれたのは、額縁と画用紙を一体成型した、まったく新しい概念の紙画材「ガクラフト」。額縁と一体化しているため、描画面は描き込んでも反ることがなく、水彩や油絵などさまざまな絵の具にも対応。汎用性が高いうえに経年変化にも強く、まさに画用紙として優れた機能性を兼ね備えたプロダクトとして評価されました。

 

〈額縁付き画用紙「ガクラフト」〉の描画面はもちろん、額縁部分も自由に描くことが可能。経年変化にも強く、アートシーンの可能性を大きく広げた。描画面はキャンバス地の質感にこだわってテクスチャーを再現

なによりも、額縁までオリジナルアートとして描き込める創造性の高さが受け入れられ、各地で「ガクラフト」をテーマとした展覧会が開催されたり、小学校の教材として導入されたりと、新たなムーブメントが起こりつつあります。

新たな取り組みへのチャレンジから早5年ほど。Rin crossing主催の商談会への出展も果たし、異業種からの注目が高まると同時に、本来のスピーカーの振動板に対する問い合わせも改めて増えたといいます。

「Rin crossingに登録して、交流会の場で異業種の方やバイヤーさんとのネットワークができたことは大きな収穫でした。オーディオ業界一筋だったこれまでにはなかったことです。販路が一気に広がりましたね。私自身が経営者というよりもつくり手です。長年培ってきた紙の立体モールド技術の基本は守りつつ、今後も新しいプロダクトの開発に力を入れていきたいですね。“有用性”と“実用性”というものづくりの基本を押さえていれば間違いはないんじゃないかな。Rin crossingを通じてのグローバルな展開にも期待を寄せています」と目を輝かせる大須賀社長。次なるプロダクト開発へ向けてのチャレンジは既に始まっています。

プラス産業 株式会社
(プラスサンギョウ カブシキガイシャ)

ページトップへ