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創り手たちのStory

Home > 創り手たちのStory #055 有限会社 丸嘉小坂漆器店

#055 有限会社 丸嘉小坂漆器店:漆硝子【長野】2016/12/22

漆工の新たな用と美を追求し多彩な可能性を拓く〈漆硝子 百色hyakushiki〉


漆とガラスのマッチングで
漆製品を生かすテーブルウェアへ

紅葉もそろそろ見納めとなる時季、深い森に囲まれた木曽谷を車窓から眺めながら訪れたのは、旧中山道沿いの小さな町、木曽平沢にある丸嘉小坂漆器店。趣のある漆器店が軒を連ねる伝統的な町並みのなかで、モダンな看板が目を引くギャラリー&工房です。木曽漆器の始まりは、江戸中期に中山道を往来する旅人相手に日常雑器をつくったことに端を発すると言われています。そんな伝統工芸の本場、木曽平沢で、丸嘉小坂漆器店も70年ほど前から呂色塗りの座卓や大型家具などを手掛け、長年旅館や料亭へ卸してきました。

江戸時代から続く漆工町として、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、趣のある町並みが続く木曽平沢

「漆のように現代の暮らしのなかで扱いにくい伝統工芸は、近代化のなかで衰退の一途を辿っていました。塗りの技法だけでは今後乗り切っていけないのではないかと感じて、漆工の新たな道を模索し始めたのが90年代初頭ころのことです」と語るのは、代表取締役で伝統工芸士である小坂康人さんです。

1994年に漆硝子「すいとうよ」を生み出した代表取締役の小坂康人氏。漆芸一級技能士。伝統工芸士

かつては旅館や料亭をはじめ、大物家具の需要が多く、座卓やこたつ板などを主に手掛けていた

透明感を表す「透き」と、異なる素材が「好い」て一緒になる様を、硝子が日本に伝わった長崎のお国ことばで命名した「すいとうよ」

大物家具はもとより、テーブルウェアとしての漆器など従来の漆製品の未来に限界を感じていた康人さんは、「漆を塗ったガラス製品ができれば、今まで誰も見たことのない美しい商品になる」と新技術にチャレンジ。通常、漆の鏡面仕上げをした座卓は、漆器であれば問題ないもののガラスや陶製の器では表面が傷ついてしまうため、それを何とか解消できないかという思いもありました。座卓のキズ防止にガラス天板を使うアイデアを発展させて1994年に誕生したのが漆グラス「すいとうよ」です。

 

ガラス食器の底面を中心に漆を施し、室で乾燥させてから、電気窯による焼き付けを行って仕上げるため、耐久性が高い

完成までにはさまざまな試行錯誤がありましたが、長野県工業技術試験場とともに研究を進め、独自の技法を確立して製品化に成功。漆の表面を傷つけないという機能性と同時に、ガラス食器としてもこれまでにないデザインの斬新さが評価され、市場でも注目を浴びました。また芯まで乾燥するのに1年はかかるという木製漆器と異なり、漆硝子は焼き付けによる仕上げが可能で密着強度もアップ。自然塗料としての可能性を広げました。


豊富な木材を生かして
自社工房での製造体制を実現

漆硝子の成功後も康人さんのチャレンジは止まりませんでした。もともと木曽は豊かな森に恵まれ、木曽檜をはじめとする林業が盛んな土地柄。テーブルウェアだけでなく、本来主軸であった家具などの木材を生かした製品についても、新たな道の必要性を感じていました。そして外部の協力工場との共同開発で生まれたのが、体に沿って沈むクッション性を備えた通気性のよい木製家具「woodpia」です。

 

これまでの木製家具を構造から見直して考案された、通気性が良くクッション性のある新しい木製家具

こうして、漆硝子、木製家具とこれまでにない新しいジャンルを開拓してきた康人さんですが、息子である小坂玲央さんには、家業を継いでほしいとは決して口にしなかったといいます。
「もともと大学を出てからサラリーマンをしていたんです。でも一度ここを出て外での生活を経験してから、帰省したときに改めて客観的な眼で家業を見ると、漆器の良さがすごくよく分かったんです。それでまずは木工技術を学んでから2年間実地経験を積んで、この家に戻ってきました」と玲央さんが語るように、自然な流れで3代目へ受け継がれる体制が整うこととなったのです。

三代目となる小坂玲央さん。木工家具の技術を学んでから漆芸学院で塗り師としての技術を身につけてから同社へ入社

これまでの木曽漆器は、木地師、塗師、加飾、販売、と分業で行うのが常でしたが、康人さんには「これからの世の中、伝統工芸を続けるからには、つくる過程から販売まで一貫して手掛けなければ生き残れない」という思いがありました。そこで、玲央さんが加わったことを機に、工房を本格的に増築。木製家具を自社工房で製造できるような体制を整えたのです。

天井の高い家具工房。釘を使わず、軸組工法という手法でつくられている

スタッフは全員、木工と漆塗りの技術を身につけた職人。一貫して社内で手掛けられることを基本としている

木製家具をつくるための専用治具も独自に作成。全て手作業で家具を製造する

2009年に工房に玲央さんが加わってから奥様である智恵さんも塗師として入社。その後木工技術を学んだ若手スタッフも増え、社員は7人に。その全員が木製家具を手掛けながら漆芸学院で技術を習得。康人さんを筆頭に、木工職人であると同時に塗師としても作業に従事する職人集団となりました。
「苦労は若いときにしておく方がいいですからね。私自身の経験も踏まえて、今では帳簿も彼らに預けて、二人に任せています」


万華鏡を思わせる
色彩豊かな漆硝子の新ブランドを発信

玲央さんがバトンを受け継いでから手掛けたのが発売から20年以上が経つ漆硝子「すいとうよ」の次を担うテーブルウェアでした。そして2013年、アイテムを大幅に広げ、装いも新たに漆硝子として生まれたのが「百色hyakushiki」です。

かつて「百色眼鏡」と呼ばれた万華鏡をイメージした、色彩豊かなテーブルウエア「百色 hyakushiki」

ロゴデザインは外部のデザイナーと話し合ってクールながらも伝統工芸の上質感を意識したデザインとした

グラスなど盃が中心だった「すいとうよ」に対して、新ブランドではより幅広い料理を楽しむことができる、耐久性を高めた器を目指して技術研究が続けられました。
「日常のなかでもっと食卓にのぼるように使いやすく、かつ魅せる商品としてデザイン性も高めたい」という玲央さんの思いから、開発にあたっては、外部の企画会社やデザイナーと手を組んで、コンセプト、デザイン、ロゴなどトータルでブランディングを行いました。

漆と顔料を混ぜ合わせて多彩な色をつくってガラスに描く工房は、様々な色が堆積して味わい深い空気を醸し出している

 

一つとして同じ模様ができないといわれる万華鏡のように、漆も気温や湿度など環境によって同じ色は出ない。その儚さも漆の魅力のひとつ

塗師の手仕事によって一点一点丁寧に描かれた漆硝子「百色hyakushiki」は、吸い付くような漆独特の質感と万華鏡のような色彩豊かな色使いとデザイン性が魅力。漆のイメージを塗り替える新ブランドとして好評を得ました。

ガラス食器の外側に漆塗りを施すことで、手触りは漆の質感ながらも、内側はガラスのため様々な料理を盛ることができる

 

外部デザイナーのみならず、海外のデザイナーとのコラボ商品など新しい展開も始まっている

また、インテリアライフスタイル展にも積極的に参加。漆塗りの実演を行うなど伝統工芸としての漆の魅力を伝える努力も怠りません。またTVで取り上げられるなどメディアの効果によって注目を集めたり、イタリアの硝子デザイナーとのコラボレート商品開発を手掛けたり、と多様な展開によって販路を好調に伸ばしています。
「Rin crossing主催の商談会ではじまったお取引先もあります。今後も販売に直結する企画や環境があるとうれしいですね」

ギャラリーショップには、遠方からのお客様が直接来店することも多い

「私が子どものころには、この町にも様々なお店があって活気があったんですよ。いま地元の漆器青年部で空き家を改装してものづくりができる場をつくろうと動き出しています。産地が元気になると仕事が増えて人も増え、自ずと活性化していきますよね。私たちもその一端を担えればと考えています」と目を輝かせる玲央さん。まずは地盤を固めるために新しいことを仕掛けてきたものの、漆硝子にとどまらず、ゆくゆくは本来の木地ものにもチャレンジしたいと意欲を見せる丸嘉小坂漆器店。今後の新たな展開にも期待が高まります。

有限会社 丸嘉小坂漆器店
( ユウゲンガイシャ マルヨシコサカシッキテン)

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