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Home > 創り手たちのStory #063 村上メリヤス

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#063 村上メリヤス:オーガニックコットン製品【奈良】2017/07/25

古来から続く綿の産地で紡ぐ 「純奈良産」のオーガニックコットン製品


時代の流れとともに変化する産地。
そのなかで下した決断とは

奈良県の北西部に広がり、古くから交通や産業の要衝だった大和平野。その一角を成す大和高田市に、村上メリヤスはあります。大和平野は盆地で雨量が乏しく、少ない水でも育つ綿の栽培がさかんな土地でした。米とともに綿が育てられ、綿の加工は農家の副業に。やがて、綿の生産・加工は大和高田市の地場産業となりました。村上メリヤスも元々、家業として、布団用の綿の製造・卸を明治時代初期から手がけていました。

木造校舎の一部を移築して建てられた工場。現在は家族4人でものづくりをおこなっている

同社代表の村上恭敏氏。10年前にオーガニックコットンの自社栽培やユーザーとのコミュニケーションを重視した直接販売など、経営方針を大きく転換した

戦後になると、海外からの安価な綿の輸入が増える一方で、国内メーカーは作業の機械化を進め、大ロットの大量生産で海外製品に対抗するようになります。そんななか、村上メリヤスは紳士服・婦人服のニットウエアを小ロットで製造・展開する戦略に。店舗でリサーチしたお客さんのニーズを重視し、自社でデザインした同社のニット製品は人気を博しました。恭敏さんの父である前代表の時代には生産量も増え、工場内には素材の毛糸や綿糸がうず高く積み上げられていたといいます。

収穫した綿花は、特注の機械を使い一つずつ棉と種に分けていく

生地を織るのに使う「横編み機」。大小二台あるが、一般的な工場に比べると、いずれもかなり小さいサイズだそう

綿を糸に紡いだもの。同社ではできるだけ綿本来の色をそのまま活かし、製品に加工している

生地は製品の幅に合わせて編むから、無駄がない。失敗してもほどいて再び使うため、製造過程でゴミはほとんど出ないのだとか

しかし、次第に繊維工場の海外移転やファストファッション化が進み、国内の繊維産業にも翳りが見え始めます。一時は300軒近くあった奈良県内の繊維工場も相次いで閉業し、大和高田市のメリヤスメーカーも減少。村上メリヤスもまた、時代の流れのなかで岐路に立たされることとなります。「このままの商売を続けていいのか?」同社を受け継いだ恭敏さんは、40歳を過ぎた頃、ある決断をします。それは、卸の仕事をやめ、オリジナルの製品を自ら販売していくことでした。村上メリヤスでは工程の大半が手作業のため、生産量を増やすのは難しい。それなら、とことん品質にこだわり、商品一つ一つの価値を上げればいい。そして、卸を通さず直接販売することで、流通コストを減らし、自分たちに合ったペースでものづくりをしていこうと考えたのです。そこから、恭敏さんの試行錯誤が始まりました。

工場内に並ぶ10台以上のミシンは、直線縫い、生地の端の処理など、すべて用途が異なる。工程ごとにミシンを移動し、製品を仕上げていく

ものづくりの大半は恭敏さんが担当。新製品のアイデアを型におこしたり、生地を編んだり、縫製したりと、一人何役もこなす


父の言葉で、綿の栽培へ。
ほぼ全ての工程を自社でおこなうこだわり

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工場裏にある綿畑。綿は苗を5月に植え、8月ごろに花が咲く。取材をした6月末には、綿のつぼみが膨らみ始めていた

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「綿の実が開いたタイミングで収穫するのですが、同じ畑でも、日当たりなどの条件で開くのはばらばら。だから9月から12月まで毎日、綿花の収穫作業が続くんです」と恭敏さん

質のいいものづくりに必要なものとは何だろう? 悩む恭敏さんに、先代社長であるお父さんが「先祖がやってたように、まずは綿を育ててみたらどうや」と声をかけました。その言葉をきっかけに、恭敏さんは工場裏の畑で綿づくりを始めます。「環境に負荷をかけず、なにより肌にやさしい。これこそ、求めていた素材じゃないか」そう思った恭敏さんは、農薬などの肥料を全く使っていない土壌に、無農薬での栽培をするいわゆる「オ―ガニックコットン」を育てていくことを決心したのです。こうして、自ら育てたオーガニックコットンを自社で加工する「純奈良産」の商品が生まれることとなりました。

オーガニックコットンとは、認証機関に認められた農地で、栽培に使われる農薬・肥料の厳しい基準を守り育てられた綿花のこと。村上メリヤスでは、自社畑での収穫量は多くないため、アメリカ産の認証済みのオーガニックコットンを使った商品づくりにも力をいれている

自社産のオーガニックコットンを使用したおくるみ「十月十日布」(とつきとおかふ)。化学処理を製造過程で一切行っていないため、赤ちゃんが口に入れても安心

同じく自社産のオーガニックコットンを使用したベビーシューズ。十月十日布と同じく「純奈良産」だ。すべて手縫いで、ひとつひとつていねいに作られている

「やりがいがとっても大きいんです」と笑う恭敏さんの妻、令子さん。商品企画や検品などを担当している

たった四人の家族だけで、綿の栽培から加工、販売まで。並み大抵の労力ではないように思えます。しかし、村上家のみなさんの表情は、不思議と明るいのです。その理由はいったいなんでしょうか。同社は商品を直接販売するため、毎週末、関西圏や名古屋、東京などのファーマーズマーケットやマルシェに出店しています。「自分たちがブースに立ち、お客さんと積極的に話すんです。製品に関する相談もその場で受けて、『袖を短くしてほしい』のようなちょっとしたお直しもお受けするんですよ。お客さんの喜ぶ顔を直接見られるのが、モチベーションになるんです」と、令子さんは笑います。ユーザーの声を聞くことは、新しい商品のアイデアにもつながります。令子さんが聞いた「こんな形の商品が欲しい」という声をすぐさま工場へ持ち帰り、恭敏さんが試作をする。そうした流れで生まれた商品はたくさんあるんだとか。「現場でものづくりをしているという感覚が強いです。だからこそ、今の方がうんと充実感があるんです」

お客さんの要望から生まれたという七分袖カバー。リブ編みでずれを防止するため、締め付け感のない快適な着け心地

オーガニックコットンだから長時間お肌につけても安心なマスク。そのため、お湯に浸し、パック代わりにお風呂で使う人もいる

新商品のアームショール。肌寒いときに羽織るだけでなく、半身浴の際に使う人もいるそうだ

オーガニックコットンの商品を作り始めたころは、イベントに出品しても「普通の綿と何が違うの」という声がありました。しかし、2010年ごろから、明らかにオーガニックコットン製品を求める人が増えてきたと感じるそう。生地にナイロンをできるだけ使わないなど、肌触りや着心地にも徹底してこだわり、暮らしを優しく包み込むようなものづくりを目指しています。


小規模だからできる、効率のよいシステムを
村上メリヤスの挑戦は続く

「家族だけでオーガニックコットンを栽培し、オリジナル商品を作っている会社は日本でうちくらい」と胸を張る恭敏さん。会社の規模が小さいなりに効率のよいシステムを作り、お客さんの声に答えていきたいといいます。そして、業界の動きを知る上で、Rin crossing主催の展示会や商談会は重要な場所。折にふれ、自分たちのものづくりを見つめ直すきっかけにもなっています。

お客さんの声を大事に、日々、新しい商品が生まれている

綿の栽培も、製造も、販売もすべて自分たち。余計なコストがかからず、手頃な価格で製品を提供できます。これからもお客さんとのコミュニケーションを絶やさず、長いお付き合いの方をどんどん増やしていきたいと、恭敏さんは言います。環境にも、肌にもやさしい、オーガニックコットンを使った村上メリヤスのものづくり。これから、もっと多くの人に必要とされていくに違いありません。

村上メリヤス
(ムラカミメリヤス)

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