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創り手たちのStory

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伝統工芸が息づく町・金沢から生み出す、一味違った「お針山」 株式会社 ヒロ(石川)

2018/4/25


代々受け継いだ縫製の技術を使って、
暮らしの中に「本物の良さ」を提案していく

江戸時代の城下町の面影が今でも残り、風情ある街並みを有する、石川県・金沢市。金沢を統治した、代々の加賀藩主が文化事業を推奨したことから、伝統工芸や伝統芸能が数多く受け継がれています。そんな土地で約85年前に祖母が足踏みミシン一台で縫製の仕事を創業したという歴史を持ち、脈々と受け継がれた縫製技術を受け継いでいるのが、株式会社ヒロです。今では洋服の製作だけでなく、縫製のプロだからこそ作れる小物など、巧みな技術を使った様々な商品展開を行っています。

山中塗の器で作られた一寸法師をモチーフにした針山「針物語〜一寸法師〜」

器も、針山も様々な組み合わせがかわいい、九谷焼の針山

会社の横に併設された工場には、様々な依頼に対応出来る特殊なミシンが複数置かれている

創業者の祖母、そして継いだ父。生まれた時から縫製の現場は身近にあり、「小さい頃から洋服だけでなく、パン作りや陶芸など、ものづくり全般が好きでした。なので自然と、いつかは継ぐと決めていました」と話すのは、今回取材を受けてくれた、株式会社ヒロの代表・大沼洋美さん。進学、他社での修行を終え、家業の一員になった数十年前は、大手アパレルメーカーの縫製の仕事を受けて縫う賃加工を中心に行っていました。しかし次第に縫製の発注が海外へと移ったり、納期の短縮や加工賃の値下げなど、縫製業界は「今まで」とは違う大きな変化の時代へと突入していきました。

学生時代オーストラリアに留学するなど、昔から活動の場を海外へと開いていた大沼洋美さん

大沼さんを取り巻く環境も多分に漏れずきつい状況になっていく中で、縫製業界の課題や作り手のあり方を今まで以上に考えるようになります。「縫製加工料を仕事に応じてきちんとお支払いできるようにしたい。待っているだけではなく商品を提案したい。そんな思いから、いつかはオリジナルブランドを立ち上げたいと思っていました。父の運営する会社が合併することになった約9年前に、大沼さんは『株式会社ヒロ』を引き継いで、オリジナルブランドの制作を始めました。そして約5年前に、依頼を受けて同じものを複数作る“賃加工”の仕事をゼロに切り替えました。しかしいいものを作る技術はあるものの、販路開拓をしたことがない。数年間続いた“種まきの時代”は、本当に苦労しました」と大沼さんは当時を振り返ります。独立し、「ヒロ」ならではのオリジナル商品とは何かを模索する中、自然と地元金沢の伝統工芸によるコラボ商品が生まれていきました。

オリジナルブランドとした初めてリリースした、能登のちりめんを使った「DECO-T(デコ・Tシャツ)」

ひょんなきっかけから生まれた、九谷焼の針山は、驚くほど反応があったそう


「日本のものづくり」のムーブメントに乗って
新たな道を切り開く商品が誕生

2010年に誕生したオリジナルブランド第一号は、能登のちりめんを使った「DECO-T(デコ・Tシャツ)」。一見簡単に作れるように見えますが、伸びる素材と、伸びない素材をあしらえているため、縫いずれが起きたり、洗えば洗うほど、それぞれの布の特徴に差が出てきて服が突っ張ってしまいがちです。そのためTシャツとして成立させるには高い技術を要しました。そんな苦労して生み出した一品は、企画力と製品力が評価され、2011年に「金沢ブランド」の大賞を受賞。その後も100人100様、いろんな着方ができるというショール「100YOUショール(ひゃくようしょーる)」を発表していきますが、大きな変化が生まれたのは、金沢の伝統工芸・九谷焼を使った針山を物産展に置いてみたことからと言います。「ある日母が九谷焼のお猪口を捨てるというので、勿体無いと思い、針山にして物産展に並べてみました。すると、洋服よりも売れて。在庫がなくなっても発注が続くため、九谷焼を作っている知り合いの窯元さんに相談したら、協力してくださることに。洋服とはまた違う、新たな縫製の可能性を感じました」と大沼さんは話します。

一つ一つが手作りで作られ、今では年間1000個以上作成している

最後に程よい力で、キュッと締めるのがポイント

針を入れる袋もこだわりの素材とサイズで手作りされている

このケースへの針の「刺し方」もある、というほどのこだわり

そして近年、日本のものづくりが今まで以上に注目を浴びるようになると、その時すでに「九谷焼の針山」や「小さなお針箱」シリーズなどがリリースされていたため、一気に「ヒロ」のものづくりへの注目度が加速していきました。「うまくタイミングに乗れたんだと思います。縫製業界の課題や、オリジナリティ、そしてその中でも祖母の時代からずっと育まれてきた技術と思いを続けていきたいというのが一番の願いだったので、いろいろな人に助けられ、少しずつ軌道に乗るようになって嬉しかったですね。父から口すっぱく言われていた“真心のものづくり”の真意がようやくわかった気がしました」と大沼さんは微笑みます。買い手の顔を想像して糸一つでも徹底的にこだわる、そんな代々続くこだわりの商品は、石川県の「いしかわ産業化資源活用推進ファンド」や「JAPANブランド育成支援事業」の後押しを受け、国内外問わず反響を呼ぶようになります。

糸は基本的に「エースクラウン」の60番か80番を使用

色が鮮やかで艶やかな糸のストックは何百種類にも及ぶ

こだわりの工具は、六角の目打ちと、新潟から取り寄せている糸切りばさみ


積極的な海外販路開拓と、
これからのものづくり

海外の販売販路開拓も早い時期から積極的に行っている大沼さん。きっかけは、「金沢ブランド」の大賞の副賞だった100万円の賞金を得たことから。そのご縁でファッションジャーナリストの生駒芳子さんがセレクトされていた「工芸ルネッサンスプロジェクト”WAO”」に選ばれ、パリとニューヨークに行った際「展示会での反応や、発想の違い、元々学生時代に留学をしていた経験もあって、海外で勝負していきたい、刺激を受けたいと思うようになりました。その時から、賞金を有効的に使い、できるだけかかる経費を安くしながら海外の展示会へ出展しています。海外だけでなく、2015年にRin crossingにも登録させていただき、制度を利用させてもらいながらできるだけ多くの出会いとチャンスを自ら作り出すようにしています」

ヒロオリジナルの針箱「小さなお針箱」はギフトとしても人気

九谷焼のオリジナルの原画から、作家さんに手書きで絵を新たに起こしてもらい、「ヒロ」オリジナルの九谷焼のディレクションまで行っている

サンフランシスコの取引先から「鉛の入っていない九谷焼を」と注文を受けて生まれた、針山とお皿、針が入った「おか持ちセット」。取り外して晩酌セットにも変わる

「今後、EUが輸入規制を緩和するようになったら、もっと日本の素晴らしい繊維製品を海外に出していきたい。また、一寸法師やかぐや姫ときたら、桃太郎の針山も作りたい。そして九谷焼の柄で作った布で着物や洋服を作りたい!」など、湧き水のように溢れるアイディアに驚かされつつ、関わる人のことを大切に思い、人と人をつなげる大沼さんの笑顔と力が、今後も多くの作り手の思いを新たな形にして届けてくれるのだなと楽しみになりました。

昨年秋のギフトショーでお披露目した最新作「針物語〜かぐや姫〜」

株式会社 ヒロ
(カブシキガイシャ ヒロ)

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