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Home > 名古屋の伝統工芸、黒紋付染を守り続けるために 黒のなかの黒を極め、和装の領域を越える|山勝染工 株式会社(愛知)【黒紋付染】

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名古屋の伝統工芸、黒紋付染を守り続けるために
黒のなかの黒を極め、和装の領域を越える 山勝染工 株式会社(愛知)【黒紋付染】

2018/7/25


“深く味わい深い黒”に染め抜く伝統技法を生かし
和装からファッション業界へチャレンジ

「黒紋付染ならではの魅力ですか? それは何よりも黒が深く味わい深いということですね。これをご覧ください。これが皆さんよくご存じの黒幕ですね。そしてこれが正絹に染め抜いた名古屋黒紋付の黒です。こうして比べると真っ黒に見えていた黒幕がグレーに見えるほど名古屋黒紋付は黒いんですよ」と反物を広げて見せてくださったのは、山勝染工で新規事業を手がけてきたディレクターの中村剛大さんです。

手間ひまをかけて昔ながらの熟練の職人技でじっくり染められた黒が美しい名古屋黒紋付

大正8年創業の同社は、江戸時代から続く名古屋の伝統工芸の技を代々受け継ぎながら染色加工業を営んできました。熟練の職人の手でじっくりと時間をかけて染め抜かれた丈夫で艶のある黒は、どんな黒よりもより深く美しい黒色で、まさに黒のなかの黒。時間が経っても色褪せることのない堅牢な染色が、名古屋黒紋付染の特徴です。

「今、伝統産業はどこも事業の縮小や後継者問題などといった同じ悩みを抱えていると聞きますが、名古屋黒紋付染も同様でした。着物そのものを着る文化がなくなってきていますから。私自身は家業とは全くべつの業界で仕事をしていたのですが、5年ほど前に先代の父が亡くなったのを機に帰ってきたんですよ。4代目の弟(中村友亮さん)に力を貸してほしいと言われましてね。いやあ、正直想像以上の厳しい状況でした。でもこの100年以上続いてきた素晴らしい技術を絶やしてはいけない、次世代に繋げなくてはという想いが強くて、とにかく若い人々に名古屋黒紋付染を認知してもらうことを考えました」

そこで剛大さんが取り組んだのが、黒紋付染の技術を生かした若者にも響く新製品開発&ブランド化でした。「私たちはあくまでも呉服屋から仕事を請け負う染色加工業者です。でもこの伝統技術を残すには自ら製造メーカーとなって、和装にとどまらずファッションの領域へ進出するしかない、と考えたんです」。また、中小機構の「NIPPON MONO ICHI」に参加するなど、商品のブラッシュアップにも積極的に取り組み始めました。

当時人気のあったファッションアイテムに着目して開発したのは、カラフル染色を施したストールでした。「今思い出しても恥ずかしいですね。ファッションに関して専門的な知識も何も分かっていませんでした。そこで気づいたのが、やっぱり私たちは“黒”なんだという原点です。こうして試行錯誤の末に生まれたのが、伝統的な染め技法とモチーフにこだわって作った黒染めのストールでした」

「日本の伝統的な色でもある黒が私たちの原点です」と語る中村剛大さん

名古屋黒紋付染の伝統技術の新たな可能性を多様なプロトタイプで提示した『新名古屋黒紋付染見本帳』

 

写真左:伝統的な技法とモチーフにこだわった黒染めストール 写真右:有名ファッションブランドから声がかかり商品開発に参画

そして、時期を同じくして経済産業省の補助金を活用し、剛大さんのディレクションによってブランドブック『新名古屋黒紋付染見本帳』を制作。編集デザインはグラフィックデザイナーのプロの目線に一任することで、展示会でも高評価を得ました。こうしたさまざまな新しい取り組みによって、ファッションブランドから注目を集め、新たな商流を生み出すことにつながったのです。


熟練の職人のさじ加減による染色技術と継承と
染め技術を活用した新サービスの模索

正絹の反物をはじめ、ウールのストール、綿素材のアイテムなどさまざまな素材を一手に染める工房へ案内してもらいました。湯気が立ち込める空間では、継ぎ足し継ぎ足し守られてきた黒の染料による染め作業が行われていました。

染料の調整は長年経験のある職人にしか分からない、人の手による作業

 

写真左:“かんす”と呼ばれる道具に反物生地を巻き付け、染料につけ込む 写真右:より一層深い黒に染めるために、紅下染めを行い、さらに200〜400%濃度の黒で染める

 

代々使われてきた色見本帳を見ながら忠実に同じ色を再現する

 

職人の勘だけを頼りに染料の粉を配合してさまざまな色をつくる。まさに職人のさじ加減

「黒紋付の本場、京都では黒だけを手がける工房もありますが、名古屋では黒以外の染色も受けてきました。色の配合については、一切数値化することはありません。職人が長年培ってきた経験と勘で染料を配合して、微妙な色を作っています。ところでグレーってどうやって色を出すか分かりますか? 黒を薄めるんじゃないんですよ。異なる色の染料を混ぜ合わせて徐々に濃度を上げていくんです」と職人さんが手早く色を配合して見せてくださいました。何のマニュアルもなく、まさにさじ加減で迷いなく色をつくってみせる職人技に、機械には置き換えられない手仕事の髄を垣間見ることができました。

また一角では、古くなった反物を染め替える作業が行われていました。昔から日本には欠けた器や汚れた着物などを直して使い続ける習慣があります。この古くからの文化にヒントを得て、山勝染工では着物だけにとどまらず衣類にまで広げて染め替えるという「御誂染」サービスを始めました。これも、染色という伝統技法を現代のライフスタイルに合ったカタチで生かしながら、名古屋黒紋付染の存在を世に知らしめる、一つの試みなのです。

■染め替えの様子はこちら


汚れたり色落ちしたりした洋服を染め替える「御誂染」サービスもスタート


染色の可能性を信じて新たなアイテムを次々と展開
ファッションに留まらず、異業種へ裾野を広げる

「新しい商流が生まれる糸口としては、ホームページを一新したことも大きかったと思います。“名古屋黒紋付染”という独自性と伝統的な技術や歴史をしっかりと押さえながら、今の世の中に受け入れられる構成とデザインを、と表現方法についてはWebデザイナーに一任しました。新たな取り組みを総称して“中村商店”というブランドロゴを作ったのもこの時です。新規オファーのきっかけとして、展示会はもちろんですが、ホームページを見てきたという方も意外に多いんですよ」と当時を振り返る剛大さん。最近では、ファッション業界に留まらず、店舗やホテルの内装や映画の衣裳など、これまでつながりのなかった業界からも声がかかることが増えてきたといいます。

伝統産業のクラシカルな印象を押さえつつも、モダンなデザインに仕上げた“中村商店”ロゴ

「下請けの染色加工業として着物だけを染めていた頃から、取り扱う素材もアイテムも、業界も大きく変わりましたが、全ては“名古屋黒紋付染”という私たちの原点の価値を伝えて残していくために取り組んでいることです。最盛期は全国で300万反と言われていた生産量が今は1万反だと聞きました。このままでは着物を着るという文化そのものが廃れてしまう。少しでも日本の伝統を身近に感じてもらいたいという想いで、例えば手ぬぐいやエコバッグなど、親しみやすいアイテムも展開しています」。こうした新たな製品展開と同時に、体験型のワークショップや講演会などにも積極的な剛大さん。とにかく“名古屋黒紋付染”そのものの認知度拡大に意欲を見せます。

ストール、シャツ等のファッションアイテムをはじめ、ファブリックパネル、クッション等のインテリアアイテムなど取り扱い品目はぐっと広がった

 

写真左:布に限らず、革など異素材にもチャレンジ 写真右:名古屋の伝統工芸“有松・鳴海絞”“名古屋友禅”とのコラボによるお土産セット

Rin crossingの登録企業となった2年ほど前からは、ギフトショー内の中小企業総合展などにも積極的に出展。
「やっと実績を積んで、ステージに立てるところまできた、という実感があります。Rin crossingのスキームをうまく活用して、さまざまなつながりを築いていきたいですね。特に展示会への出展は、参加している異業種メーカーとの出会いも狙いの一つです。実際にそこから生まれたプロジェクトもあるんですよ。今後も、伝統産業のこれまでの常識を覆すような、新たな挑戦を続けていきたいですね」と意気込みを語ります。伝統と最前線のバランスを保ちながらも、まるで業界の常識を染め替えるようにフィールドを広げていく山勝染工の次なる一手から目が離せません。

手ぬぐいやエコバッグなど手軽に求められるアイテムで、“名古屋黒紋付染”の名を広める

“ベビー服は白いもの”という常識にとらわれず、常に新しい発想で黒染めの可能性に挑戦

 

クラウドファンディングを活用して製品化した“究極の黒タオル”


山勝染工 株式会社
(ヤマカツセンコウ)

山勝染工の商品はこちらで購入できます


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