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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #050 株式会社 SUNKI Branding

#050 株式会社 SUNKI Branding2016/07/25

地域色を生かしたものづくりで新しい価値提供をしながら伊勢型紙の古典柄への原点回帰へ〈常若屋〉

日本の神社のトップ、伊勢神宮の門前で
伊勢ゆかりのものを積極的に発信

伊勢志摩サミットによる賑わいと緊張感が過ぎ去り、落ち着きを取り戻した伊勢神宮でお参りを済ませてから訪れたのは、古くから太陽信仰の聖地ともいわれる二見浦にある株式会社SUNKI Branding。伊勢志摩国立公園内 五十鈴川の川辺に広がるのどかな住宅街のなかに建つ一軒家のアトリエで同社代表取締役の中村純社長にお話を伺いました。
アットホームな空間で中村社長手ずから珈琲豆を挽きながら、「この珈琲は伊勢志摩サミットの昼食会で出された豆なんですよ。この餅も伊勢で一番古い菓子舗のものです」と、伊勢らしいおもてなしで取材班を出迎えてくださいました。

安倍昭恵総理大臣夫人が主催したG7伊勢志摩サミット配偶者プログラムの昼食会で使用されたナフキン。四季折々の花木がデザインされた「伊勢型紙」による昭和初期の図案を、艶やかな光沢のある朱子織のリネンに手捺染で染め上げた

G7伊勢志摩サミットの記念品であるサミットバッグのバックチャームに採用された「伊賀くみひも」。調和を表す緑をベースに安定の紺、活性化のオレンジ色が組み込まれ、結び目は平和への願いが叶うよう「叶結び」に

まず初めにご紹介いただいたのが伊勢志摩サミットで採用された、昼食会用のナフキンと土産品のバッグチャームのくみひも。2点とも中村社長が企画製造を手掛けたオリジナル製品です。伝統的な伊勢型紙を用いて注染という染色手法による伊勢木綿の製品の数々を企画製造してきた同社ですが、このオファーは他社とのコラボレートにより製品化を実現しました。通常伊勢木綿は35センチから40センチ幅の生地であるのに対してナフキンの標準規格は50センチ。相応しい生地を探していたところ京都の料亭でも使われているリネン生地に出会い、リネンに適した染色方法、手捺染を手掛ける京都の西田染工株式会社に依頼して伊勢型紙の古典柄で染めてもらったといいます。

「お伊勢さんとのご縁をいつもそばに」というコンセプトでSUNKI Brandingオリジナルブランドの商品を手掛ける中村純社長

同じ三重の伝統工芸、伊賀くみひもの職人とのコラボレートによってつくりあげた

「リネンには注染という手法は向かないので、以前Rin crossingの商談会に出展したときに出会った手捺染の西田染工さんにお願いしたんです。出展者同士でお互い同業ではありますが異なる染色方法を手掛ける会社。何かの機会にいつかご一緒できればと話していたのが早くも実現しました」と語る中村社長。一方バッグチャームには、同じ三重県の「伊賀くみひも」の職人に絹で仕立ててもらいました。

目に見えない力に後押しされるように
故郷の伝統工芸をカタチに

そもそも伊勢型紙による事業を始めたのは、20年に一度行われる伊勢神宮の式年遷宮を控えた時期だったといいます。「大手小売業の関西エリアで経験を積んでいたのですが、四国へ転勤の話が持ち上がりました。地元では祭りの奉献団に参加することがとても重要で僕は木遣りを務めているのですが、関西からはその稽古に日帰りできても四国ではできない。だから思い切って伊勢へ帰って商売をしようと決意しました」と中村社長。五十鈴川で海運業を営んでいた曾祖父が集めていた伊勢型紙が大量に蔵に眠っていたのを発見。それを活用して観光客向けに手ぬぐいを販売することからスタートしました。

 

伊勢という独特の土地柄や風習に基づいたデザインを「伊勢型紙」に起こし、伝統的な「伊勢木綿」に注染で、職人の手によって丁寧に染められた「おかげ手ぬぐい」

 

地域の有志で行う式年遷宮の奉献団の記念写真。伊勢独特の地域の結束力と、中村社長の故郷への想いが、伊勢へ帰って起業するきっかけとなった

「SUNKIという社名には、太陽のSUNと気持ちのKI、太陽が昇る二見浦で太陽の気を伝えたいという想いが込められています。屋号の常若屋は再生と循環を繰り返してずっと若さを繋いでいけるようにという意味。伊勢神宮が20年に一度の遷宮で宮大工さんの技術を繋いでいるように、うちも伝統工芸を次世代へ繋ぐお手伝いができればと考えています」

和紙を加工した紙に多様な彫刻刀で丹念に彫り抜かれた「伊勢型紙」は、千有余年の歴史を誇る伝統工芸。友禅やゆかた、小紋柄などを着物の生地に染めるために用いられる

伊勢型紙は緻密な作業が求められる職人技。現在では木綿に注染で染められる型をつくれる職人は高齢化が進み、後継者はほぼいないといいます。「鈴鹿市にいる職人さんたちに、どんどん仕事を出しますから、どうか若い人に教えてくださいとお願いしているんですよ」と中村社長は伝統工芸を絶やしたくないという想いを熱く語ります。

 

伊勢型紙で生地に糊を張り、染料を注いで染める「注染」は、生地の裏側まで染まるため裏表がなく、プリントと違って生地の目をつぶさないため吸水性にすぐれる

「スタートして8年ほどになりますが、御遷宮で神宮さんからお仕事をいただいたり、今回のサミットでも機会をいただいたりと、目に見えない力が後押ししてくれている気がします」

伊勢木綿の特性を生かした
身の回り品を幅広く展開

最上質のワタを一本にヨリ、糊で固め慎重に織り上げられる伊勢木綿で独自に仕立て上げた「oisesan」ブランドのシャツ。着込むほどに風合いが増して肌になじむ

伊勢型紙と同様に、同社がこだわっている伝統技術に「伊勢木綿」があります。吸いつくような柔らかな肌触りが特徴の伊勢木綿は、単糸に紡いだ柔らかい糸を100年前のトヨタ織機でゆっくり丁寧に織り上げるため1日に1反ほどしかできないという貴重な着物生地。伊勢ゆかりのデザインを伊勢型紙で染めた「おかげ手ぬぐい」やトートバッグなど様々な製品に展開しています。なかでもその風合いを生かして熟練の職人が仕立て上げたシャツは、洗うほどに肌触りがよくなり、大手アパレルからもオファーがくるなど、注目を集めています。伝統的な素材を身近なアイテムで次世代へ繋ぐ、という中村社長の想いが様々なカタチとなって広がりを見せています。

細部までこだわったパターンを縫製職人が一枚一枚丁寧に縫い上げる

現代風のデザインから古典柄へ
古くから脈々と続く柄を今の時代に合わせて

現代という時代に求められるモダンなデザインによる製品を次々と企画製造してきた同社ですが、今後はほとんどを古典柄へシフトする予定だといいます。「最初はパンチのあるデザインで注目度を高めたかったんです。入口が古典柄だと引きが強くないでしょう。僕はやっぱり古典柄が一番だと思っています。新作では、昔からある御朱印帳を古典柄ながらも今の時代に合わせてつくりました」と中村社長は言います。

注染の型紙の耐久性は1万枚ほど。貴重な文化遺産である伊勢型紙をデータ化して保存し、現代の型紙職人に依頼して彫り抜いているという

「昔の伊勢型紙には、現代の型紙職人が驚くほどの緻密な手仕事が見られるんです」と語る中村社長

新作の「イセノモン御朱印帳」も伊勢ならではの古典柄で企画。伊勢の天然記念物「横輪桜」、鳥羽市の市花「大和橘」や「伊勢菊」、菅原道真公が伊勢に手植えしたと伝わる「臥竜梅」など

地方創生が活性化しているとはいえ、少子化や若者の流出による空洞化が進む傾向にあるのは伊勢市も例外ではないといいます。特に式年遷宮は神宮だけでなく伊勢市民が深く関わらなくては繋いでいくことができません。地元に仕事をつくれば若者も戻って来るのではないか。地元の伝統工芸はもとより、文化を繋いでいくという使命が、中村社長の想いの根底に強く流れていました。
「Rin crossingとの関わりのなかでは、様々な場所での出展の機会や同業者同士の横の繋がりができました。サミットのオリジナル製品づくりでコラボレートした西田染工さんとの出会いがそうです。伊勢と京都の出会いですね。昔はそんな発想はありませんでしたが、古典と古典の出会いというコラボレートをやってみたいですね。もちろんちゃんと商売ベースにのせられるものを。日本のいいものをコツコツと繋いでいきたいです」と語る中村社長。地元、伊勢にしっかりと根づきながら、伝統工芸の新しい可能性を広く世界へ発信していくことでしょう。

株式会社 SUNKI Branding
(カブシキガイシャ サンキブランディング)

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