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Home > 創り手たちのStory #066 漆工房攝津:川連漆器【秋田】

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#066 漆工房攝津:川連漆器【秋田】2017/10/25

お客さんの声を聞いて、使う人に寄り添って作る 蒔絵技術を生かしたオリジナル漆器


秋田県湯沢市の文化と、豊かな自然が生んだ
丈夫で実用的な川連漆器

木製、陶磁器製、金属製…。様々な器の中でも、艶やかでハレの日に使うイメージが多い、漆器。漆器とは、ウルシから採取した樹液を加工した「漆」を、木や紙などに塗り重ねて作る工芸品で、ハレの日以外にも日常用、また、装飾品としてなど多様な形があります。今回取材した秋田県の南端・湯沢市に受け継がれるのは、川連漆器と呼ばれ、そのルーツは、約800年前の鎌倉時代にこの地の城主だった小野寺重道の弟、道矩がこの地で取れる豊富な自然と漆を利用し、武具に漆を塗らせたのが始まりと言われています。

藍染で染められた暖簾がお出迎え

蒔絵を行う部屋。この部屋以外にも塗りの部屋など、工程で部屋が分かれている

川連漆器の特徴は、堅牢で実用的であることと、見事な艶を出す仕上げの方法。そんな見ているだけでもうっとりとする漆器に、金粉や色のついた漆で絵を施す蒔絵師の家に、漆工房攝津の3代目、攝津広紀さんは生まれました。昭和15、16年頃に広紀さんの祖父が立ち上げたという工房は、約70年の歴史があり、「攝津で」と名指しで依頼を受けることも多いそうです。しかし「初めから継ごうと思っていたわけではなかったんですよ。昔は絵も下手だったし。しかしいざ進路を考えるというタイミングになって、初めてこの道に進もうと決心しましたね」と広紀さん。その後石川県の研修所や師匠の元で漆や蒔絵について勉強し、技術を習得。「30になったら戻ってくる」という宣言通り、30歳の年に、3代目としてここ秋田県湯沢市に戻ってきました。

お話を伺った、漆工房攝津3代目・攝津広紀さん

梨地用の金粉。シーンによって金粉も使い分ける。最低でも20種類くらい常備

この白い粉は、銀。金に比べて安価な銀は量産型で購入し使っている

手作りで作った蒔絵用の粉筒。指で振動を与えながら振り掛ける

少しずつ仕事の依頼はあったものの、時代に伴いライフスタイルが変わり、蒔絵の仕事依頼は減っていったそうです。また、今まで依頼主との間に入る業者さんと仕事をしていたため、新作を作っても、こちらから積極的に見せる場所がない。そんな事態を打破するため、地元の同世代のメンバーで自分たちの発表する場を作ろうと「漆人五人衆」が立ち上がりました。活動を始めて今年で約15年。この活動をきっかけに直接お客さんと話す機会が増え、使う側の声をより多く聞くことで、広紀さんの作品がだんだんと変わってくるようになりました。

漆でできた棗に、蒔絵技術を使用。上部と下部のデザインがピタリと合う

桜を描くなど、女性が好むデザインや色味の加飾も

蒔絵の技法で、貝をちりばめた「螺鈿」。キラキラと輝く

絵を描くときの筆。何十年も使ってきたという歴史を感じさせる

さまざまな太さ、堅さがある筆。きれいに手入れされている

何十種類も小分けされた絵を書く際の漆。今か今かと使われることを待っているよう


蒔絵師である自分にしか
できないものを

お客さんの声を直に聞いているうちに、「こういうベースになる漆器があったらいいのに。俺だったらこうするけどなぁ…」と思い始めました。実際に、漆を塗る前の木の器を作る木地屋に自分で設計した設計図を持っていってみると、金型代や最低ロット数などの問題点がありました。また木地ができたところで、塗る作業が入り、これも外注するとなると、実現は困難に。しかし、「良いものを届けたい」という一心で、大変な道のりだけれど「出来ることは全て自分でやろう」と、広紀さんはベースから自分でつくることにしたのです。過去に漆を勉強していたことも制作の後押しとなりました。

複雑な塗りの過程が分かるように、現在見本を製作中

さまざまな漆のベースになる生漆。独特な匂いで、トロッとしている

木地に2回漆を塗ったもの。これから様々な工程を経て「KOBACHI」となる

漆器作りの工程は、「木地作り(お椀の形に木を切り出す)、下地作り(木地を丈夫にする)、塗り、加飾」と4工程に大きく分かれます。川連漆器の特徴の1つ、“丈夫さ”は、特にその丈夫さから、「堅地仕上げ」と呼ばれています。攝津では、川連漆器の伝統を守りながらも、蒔絵の技術を応用した銀地シリーズや、秋田米あきたこまちの籾殻を使ったみのりシリーズなど新たな商品、技術開発に取り組んでいます。

塗りの工程はこの部屋で。塗って乾くのを待ち、さらに塗って、研いで…。道のりは長い

漆を塗る際に使うハケ。使い込んだ跡が職人の手作業の温かみを感じさせる

木地からベースとなる漆器ができるまでに、早くて3ヶ月かかります。時間をかけて出来上がった器を見ているうちに、「蒔絵師としては、ご飯を食べ終わった時に、ふと手元の器を見て、ここに花があったら綺麗かな。などと考えて装飾をしているけれど、こだわったベースとなる漆器を見て、この漆器には絵を施す加飾はない方がいいかも、とも思うようになりました。お客さんの声から作品の幅が広がりました」と広紀さんは言います。絵こそ描かれていないものの、蒔絵の技術を生かした広紀さんならではの作品が次々と生まれていきました。

平成20年全国漆器展で経済産業大臣賞を受賞した、「銀彩ぐい呑み」

あきたこまちの燻炭を用いた器「みのり」。金属のスプーンなどでも傷を恐れず使えるように、より硬く丈夫に仕上げられている


もっと多くの人の元に
漆器や蒔絵の良さを届けたい

この地に戻ってきて18年。「ここ数年でようやく今の形に落ち着ついた」という漆工房攝津は、新たな作品作りへ、新たな販路開拓へと動き出しています。漆工房攝津がRin crossingに参加したのも、1年半前とまさにこのタイミング。「Rin crossingで色々な人と知り合えました。未だにその人たちとはつながっていて。蒔絵や漆の技術協力の話が実際にあり、とても嬉しかった」と広紀さん。

ハレの日用、特別なもの、アクセサリーは蒔絵の技術をふんだんに生かして

試行錯誤の末生まれた葉巻ケース「OIRAN」

「器を選ぶとき、その選択肢に漆器も入れてもらえれば嬉しい」と語る広紀さんの元には現在、既存の商品の購入希望から、特注品、古い器のリペアまで幅広いオーダーが来ています。長年に伝わる技術を生かしながら、今と昔の良さを柔軟に取り入れ、一つ一つ丁寧に作る漆工房攝津のものづくりの姿勢から、老若男女関係なく、新しく使われていく漆器の未来を感じることができました。

祖父の代から受け継がれた家紋の型紙は、攝津家の家宝。歴史的なことがわかる財産

漆工房攝津
(ウルシコウボウセッツ)

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