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創り手たちのStory

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多様な暮らしを灯す、和ろうそく 株式会社 小大黒屋商店(福井)

2018/2/23


北陸・福井県の土地に根付く
「日用品として」の和ろうそく

「福井城下一の繁華街」。戦前そう呼ばれた都から北陸を結ぶ街道、旧北国街道に面した通りに、小大黒屋商店はあります。創業時の正確な記録こそないものの、反物を作る機屋として商売をはじめ、江戸時代(慶応年間)には暮らしの必需品であり日用品として、和ろうそくと薫香の製造と販売、そして灯明油のおろしを始めました。当時和ろうそくは、「灯り」として、そして「仏事で使うもの」としての大きく2つの役割を持ち、人々の暮らしに寄り添う日用品として使われていました。

仏具店、呉服店などお寺にちなんだ商店が多い、福井市呉服町通り

棒型と、いかり型があり、大きさは、0.5号から1000号まである

しかし時代とともに、照明としての役割の中心は電気へと変化していきました。その反面、仏事としての和ろうそくは、特に北陸を中心に根強く残っており、今でも日用品として売られているほど。その背景には、和ろうそくと相性の良い「金箔仏壇」を家に置く所帯が多いという、北陸特有の仏教文化が関係しています。実際に、小大黒屋商店でも約9割以上は仏事用として作られています。

赤い和ろうそくは、おめでたい法要や儀式などに用いられる

大学を卒業したのち、関連会社への勤務、同社での作り手・売り手を経験した背景から多視点を持つ、専務取締役の大津竜一郎さん。

そんな時代の変化の中、先陣切って新たな取り組みを行っているのが、小大黒屋商店7代目の大津竜一郎さん。「今までは、福井だけで商売を行っていたんですが、20年くらい前から次第に広域化していきました。例えば、福井で育った住職さんが、他の地域に移られた際に連絡を頂いたり、和ろうそく屋が廃業するとその地域から人づてに連絡を頂いたり。またインターネットが普及したことで、販売チャンネルも多様化してきました。時代が変わる、そのタイミングで、会社の理念を形づくった「あかりと香りの文化と伝統を守り、育てる」に立ち返りました。時代は変われど、和ろうそくは『日用品』であってほしい。その為に伝統は守りつつも、時代にチューニングを合わせながら、和ろうそくを作っています。」


植物由来の優しい原料と「型掛け製法」で
伝統を形にする

そもそも、ろうそくは大きく分けて「和ろうそく」と「パラフィンワックスで作る洋ろうそく」の二種類があります。小大黒屋商店で作る和ろうそくの原料は、櫨(はぜ)の木の実の外殻を絞った油脂分から精製した蝋(ろう)、「木蝋(もくろう)」か、ヤシの実を搾ったヤシ油(パーム油)を原料にした、「植物性油脂」の2つ。「日用品として使ってもらえる価格におさえたい」という気持から、9割は植物性油脂を使っています。和ろうそくの特徴は、風が吹いても消えにくく、炎が美しいこと、そしてパラフィンワックスで作るろうそくに比べて、火をつけた際の油煙(ゆえん)が少ない為、仏壇を痛めにくいこととされています。和ろうそくの方が価格は高いものの、北陸特有の「金箔仏壇」のお洗濯(金箔の貼り直し)のことを考えると、結果、和ろうそくを使う方が10年以上長持ちするので、経済的なのです。

木蝋の原料となる櫨の木の実

「和ろうそくは芯づくりから」と言われる和ろうそくの作り方は、和紙を使って芯づくりを行い、蝋を特製の型に流し、固まったらはみ出した部分を切り取り、型からろうそくを外す。そして成形・仕上げを行ったのち、検品・梱包をして完成です。型を使わない「手掛け」という方法もありますが、小大黒屋商店では木の型を使う、「型掛け製法」で行われています。

和紙を棒状の串に巻き蝋で固める。その外側に灯心(とうすみ)と呼ばれる藺草(いぐさ)を巻くことも

「型掛け製法」を行っている理由は、「和ろうそくを作る際、北陸では伝統的に木型をつかった製法を行っていますし、生産効率や価格として流通させようとすると、やはり木型になります。木型のおかげで、日用品としての和ろうそく文化が形付いて、残っているという、ゆるぎない自負があります。」と大津さん。そんな木型も完成するまでには数年かかる為だんだんと減り、鉄型が増えているそう。小大黒屋商店では木型を自製し、木型の和ろうそくを後世に残す努力を続けています。

出来上がった芯をまっすぐ木型に装着していく

下型、本体、上型という3つの型を合わせ、蝋を流し込む

固まったら「お尻」を切る。固まるまでは小さいもので20分くらい(1号サイズ)

蝋を切る為の包丁と、空洞を確保するための桐

最後に、下部分の空洞を確保する

そんな大津さんに一つの転機が訪れたのは、20年位前に東京の百貨店で開催された物産展に出店した時のこと。和ろうそくを見て「これ、何に使うんですか?」と真剣にご年配の女性に聞かれたことだったそうです。「いちから説明しないと伝わらないですし、そもそも和ろうそくを使う文化がない地域があることを、実はそこで初めて知りました。福井では当たり前のものが、当たり前でない。今考えればそんな当然のことに、その時初めて気がついたんです。」と大津さん。この体験をきっかけに、「和ろうそくをもっと伝える」ということも意識していきました。

出来上がりから出荷まで、3か月ほど寝かせる。この一手間で、炎がきれいになる、蝋が垂れにくくなると言われている


守ること、挑戦すること
時代とともに作る、新しい形

和ろうそくを伝えること、そして新たな和ろうそくを作ること、また、木型の技術を残したいと思っていた大津さんは、2010年に福井県の創業支援事業「ふくいの逸品創造ファンド」を知り申し込んだことをきっかけに、制作の幅が広がっていきます。またそのタイミングで、今一度全てを見直すほどの出来事、東日本大震災が起こりました。「ろうそくを送ってほしい」というたくさんの依頼がありましたが、和ろうそくの場合、燭台がないと安定して使ってもらえないというのと、余震が続く中で本当に送って大丈夫なのか、という葛藤に苛まれました。そしてその日から、「安心・安全に使ってもらうにはどうしたらいいか」ということを強く思うようになります。すべての背景が影響しあって、2012年に「灯之香(ほのか)」という和ろうそくが出来上がりました。

GOOD DESIGN AWARD 2013を受賞

灯之香のコンセプトは「和×香×灯」。和ろうそくの良さを継ぎ、香りとデザインで時代に合わせ、かつ、できるだけ安心・安全に使ってもらえるものを作りたいという思いが形になったものです。また、デザイナーに入ってもらい共同で作るという、同社初の取り組みでもありました。様々なアイディアが出る中、「なぜつくるのか」という根本の部分を、8か月間位メンバー全員で頭をひねり続けました。

外側が燃え残って、内側が燃え沈み溶けない範囲での最小限の大きさ。周囲に越前和紙が施されている

灯之香以外にも続々と新しい商品が生み出されています。その一つが、福井県鯖江市のものづくり集団「TSUGI」とのコラボ商品。「あれだけ頑張っていたら何か手伝いたくなる」というTSUGIの新山直広さんの熱量に応えるように、2017年「絵ならべろうそく」をリリースしました。普通一本で成り立っている絵ろうそくですが、7本並べて一つの商品になるというもの。また、2018年2月には「おみくじろうそく」という次の商品をリリースしました。若い人の感性が着実に和ろうそくに入ってきています。

夏は花火をモチーフに。使うのが勿体無い一品

春の桜のイメージは、ギフトとしても、お祝いとしても人気

「伝えること」にも注目していた、小大黒屋商店は、2014年からRin crossingに参加しています。「Rin crossingは、ソフトの部分のアドバイスが手厚いことが嬉しいんです。作ることに一生懸命になり、売ることに関してはそこまで気が回らないことが多いので、アドバイザーやバイヤーの方などの何気ない一言がとてもありがたいです。すぐに形にならずとも、いろんな縁や輪が広がっていることを実感しますし、展示会に出ることで改めて「知ってもらうこと」が大切だということ、そして10年後20年後どうありたいか、どういう存在でありたいか、そういう根っこの部分を考える時間が増えました」と大津さんは言います。

小大黒屋商店の中には大黒様の木彫像が

「次の世代にどうやってバトンタッチしていくかを考え始めた」という大津さん。子供達が継ぎたいと言ってもらえるような素地を作り、次の世代が20年30年後も食べていける、もうひとつの柱を作っておかなければ、という気持ちだそう。高度成長期にろうそくの元となる木蝋が手に入りづらくなった際も、今現在、ライフスタイルが変わっていく中でも、「和ろうそくの伝統を守り育てていく」という気持ちの下、ものづくりを行っている小大黒屋商店。文化というのは、実直に向き合い、変化しながらも奮闘する中で、息づいていくものだと感じました。

株式会社 小大黒屋商店
(カブシキガイシャ コダイコクヤショウテン)

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