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大切な日や機会に持ちたくなる「つづれ織り」 株式会社 清原織物(滋賀)

2018/3/23


主に「ハレの日」「ハレの舞台」を彩ってきた
伝統工芸品としての織物

カタン、カッタン、カタン…ザザザザッ、ザザ…。工房内から心地いい音が響いている株式会社清原織物は、滋賀県の南西部に位置する守山市に本拠地を構え、約4千年前にエジプトで生まれた「コプト織」が起源と言われる指先の芸術、「つづれ織り」という織物を制作しています。明治6年に創業して以来、結納などの儀礼的な贈答の際に使う「掛袱紗(かけふくさ)」や、舞台の顔でもある「緞帳(どんちょう)」、個性を表現出来る帯「袋名古屋帯(ふくろなごやおび)」など、大切なシーンを彩る織物として重宝されてきました。清原織物のつづれ織りは、滋賀県の伝統工芸指定を受けているほどです。

細かく丁寧に。すべて手作業で織られていく

つづれ織りとは、ピンと張った縦糸に様々な色の緯糸(よこいと)を折り返していく織り方の技法のひとつ。「指先の芸術」とも言われる所以は、つづれ織りの中でも爪をヤスリでギザギザに磨き、緯糸を搔きよせて織り上げていく「爪掻本綴(つめかきほんつづれ)」と呼ばれる技法の姿から。爪を使わず織っていく方法もあり、絵柄や好み、予算などで織り方を変えて作っています。

松の微妙な色合いを表現することができるのも、高度な技術を持つ職人だからこそ

複数の機織り機が並ぶ。女性の職人が多い

「現在滋賀でつづれ織りを作っているのはうちだけなんです。時代と共にどんどんと減っていく中、清原織物がやっていけているのは、祖父・清原岩次郎が『人に投資』してくれていたおかげだと思います」そう教えてくれたのは、清原織物11代目の清原聖司さん。バブルの絶頂期、多分に漏れずつづれ織りも飛ぶように売れていました。そこでの利益を私欲で使うのではなく、いろんな田舎に行っては、社務所などにおばちゃんたちを集めてつづれ織りを教える、その費用にしていたそうです。「祖父が人の育成に力を入れていてくれたおかげで、高度な技術を持った職人さんたちが今もここで織ってくれている。本当にありがたいことです」

4年前に同社に入社。新たなブランドを立ち上げたり発信力を強めたりと、幅広い活動を行っている

現在清原織物で製作しているものの約8割は、昔から作っている「掛袱紗」や、「袋名古屋帯」です。その他、僧侶の衣服でもある「袈裟(けさ)」や、「緞帳」、そして文化財の復元などの仕事をすることもあります。大きいサイズだと、過去に幅が20mを超える大作を作成したことも。複雑なもの、ある程度のサイズよりも大きなものとなると職人さんの技術や設備などがないとできないので、「清原織物に!」と声がかかることも多いといいます。大きいもの、複雑なものだと数ヶ月~一年かけて、一つのものを織り上げていきます。

表面を祖母が、裏面を孫が使った、という話があるくらいしっかりと織られている帯

左が爪を使わず織ったもので、右が爪を使って織ったもの。同じ松の絵柄でもここまで表現に幅が出てくる

重なりやかすれた部分、曲線などは織ることが難しい。熟年の技が光る一品


自然なグラデーションを生み出す職人の「感覚」が
表現の厚みを増す

つづれ織りができるまでの工程には幾重もの「準備」が必要不可欠です。まず受注者がいて、絵描きさんが原画を作り、その絵をもとに配色をし、どの色の糸をどれくらい使うのか割り出します。見合った糸を用意できたら、機織りに縦糸を固定して、緯糸を通すための道具「杼(ひ)」または「シャトル」と呼ばれるものにそれぞれの色の緯糸をセット。こうしてやっと織りだすことができるのです。

爪は毎日朝と夜に磨く。左手の中指も右手も中指もギザギザしている

下絵を確認しながら「シャトル」を縦糸にくぐらせ絵を描いていく

原画を反転させて下に当てているので、裏側から織っているイメージだ

つづれ織りを織る際に必須のアイテム「シャトル」と「すじたて」。使い込まれた色合いが味わい深い

絵柄の自然なグラデーションを生み出すために、糸にも技術が隠されています。例えば茶色のグラデーションを作る際、微妙な色合いを出すために、薄い茶色の糸と濃い茶色の糸をそれぞれ半分にほどき、違う濃さの二つの糸をより合わせて一本の糸を作ります。そうしてできた糸を「杢糸(もくいと)」と呼び、この糸作りの技術を「割杢(わりもく)」と言います。より豊かな表現を生み出すために、職人自ら糸を(色を)作りだすのです。原画を確認しながら、「このあたりから緑を入れていこうか」「ここはもう少しかすれた感じを出そう」などと織る人の技術と感性で織り出されていくつづれ織り。丁寧に手織りしていくため、特有の味わい深さが生まれ、ひとつとして同じものができないのです。

割杢によって生まれた糸。絵柄に入ると絶妙な色合いを作り出す

松葉、ねずみ、薄茶など色ごとに分けられた糸たち

「爪掻本綴」独特の、ザザザ…という爪と糸が擦れる音が聞こえてくる


多くの方につづれ織りを知ってもらいたい
日常に寄り添う、新たなブランドの挑戦

「結納離れと言って、結納そのものをしない人も増えているし、おこなったとしても簡素な形だったり。また、着物離れも進んでいて、舞台に緞帳を作らないところも少なくなくなってきました。つづれ織りの歴史に携わる一人として、この織物を残していきたい、伝えていくためにはどうしたらいいかと考え、特別な日だけではなく、日常に寄り添う、「新たなつづれ織り」の商品を作ることにしました。ブランド名は『SOHACHI』。清原織物の祖先・清原宗八の名前からと名付けました。」と聖司さん。英語表記になった背景には、つづれ織りが海外から日本に伝わってきたように、いつか日本から海外へとつづれ織りを発信することができれば、という思いが込められています。

工場横にできた、洗練されたショールーム

『SOHACHI』のプロダクトを考えている時に、Rin crossingのことを知りました。今までは展示会などには出たことはなかったのですが、急遽『SOHACHI』のプロトタイプを作って応募することにしました。その際、新商品を一から作るのではなく「いまあるものを見直す」ことからはじめ、まず名刺入れからスタートすることにしました。今の時代に合うものであること、そしてビジネスシーンでも使いやすいようにとシンプルなものにしました。シンプルにした分、日本の伝統色を使ったり、使いやすい黄金比を採用したりと、色や形にはこだわりました。そうしてできた『SOHACHI』を見ているうちに、ふと、「気づかないうちに滋賀の自然に影響を受けてものづくりをしていたことに気がつきました」と聖司さん。「毎朝通勤する時に琵琶湖沿いを必ず通るんです。毎日空の色も湖の色も天気によって違うので、その表情を毎日何気なく見てきました。いままで全然意識してなかったけれど、できたものの色合いを見たら。滋賀の穏やかで豊な環境からインスピレーションを受けていたなと感じたんです」

導き出した黄金比「1:1.618」でできた名刺入れ

異素材の生地と二重に重ねることで「かさねの色目」を表現

使わなくなったシャトルは、同社が行うアップサイクルのひとつとして「シャトルのマグネット」へと形を変える

名刺入れの次は、夏用のつづれ織りの変化組織「絽(ろ)つづれ」という、ちょっと透けている涼しげな織物に注目した聖司さん。「この透ける感じがいいなと前から思っていて、これを『絽つづれ』というよりも、『テキスタイル』として捉えたら面白いだろうなと思いました。手織りで作っているので縞の間隔や太さも自由にできるんですよ。この生地で蝶ネクタイを作りましたが、今後は生地売りなどもできないかなぁと考えています。また、元々清原織物がハレの日のものを作っているので、そっちの方でもう少し時代と空間にフィットしたものを今後やっていきたいと思い、試行錯誤中です」

様々なピッチと太さで縞を入れることができる。これも手織りの強みだ

ショールームに飾ってある、つづれ織りでできたタペストリー

古き良き技術はそのままに、今の時代に合わせて形を変えていくことで、「つづれ織り」そのものの存在を知ってもらう。そして使ってみて良さを実感し、その感動を誰かに伝え、新たなファンへと繋がっていく。ゆっくりかもしれないがしかし確実に、つづれ織りの輪は世界に広がっていると感じました。

株式会社 清原織物
(カブシキガイシャ キヨハラオリモノ)

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