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#059 有限会社ツルヤ商店:籐プロダクト【山形】2017/03/24

籐製品の良さに磨きをかけながらデザイナーとのコラボで新ブランドを構築〈籐プロダクト〉


輸入製品の台頭による価格競争から脱却するべく
独自生を追求した「ami」シリーズ

東京から山形新幹線で3時間ほどの距離にある山形市内で、籐製品を手掛けるツルヤ商店。明治40年創業のツル細工製品の老舗です。数日前に降り積もった雪がまだ残る1月下旬、同社のギャラリーショップ兼工房を訪ねました。

山形をはじめ東北の山間部では古くから手仕事が盛んで、同社でも創業当初はアケビや葡萄のツル細工をつくっていました。昭和に入るとより丈夫な素材を求めて、籐を使った乳母車や籐家具などを手掛けるように。当時はハイカラな家具として注目を集め、特に70〜80年代には人気に拍車がかかりました。

下請け製品を手掛けながらも、自社ブランドとして打ち出した「籐源郷」シリーズのスツール[デザイン:会田源司氏]

「籐源郷」シリーズの枕は、通気性がよい上に寝心地もよく、現在でも人気のロングセラー商品

「籐製品が人気だった時期は、職人としての技術が評価されて大手同業者からの委託製造を主に手掛けていました。ところが80年代になると東南アジアの安価な輸入製品が大量に入ってきて価格が下落してしまったのです。価格競争に巻き込まれて同業者の多くが廃業し、下請けの仕事も激減するなか、うちでも自社ブランドをつくらなければ、もはや生き残りの道はないという危機的な状況に陥りました。そんな状況下で試行錯誤してつくり上げたのが『籐源郷』シリーズです」と当時を振り返るのは、同社代表の会田源司さんです。

「自社ブランドの商品を今後も積極的に増やしていきたい」と語る会田源司氏

こうして、下請け体質からの脱却を図り、百貨店とつながりのある問屋との取り引きが新たに始まりました。使い手である消費者に一歩近い問屋とのつきあいのなかで新たなアイテムを提案したりと、徐々に新製品も増えていきます。とはいえ、後を追うように増えてゆく輸入品の価格競争に対抗するのは難しく、90年代後半には再び窮地に陥りました。

「従来のやり方ではもはや差別化は難しい。単に椅子やカゴというモノの形という認識ではなく、デザイン性を高めて独自性のある深いモノづくりをしなければという危機意識がありました。それで県の工業技術センター主催のデザイン開発講座に参加したときに紹介いただいたのが、建築・インテリアのデザインユニット「TONERICO」のデザイナー、米谷ひろしさんでした」

米谷ひろし氏が得意とする直線を基調としたモダンなインテリア「ami」シリーズ

籐と金属を組み合わせることで、スタイリッシュながらも強度を確保したインテリアを実現

こうして、会田さんと米谷さんによる新プロジェクトがスタートします。米谷さんは日本のインテリアデザインシーンを牽引する内田繁氏に師事し、当時独立したばかりの新進気鋭のデザイナーでした。デザイナーとのモノづくりは初めての会田さんでしたが、とにかくこれまでの常識を超えるモノづくりの必要性を強く感じていたため、思い切って米谷さんの力を信じて新プロジェクトの方向性をデザイナーの考えに委ねました。籐工芸の素材特性や持てる技術について伝えるだけ伝え、数年間の試行錯誤を重ねて完成したのが、これまでの曲線的な籐家具とはまったく異なる、直線的な構造を持った籐インテリア「ami」シリーズです。

「ami」シリーズのデザイン性を評価されグッドデザイン賞をはじめ数々の賞を受賞

こうして発表された「ami」シリーズは、2006年には脱衣かごがグッドデザイン賞と山形県のエクセレントデザイン大賞を、さらに2012年には椅子がグッドデザイン賞を受賞し、インテリア業界でも話題を呼びました。2009年には本社工房を移転し、ブランドコンセプトやその価値をアピールするためにギャラリーショップをオープンしました。

ギャラリーショップを新設した新しい社屋では、ロゴタイプも米谷氏によるモダンなデザインに一新


職人の感性を生かした国産製品の良さを
若い世代にも伝えてゆくために

従来の“籐家具”のイメージを一新し、“籐インテリア”として世に躍り出た「ami」シリーズは看板ブランドとしてイメージアップにつながり、設計事務所などに対しての広告塔となりました。とはいえ、籐製品の未来を考えたときに、課題はまだまだ残っていました。

「新ブランドを打ち出したとはいえ、主軸は依然として従来の籐家具『籐源郷』でした。最近では通販カタログの影響もあって、一時よりも持ち直して売上が伸びているほどです。ただ、大きな課題は、この主軸製品のターゲットが高齢者であり、先行きが不安だということです。そしてもう一つの課題は、籐製品はアジアからの安価な輸入品というイメージが定着してしまって、日本の職人の手仕事による国産品の良さをいかに伝えられるかということです」

そう語る会田さんは、籐製品が今後生き残ってゆくためには、デザイン性を追求した若い世代に響くプロダクトを開発する必要性を感じていました。そして『ami』シリーズがインテリア業界への門戸を拓いたように、通販や百貨店といった従来のマーケット以外にも、新たな販路を開拓しなければならなかったのです。

ヤシ科の植物である籐は、熱帯雨林地域のジャングルに自生する生命力の強い植物。断面には無数の穴があり、蒸気で蒸すことで曲げ加工を行う

つくる製品によって一つひとつのパーツごとに治具を手づくりする。曲げ加工をして形をつくって固定し、乾燥させる

 

曲げ加工されたパーツをさらにバーナーで炙って形を整え、完成品に近づける

 

さまざまな太さの籐を曲げたり、割いたりしてパーツを揃え、編んだり巻いたりすることによって製品に仕上げてゆく

現在は会田さんを含む5人の職人で籐製品を手掛ける工房

ショップの奥にある工房へ案内してもらうと、熟練職人に混じって若い職人の姿がありました。
「山形の芸工大(東北芸術工科大学)の学生が、籐を使って卒業制作を手掛けるんですよ。彼はその縁で入社しました。こうした若い感性を生かした取り組みは、今後も力を入れて行きたいですね」と会田さんがいうように、ここ数年で、ライフスタイルブランドのOEM商品の共同開発や、若手デザイナーとのコラボレートによる新ブランドなど、若い世代をターゲットとした新たな動きが、次々と具現化し始めていました。


ナチュラルな風合いを生かした
籐プロダクトの新境地へのチャレンジ

きっかけは、芸工大でデザインを学んだ2人の女性によるライフスタイルブランド「F/style」のOEM商品の依頼でした。次代の暮らしに溶け込む、本物を追求したモノづくりにこだわる2人との共同開発によって2008年に生まれたのは、塗装することが当たり前になっていた籐製品の定石にとらわれず、無垢の風合いを生かす、という原点回帰の発想のプロダクトでした。60年代以前なら当たり前だった籐の無垢の風合いを、なんとか生かしたいという会田さんの想いを、今の感度で表現できる2人がカタチにしたのです。

それ以降も外部デザイナーからの依頼が相次ぐなか、自社ブランド構築への想いもますます高まります。そして、外部デザイナーとともに2年の時をかけて開発に取り組み、自社ブランドの「ハイル」を2016年春、世に送り出すこととなりました。天然素材のナチュラルな質感と、従来の籐かごのディテールを生かしながらデザインされた新製品は、今の暮らしにフィットするプロダクトとして展示会での評価も上々でした。

若手社員がデザインした籐ハンガーは無垢の木肌を生かした新プロダクトのひとつ

ナチュラルな風合いを大事にした製品づくりを発展させた自社ブランド「ハイル」のプロダクト[デザイン:小野里奈氏]

全国津々浦々の魅力を発信し、地方創生へと繋げる新商業施設として虎ノ門エリアの新虎通りにオープンした「旅する新虎マーケット」。[公式サイト:https://www.tabisuru-market.jp

また2017年2月、東京虎ノ門にできた新名所『旅する新虎マーケット』にも同社の籐製品を出品。2020年東京オリンピックへ向けて、地方の市町村が、名所や観光、そして名産品などをアピールする場で、山形の産品として取り上げられています。

ツルヤ商店が手掛ける全プロダクトが一堂に並ぶギャラリーショップは、かつての銀行の建物を改装したもの。ショップの奥には事務所と工房がある[店舗デザイン監修:TONERICOの米谷ひろし氏]

「Rin crossingには2014年から参加していますが、ギフトショーなどへの単独出展は厳しいですから、商談会やテストマーケティングのチャンスには、できる限り手を挙げていきたいですね。こうしたさまざまな発表の場で、私たちの新たな試みを発信することでバイヤーさんに認識していただくことは大切です。今後はECサイトなどの展開にも期待したいですね」と意欲的です。

古くから受け継いできた日本の職人としての技術と、現代のライフスタイルに合うスタイルを読む目線、そして若手に可能性を託すチャレンジ精神で、次代の籐プロダクトを編み出すツルヤ商店から今後も目が離せません。

有限会社 ツルヤ商店
(ユウゲンガイシャ ツルヤショウテン)

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