The Place of Discovery Rin Crossing

menu

menu

2018年6月現在

登録メーカー
278社
登録バイヤー
国内:891名/海外:515名

詳細へ

創り手たちのStory

Home > 職人の手わざで染め上げる「京都のてなっせん」の印象深い色合い|株式会社 染のさきら(京都)【京都のてなっせん】

  • いいね!

職人の手わざで染め上げる
「京都のてなっせん」の印象深い色合い 株式会社 染のさきら(京都)

2018/10/25


機械では到底出すことができない
鮮やかで深みのある手捺染の色合い

「今は機械捺染の方が多くなってしまいましたが、手捺染との仕上がりの違いは一目瞭然です。手捺染の生地は色鮮やかさが際立っています。職人の手わざで染料をぐっと擦り込むので生地の裏までしっかり色が浸透するんですよ。だから表情にも深みがある。機械捺染の生地は染料が表面に乗っているだけで裏側は生地の色のままですので、一目で違いが分かります」。しなやかな肌触りのストールを広げながら手捺染の魅力を語るのは、染のさきらの代表取締役、山田靖人さんです。

生地の表面に色が乗っている状態の機械捺染とは異なり、手捺染の生地は裏までしっかり色が浸透している

京都の北寄り、岩倉の地で1978年の創業以来、婦人服地の手捺染加工業を手掛けてきた同社。山田さんは8年ほど前に先代から社長を引き継いだのだといいます。

「京都の手捺染業界は全体で言えば職人の高齢化に伴って衰退傾向にありましたが、幸い私どもの工房では昔からベテランの職人とともに若い世代の職人を育成してきたこともあって、おかげさまで今も忙しくさせていただいています」

数種の捺染型によって幾度も色を重ねることで、ストールの繊細な柄が浮かび上がる

「人の手わざで一枚一枚染め上げる手捺染は、機械捺染とは色の鮮やかさが全く異なります」と手捺染の魅力を語る同社代表取締役の山田靖人さん

そんな同社が、生地問屋から請け負う婦人服地の染色加工とは別に、自社オリジナルブランド「京都のてなっせん『sakira』」を立ち上げたのは約5年前。山田さんと奥様のネットワークで、京都造形大学に縁のあるテキスタイルデザイナーや染色家とともに、今の時代の空気を写したデザインのストールなどオリジナルアイテムを作っています。

「私たちの周りには、美大で染色やデザインを学んで活躍しているクリエイターがたくさんいるんですよ。私たちが受け継いで手掛けてきた手捺染の技術を、彼女たちの創作活動に生かせないだろうかと始まったのがこのブランドです。新規事業拡大というよりも、ライフワークの一環という想いが強いですね。昨今の手仕事ブームという追い風もあって、本物にこだわる若い女性からも注目されています」

こうして始まったプロジェクトは、展示会への出展などによって販路を広げ、今では百貨店や京都市内のセレクトショップや観光物産店、また全国各地の催事のオファーも多いのだとか。一反一反、職人が丹精を込めて手作業で染め上げた「sakira」の商品は、これ以上は生産量を増やせないほどの好評を得ています。


ベテランと若手職人が重ねてきた
手わざと感性が生み出す色の重なり

周囲を豊かな自然に囲まれた岩倉の染工房内では、休むことなく染めの作業が行われていました。

「生地を張ったこの染台は1本が約30メートルあります。ここに捺染型を置いて色糊を乗せ、職人がヘラで一気に擦り込むようにして染めていきます。デザインに合わせてヘラの硬さや角度を変えたり、力加減を調整したり、これは人の手でしかできない作業ですね。この工程を“かく”と言っているのですが、絵を“描く”行為に似ていると言えるかもしれません」

1版分ずつ飛ばして捺染型を置いて、色糊を擦り込むように染める。1往復目を“オモ”、2往復目を“ケシ”といい、2往復することで1版の染色作業が完了する

■生地に捺染型を置いて染める様子はこちら


写真上:縁取りの線の捺染型/写真下1版目の黒で縁取りの線を、2版目のグレーで花を、3版目のワインレッドで大ぶりな花を擦り込んで染める

 

写真左:同社ではシルクやコットン、麻、ウールとさまざまな素材の生地に染色加工を行っている/写真上右:多いものでは10版分の捺染型で色を重ねて柄を染め上げるものも。版は4、5年はストックして繰り返し使われる

1日8反くらいは染めることができると言いますが、1色染めるのに2往復、つまり色数の2倍も染め工程を繰り返すことを想像すると気が遠くなる作業です。また染台に張られた生地は蒸気で湿らせておく必要があるため工房内は常に高温高湿度。取材時も染台奥の室温計は50℃を示していたから驚きです。しかも“かく”作業は全身運動。一瞬の気の緩みで1反まるごと台無しになる可能性があることを考えると、まさに気力と体力の鍛錬が必要とされる現場だと感じました。

 

糊場では緻密に計算されたデータに基づいて糊と染料を調合して色糊を作っている。まるで秘伝のタレのように継ぎ足しながら長期保存して繰り返し使用される

「生地を染める色作りの作業も職人の手仕事です。1000分の1グラム単位で緻密に計測して糊と染料を調合して色糊を作ります。幾つかの版で色を重ねることによって一枚の柄が染め上がるので、重なりによって生まれる色あいも計画的に考えなくてはなりません。この基本となる配色については、無限にある色の組み合わせから“枡見本”という色合わせのミニチュアサンプルを作って考えています」

 

柄のデザインが決まったらミニサイズの捺染型を使ってさまざまな配色で“枡見本”と言われるサンプルを数パターン作り、商品の配色が検討される。色糊、ヘラ、染台の全てが枡見本用のコンパクトサイズ

“水ぼかし”の手法をはじめ
さきらでしか描けない手捺染の魅力

手捺染の中でも、まるで水彩のようににじみ具合と色の重なりが美しい「水ぼかし」という技術あります。同社ではこの独特の表現を安定して製品化する技術を確立しました。

「水ぼかしは染料のにじみを生かした表現だけに品質にバラツキが生じがちです。ただこの独特のにじみは染色の表現として女性的ですごく魅力的なんですよ。そこで私どもは、水ぼかし専用の色糊を独自の配合で開発したり、染めの温度や湿度、そして蒸し工程まで徹底的に管理したりすることで、水ぼかしを安定して染め上げるノウハウを確立することに成功しました。これは私どもの染工房独自の加工技術です」

柄の輪郭がにじんだ「水ぼかし」の手法で染められた知多木綿やダブルガーゼを使った新ブランド「nenari」

「sakira」に続き、3年ほど前に立ち上げたブランド「nenari」では、知多木綿やダブルガーゼなどの素材も扱うようになり、ストールにとどまらず手ぬぐいなどより身近なアイテムへとバリエーションが広がりました。

「ホームページやパンフレットなどを作ったのもこの時期です。プロのデザイナーやカメラマンに依頼してブランドイメージを新たに構築しました。おかげさまで、ホームページを見てオファーをくださる方も多いですね。“京都”“手捺染”という他にはないオリジナリティは当社の強みです」

3年ほど前に新ブランド「nenari」を立ち上げたのを機に、ブランドのホームページを作成。プロのデザイナーやカメラマンに依頼して、手捺染の商品を魅力的に伝えるブランドイメージを打ち出した

緑あふれる京の染工房で培われてきた職人の手わざから生まれた「京都のてなっせん」。その独特の鮮やかで深みのある色の重なりは、今後もさきらの未来を彩豊かに染めてゆくに違いありません。

 

株式会社 染のさきら
(カブシキガイシャ ソメノサキラ)

染のさきらの商品はこちらで購入できます


ページトップへ